大阪発達支援センターぽぽろブログ ぽぽろ番

ぽぽろはNPO大阪障害者センターの子育て・教育支援部門です。
大阪市鶴見区今津北にあります。

ちょっと一息「ステキな親子」

2009年03月12日 | 児童デイサービス
 先週の水曜学童に来たYちゃんが壁に貼った大きな紙に絵を描きました。
 こんなに大きく描けたのは(少なくとも)ぽぽろでは初めてです。
 しかも、初めて人を描いてくれました。その人への思いもことばにして表してくれました。この中の歯切れの良いことば(「おばけのおっぱい にがい からい すっぱい くっさい たまらん…」)を歌に出来たらいいなって思ったりしています。

 おまけに、この絵はャXターにもなりました。たまたま他の子たちが壁(石膏のような白いセメントが入った厚さ1センチ壁)を破ったりして大騒ぎをしているときだったので、「ここに何か書こうか?」と聞くと、彼女は『○○くん、△△くん ぽぽろを こわさないでください』と言いましたので、そのままの標語となりました。
 
 

 どちらかと言うと、学校にあがると子どもたちは「文字」を書こうとします。周りのお友だちが「文字」を書いている姿を見て、自分も書きたいなという思いをもつのは自然です。
 また、学校では少しでも○や□などの形が書けたりすると、次は「文字」だとばかりに「文字」指導に入りがちです。発達段階も考えずに入学してから6年間も名前を書かせたり、破線の上をなぞらせたりすることを繰り返し「指導」したというような最悪な事態も起こりかねません。
 ぽぽろに来る子どもたちに「絵を描こう!」というと、多くの子らがのびのびとした絵ではなく狭い範囲にチマチマと描こうとしたり、絵ではなく「文字」を書こうとしたりします。
 子どもによっては描いているときの身体の様子(例えば姿勢、肩の硬さなど)が、まるでその子の気持ち・緊張を表しているかのように見えてしまうときがあります。

 もちろん、ぽぽろは学校ではありませんので、どちらかというと紙からはみ出してもいいから身体や腕の全体を使ってのびのびと描いて欲しいと思うし、グルグル丸でも丸がいっぱいの絵でも子どもとの会話や子どものつぶやき(伝えたい思い)を書き留めるようにしています。そして、「文字」の土台である伝えたいという気持ちやことばを太らせ、伝えたくなる楽しい遊び・経験を広げることを大切にしようと話し合っています。


 この下の絵は今週の水曜学童でYちゃんが書きました。手が真っ黒になるほど描きまくりました。お湯できれいに洗おうとすると、「お父さんに見せるからあかん」とクレパスを落とそうとしません。たくさん描いたという満足感と頑張ったという気持ちを真っ黒な手でお父さんに伝えたかったのでしょう。
 さっそくお迎えのお父さんに「見てみて!」とカンバスの前に案内し、一生懸命にお話していました。「そうか。いっぱい描いたねぇ。何て書いてあんの?へ~…」と受け答えする親子の会話に感心して聞きほれていました。そして、Yちゃん親子が帰った後に、その余韻をスタッフ3人で味わったのでした。
 

 この左側がYちゃんの大作。お花畑です。右は恥ずかしくて見せられません…私が描きました…。
 ところがです、風邪が治ってやってきたHくんが遊んで欲しくて割り込んできて、この私の大作の上に書き始めました。「何すんねん!」などとは言わず、「お花畑を書いてんねん。」と伝え、好きなように描かせてあげました。


 すると、書きはじめたのはほらタテヨコの短い線=「文字」です。でも、止めませんでした。彼は、お迎えに来たお父さんの腕を引いて絵の前に連れて行きました。ここでも「見てみて!」です。彼の「認められたい!」という思い、大好きなお父さんに「ほめて欲しい」という気持ちがひしひしと伝わってくる光景でした。


 この絵は私が大好きな絵です。前にも書きましたが、彼は苦手意識や自信のなさが先に立って、ペンを持つと一筆書いてサッと逃げ去ってしまうのです。この絵はいっぱい遊んでほめてもらったときに自然に描けた絵です。「文字」へのあこがれや「文字」を書けるようになってほめられたいという気持ちは大切にしてあげたいけど、もっともっとこの絵のようなのびのびとした今もっている表現する力を開かせて欲しい。


 ちょっと一息、今日は「ステキな親子」、ある日の父子の姿でした。