想い事 家族の記録

難病の父と生きる
鬱病
ふたり暮らし

苦い道こそ多かれど、己を奮い、歩む者よ。倒れてもなお、立ち上がれ。最後に笑うのは、諦めなかった者だけだ。

2025-01-31 21:03:45 | 日記
爆誕、これが私の7万字


1月31日。
ついに、この日が来てしまった。

そんな中、私はまだ準備段階。
でも夕方から夜にかけての仕事はガッチリ入っているので、
休む暇はなし。
仕事をこなし、帰宅後、
時計を見ると23時──寝ている場合じゃない。

こういう自分ルールを野放しにすると、
いつまで経っても終わらないのだ。
だから私は誓った。
「絶対にやれ」と。


迷走、終わりなき執筆ループ

たかが7万字の物語に
何ヶ月かけてるんだって話だよ。
いや、考察を深めたってのもあるけど、
それだけじゃない。
重すぎる話のトーンを変えるために、
ひたすら笑いをねじこむ作業が発生していた。
そして、気づいたら、
もはや別物の作品になっていた。

でも、これでいい。
だって、描いててしんどいから。
いつだって、笑っていたいじゃん。


修正沼にハマる、無限改行バグ

そんなこんなで、
前日になって突然の方向転換。

「やっぱり、章タイトルをつけよう」
「この漢字、
ひらがなにした方がよくない?」
「これは問題発言だから、変える」
「色を変える」
「天気を変える」
「空気感を変える」
「いや待て。こっちの表現の方が…」

まるで無限迷路。
作業量はひたすら増えていった。

パソコンを途中導入したことで編集はラクになった、
と思ったのも束の間だった。

「改行できない」
「謎の行間が生まれる」
「レイアウト崩壊」
など、謎のトラブルが頻発。

しかも、強制改行が原因と分かっても、
強制しないと改行できないという矛盾。

ぶら下がりインデント?
なにそれ?
なにかの大会ですか?

最終的に、原稿を、
パソコンとiPhoneを行ったり来たりさせながら、
地道に調整することに。
iPhoneでは綺麗に見えるけど、
アップロードするとまた崩れてる…、何故だ。

「事故現場はごく一部だけだし、
このまま見なかったことにすれば」

という悪魔の囁きも聞こえたが、

いや、ダメだ。
ギリギリまで抗おうと決意。

技術的なことはわからないので、
最終手段「iPhoneで手動修正」を敢行。

パソコンにレイアウト崩れの事故現場を映し、
iPhoneで「該当箇所を全部消して、入力し直す」
という原始的な方法で、手直しした。
自分にしてみれば、画期的な方法だった。
どうにか見れるレベルには持っていけたし。

そして今、私は悟る。
「書くよりも、仕上げる作業の方が圧倒的にキツい」
ということを。


堕ちた…甘美なる禁断の味

徹夜作業の間に、
「絶対に食べない」と誓ったスイーツを 2つ 平らげた。
さらに、コーヒー 10杯 投下。
私の血液はもう
エスプレッソ』と言っても過言ではない。

その結果、

「OSクラッシュ→強制再起動(所要時間120分)」

目覚めと共に、
動悸が止まらない。
嫌な汗をかいている。
多分、自分を追いこみすぎた。


修正地獄、最後の試練へ

でも、そんなこと云ってる暇はない。

プレビュアーで レイアウト確認 → 修正 → 確認 → 修正ループ

修正のたびに

だーいすきなのはー、ひーまわりのたねー

が脳内再生。
もう…助けて。

もうおもしろいことなんか、ひとつもひねりだせないよ。

そして、ついに販売ボタンを押した。

おめでとうございます』の文字が画面に踊る。

…いや、まだ終わってはいない。
まだ、半分にも至っていない。
だから、あまり、感動はない。
ただ、溜め息が出た。

でも、ふと、思い出す。
先日、僅かながらも印税を受け取ったことを。
これで、コンビニスイーツくらい、買ってもいいだろ。

なんだろう、この気持ち。
まるで、
「できの悪い弟子を送り出す師匠」 のような気分だ。

「しっかり羽ばたいてゆけ」
「警告はしたからな」
「泣くんじゃないぞ」


(なお、師匠は疲れと寝不足で廃人と化している)


