思いつきで初めてみた企画です。(せめて第3回くらいまでは行きたいと思う所存でございます。)
多分、「脱!初心者」を目指す方が対象になると思います。また、冗長的な文章になると思います。
さて、早速ですが記念すべき第一回は表題の通り「エナメル塗料」に関する話をしようと思います。
まずは、エナメル塗料の特徴から確認したいと思います。
①発色が良い。
②乾燥時間が長いが、その分平滑に仕上がり筆ムラも少なく済む。
③ラッカー、水性アクリル塗料の上から塗装しても溶剤で拭き取ることが出来る。
大体、こんな感じの塗料です。特に③の”拭き取れる”は絶対に覚えておきたい、重要な特徴です。そのおかげでスミ入れやウォッシングが可能となり、失敗してもリカバリーが簡単だったりと手放したくない、使い続けていたい塗料です。
しかしながら、初心者の中には「エナメル塗料」に対し、「失敗するととんでもないことになる」、「失敗例が多い」と畏怖の念を覚えている方もいらっしゃるようです。
そんな、恐怖の対象となりうる「エナメル塗料」ですが、その理由はほぼ一つに絞られます。
<理由>エナメル塗料を塗ると割れる。
この文言がそのまま広範囲に浸透しているみたいですね。これを見たり聞いたりするたびに思うのですが、誤解を招く不適切な表現です。
きちんと現象を説明するならば、「エナメル塗料を塗布することによって何かが起こり、その結果割れた」と書くべきだと思います。では、何がおこったのか?遠回りせずにもう回答を書いちゃいましょう。
①エナメル塗料の溶剤は、プラスチックに浸透しやすい。
(模型誌などでは「プラを侵す」等と表現されることがあります。)
②プラスチックに溶剤が浸透すると、強度が下がる。
(エナメルだけでなく、ラッカー、水性アクリルや瞬間接着剤でも同じことが起きます)
①、②のせいでスナップフィットキットなどは常日頃から大きな力を受け続けている”ダボ”付近等が割れてしまいます。また、曲げてテンションの掛かっているパーツやロボットの関節のように締め付けているようなパーツなども同じことが起きます。
ただし、エナメル溶剤は揮発性ですので、しばらく放っておけば溶剤はプラスチック内部から抜けて強度もある程度回復します。
さて、なぜ割れるかがこれで理解して頂けたと思います。あとは原因を元に対策を立てることが出来れば良いだけですね。よく使われている対策はこんなところでしょうか。
①部品単体でスミ入れ等をして、よく乾燥させてから組み立て
②ダボへの負荷を低減させるためにダボを斜めに切る。もしくはダボ/ピンを溶剤系接着剤で接着
③ラッカーや水性アクリルでしっかりと塗装し、エナメル溶剤が浸透しないようにガード
④揮発性の高いジッポオイルを溶剤の代わりに使用する。
⑤エナメル塗料を一度に大量に使わない。
⑥塗装中にパーツに余計な負荷をかけないようにする。
等々
わたしは大抵②、③、⑥の対策を併用して行っています。あとは、ダボ以外にも負荷が掛かっているパーツがあれば負荷をなくす工夫をとります。とまあ、色んな対策が立てられていますのであまり身構えずに気軽にチャレンジしてみてください。
(ただし、個人的には④はあまりおススメしません。自己責任でお願いします。)
ちなみに、「ABS樹脂は塗装すると割れる」も全く同じ現象です。通常のスチロール樹脂よりもABS樹脂の方が溶剤等が浸透しやすいため、ラッカー、水性アクリル塗料での塗装時の破損報告が多いのです。
長々と文章を綴ってきましたが、エナメル塗料は『選ばれし人間のみが使える特別な塗料ではない』ということを伝えられればと思います。そもそも、こんな(↓)やり取りを見聞きしたことのある方はあまりいないのではないかと。
A「こ、これは!?」
B「フッ、気づいたか。ウォッシングをやったのだ!」
A「なっ!ということは!?」
B「そうとも、エナメル塗料を使ったのだ!フフフ、ハーッハハハハ!!」
まあ、小中学生ならやってるかもしれませんが、いい年した人が・・・、というのは中々見ないと思います。
大体の経験者は「大したことない。」、「簡単だよ。やってみな。」というはずです。そして、半信半疑で試した方の多くが「その通りだった。」と感想を持つものです。