羅生門リターンズ~正気が迷子になった日~
むかしむかし、娘の学校で出された課題に「羅生門の続きを書け」ってのがあった。
その時の日記を読み返して、笑った話。
ふたりで、知恵を絞ったあの日のこと。
私が書いたのは、わりと真面目なやつ。
下人、罪の重みに苦しんで、老婆が死んでるの見てショックで自◯。
生まれ変わって門の一部になって、
人の罪とはなにか、天に問うとか何とか。
今思えば、心がまだ清かった時代。
キレイな涙も流せた、そんな時代。
で、娘の回答。
うん、アレだよ。地獄の住民の思考回路。
簡単に要約するとこうなる。
老婆の死体を見ても、罪悪感ゼロ。
ニヤリと笑って「ま、いっか」と立ち去り、
そのまま元気にふてぶてしく生存ルート突入。
「天罰? 因果応報? それって食えるの? お腹いっぱいになるの?」
とでも云いたげな顔で、全スルー。
人間なんて所詮そんなもんだろ?
……って、そりゃもう真っ黒な心をぶちまけてた。
でも、なんだかんだで、その冷めた視点が私は好きだった。
正しさより、リアル。模範より、毒。
…やるじゃねぇか、娘よ。
だが現在。
私は、かつての清らかな模範回答を、
どの口が吐いたのかと疑うレベルで、腐っている。
今ならこう書く。
老婆、死亡済。あったかい。
鮮度は良好。
サクッと肉を切り取って、火に放り込む下人。
焼ける匂いに鼻をくすぐられ、思わず笑みが漏れる。
「いただきます」って手を合わせる律儀さが怖い。
餓死? 盗人? いやいや、今日は焼肉だ。
数日後、猫を追ってる。次に犬。
その次? そりゃ人間だろ。
食欲にブレーキなどない。
倫理なんてスパイスにすぎない。
誰も止められない。
そう、一度火がついた狂気は、止まらない。
壊れた人間なんて、そんなもの。
その炎は今、羅生門だけじゃなく、この国のスーパーのプライスカードにも燃え移っている。
私は思う。
みんな物価高が悪いんだ。全部、あいつのせい。
最近、心の中の羅生門がぐらぐらしてる気がする。
朽ち果てる寸前。罪の闇が、沸騰してる。
…もう少しで何かが吹きこぼれそう。
むかしむかし、娘の学校で出された課題に「羅生門の続きを書け」ってのがあった。
その時の日記を読み返して、笑った話。
ふたりで、知恵を絞ったあの日のこと。
私が書いたのは、わりと真面目なやつ。
下人、罪の重みに苦しんで、老婆が死んでるの見てショックで自◯。
生まれ変わって門の一部になって、
人の罪とはなにか、天に問うとか何とか。
今思えば、心がまだ清かった時代。
キレイな涙も流せた、そんな時代。
で、娘の回答。
うん、アレだよ。地獄の住民の思考回路。
簡単に要約するとこうなる。
老婆の死体を見ても、罪悪感ゼロ。
ニヤリと笑って「ま、いっか」と立ち去り、
そのまま元気にふてぶてしく生存ルート突入。
「天罰? 因果応報? それって食えるの? お腹いっぱいになるの?」
とでも云いたげな顔で、全スルー。
人間なんて所詮そんなもんだろ?
……って、そりゃもう真っ黒な心をぶちまけてた。
でも、なんだかんだで、その冷めた視点が私は好きだった。
正しさより、リアル。模範より、毒。
…やるじゃねぇか、娘よ。
だが現在。
私は、かつての清らかな模範回答を、
どの口が吐いたのかと疑うレベルで、腐っている。
今ならこう書く。
老婆、死亡済。あったかい。
鮮度は良好。
サクッと肉を切り取って、火に放り込む下人。
焼ける匂いに鼻をくすぐられ、思わず笑みが漏れる。
「いただきます」って手を合わせる律儀さが怖い。
餓死? 盗人? いやいや、今日は焼肉だ。
数日後、猫を追ってる。次に犬。
その次? そりゃ人間だろ。
食欲にブレーキなどない。
倫理なんてスパイスにすぎない。
誰も止められない。
そう、一度火がついた狂気は、止まらない。
壊れた人間なんて、そんなもの。
その炎は今、羅生門だけじゃなく、この国のスーパーのプライスカードにも燃え移っている。
私は思う。
みんな物価高が悪いんだ。全部、あいつのせい。
最近、心の中の羅生門がぐらぐらしてる気がする。
朽ち果てる寸前。罪の闇が、沸騰してる。
…もう少しで何かが吹きこぼれそう。