「あの、リカコさん。質問なんですが。」
「はい?」
「キスしていいですか」
「…」
「…ってキスの前に聞くのはやっぱりサイテーなんですか?」
「サイテーです!!」
というか、キスしていいですかのあとに間を置くTさん、そっちの方がサイテーです。
めちゃくちゃドキドキしました。職場ですよ、ここ。
「いいじゃないですか。普通に「ええ、いいわよ♪」って言えば。」
「違うんですよ。「いいわよ♪」って言って待たなきゃならないのは間抜けだし、興ザメです。」
「でも、事前に相手が聞いてくれれば「あ、ちょっと待って。お化粧直してくるわ」とか、そういう準備ができるじゃないですか。」
「どこの世界にキスの前に化粧を直す女がいるんですか。」
「直したくないんですか?至近距離から見られてるのに。」
「キスの間は目を閉じてます。」
「私は開いてますけど。」
「じゃあ、これからは閉じてください。」
「でもですよ、こっちとしてはその瞬間にすべてが終わるかもしれないし、キスひとつに、ときとして社会人生命まで賭けることになるんですよ。それよりは、最初に許可をもらった方がずっと気がラクなんですけど。」
「その逃げの姿勢がカッコ悪いんです。背負ってくださいよ、リスク。」
「男にリスク背負わせても、ムードがほしいんだ。ヒドイよなー女って。」
で、会話が終わった。
黙って考えていたら、≪突然のキス≫というシチュエーションを考えるにあたって、私とTさんが異なる条件を前提としていることに気がついた。すなわち、私が考えているのは≪2、3回のデートを経て、そろそろキスしてくれるんじゃないかしら?となんとなく予感している≫状況であり、対するTさんはおそらく≪職場や学校や道端などに好きな女の子がいて、「ああカワイイなぁ」と思っている≫程度の状況を想定しているのだろう。たしかに、彼女の気持ちを知らずにいきなりキスするのは、かなりリスキーだし乱暴だし、ときに犯罪になるだろう。そこでリスク背負えとはさすがの私でも言わないよ、Tさん。
でもこんなキスの話を蒸し返したらそれこそ「キスしたい」と言ってるみたいなので、やめます。
<註>
この会話が始まる前に、2人の仕事中の雑談メールで「思い出のチュウ」の話で盛り上がっていて、私が「やっぱ、突然キスされるのって心に残りますよね」とかなんとか書いたのです。それがTさんの「キスしていいですかって聞くのは…」発言に至るのであって、あの発言に他意はなかったはずだと当方は認識しております。
「はい?」
「キスしていいですか」
「…」
「…ってキスの前に聞くのはやっぱりサイテーなんですか?」
「サイテーです!!」
というか、キスしていいですかのあとに間を置くTさん、そっちの方がサイテーです。
めちゃくちゃドキドキしました。職場ですよ、ここ。
「いいじゃないですか。普通に「ええ、いいわよ♪」って言えば。」
「違うんですよ。「いいわよ♪」って言って待たなきゃならないのは間抜けだし、興ザメです。」
「でも、事前に相手が聞いてくれれば「あ、ちょっと待って。お化粧直してくるわ」とか、そういう準備ができるじゃないですか。」
「どこの世界にキスの前に化粧を直す女がいるんですか。」
「直したくないんですか?至近距離から見られてるのに。」
「キスの間は目を閉じてます。」
「私は開いてますけど。」
「じゃあ、これからは閉じてください。」
「でもですよ、こっちとしてはその瞬間にすべてが終わるかもしれないし、キスひとつに、ときとして社会人生命まで賭けることになるんですよ。それよりは、最初に許可をもらった方がずっと気がラクなんですけど。」
「その逃げの姿勢がカッコ悪いんです。背負ってくださいよ、リスク。」
「男にリスク背負わせても、ムードがほしいんだ。ヒドイよなー女って。」
で、会話が終わった。
黙って考えていたら、≪突然のキス≫というシチュエーションを考えるにあたって、私とTさんが異なる条件を前提としていることに気がついた。すなわち、私が考えているのは≪2、3回のデートを経て、そろそろキスしてくれるんじゃないかしら?となんとなく予感している≫状況であり、対するTさんはおそらく≪職場や学校や道端などに好きな女の子がいて、「ああカワイイなぁ」と思っている≫程度の状況を想定しているのだろう。たしかに、彼女の気持ちを知らずにいきなりキスするのは、かなりリスキーだし乱暴だし、ときに犯罪になるだろう。そこでリスク背負えとはさすがの私でも言わないよ、Tさん。
でもこんなキスの話を蒸し返したらそれこそ「キスしたい」と言ってるみたいなので、やめます。
<註>
この会話が始まる前に、2人の仕事中の雑談メールで「思い出のチュウ」の話で盛り上がっていて、私が「やっぱ、突然キスされるのって心に残りますよね」とかなんとか書いたのです。それがTさんの「キスしていいですかって聞くのは…」発言に至るのであって、あの発言に他意はなかったはずだと当方は認識しております。