🌸~変わり果てた世界がそこにある~🌸


それは、かつてダークで荘厳な物語だった(たぶん)
しかし、書き手が施した渾身の救済処置により、物語のトーンは変貌。
結果、何かが生まれ、何かが消えた。
たぶん威厳とか緊張感とかそういうもの



ヒーロー、自由の翼を得て語彙を失う

かつては、重い使命を背負ったヒーローだった。
今や、威厳を失う代わりに、
身と頭が軽くなり、感情の赴くままに自分ワールドを展開。

眼につくものはとりあえず触って、壊す。それが、彼の哲学。
そして、話の着地点がどこか遠すぎるあまり、人を混乱させる路線が定着。

「すみません、これ、あの…何でしたっけ?」
「おい、話の要点をまとめろ」
「……カルピス?」

──何故だ?
何故「カルピス」なんだ?


語彙力を失い、ついにカルピスしか云えなくなった。
その手には「カルピス原液」(※ 濃いめ)が握られている。

「…違う、これは何の話だ?」
「カルピスの…希釈率…

──おまえの話の希釈率が極限まで薄まってるんだが!?

心優しいヒロインですら、キレはじめた

「黙りなさい」
 
ついに、冷静沈着なヒロインが静かに云い放った。

「貴方の話は意味がわからない」
「いや、でも、カルピスって…」
「カルピスの話はもういい」
「え、じゃあ、ちいかわの話でもする?」
「それもやめて」
「やだー」

無慈悲にも、ちいかわワールドが華麗に開幕。
ちなみに彼は、他人の話をBGM感覚で聞くタイプだ。

「今のは何?」
「いや、その、なんかこう、
ピンチになったら出るよね、ちいかわの…」
「貴方がピンチなのは頭の方」

冷静な彼女ですら、もうこらえきれない。

「やめてって云ったのを、聞いていないの?」
「ヤハ」
「だから、ちいかわの話は禁止!」
「ワァ…」

──この物語はもうダメかもしれない

師匠キャラの脳内までお花畑

「貴様は、カルピスを薄めるように、
魂を希釈しているのだ」

──は?

もはやファンタジーの深みが方向性を見失った。
さらに、じわじわと「発言の脅威」が宿りはじめる。

「いいか? 貴様が今後、その希釈率で生きるなら、未来はないぞ」
「え、じゃあどうすれば…?」
「カルピスは、濃いめが旨い」

──何の話だ??

しかし、もうカルピス原液(※ 濃いめ)はない。
床に広がっている、白い液体。
それを無感情に眺めながら、彼は云う。
「濃い方が、いいってコト?

もう、どうにもならんがな。

これが日常的に繰り返される世界

実際はここまで堕落していない…はず(書き手がギリギリ耐えている)。
しかし、このような意味のないデモが、
日常的に繰り返されてきた。
何ヶ月も。

──何のために?????

気がつけば、そこにはダークな世界観など存在しなかった。
ただカルピスと、ちいかわと、謎の希釈理論だけが残った。










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別れの言葉すら結べないのか。せめて最後は、追い風になれ。そっと背中を押してやれ。

2025-01-30 23:50:39 | 日記
過去の呪いを回避せよ  越生梅林に救われた話


~週5勤務、話が違う件について~

2月前半のシフトができた。
確認して、固まる。

…あれ、週5勤務って、
1月までの話じゃなかったっけ?

話が違うよ。完全に違う。

嫌な予感はしてたんだよ。
うやむやにされる気がしてさ。
やっぱりじゃん!

しかし、リーダークルーのIさんがまだ万全じゃないから、
そのせいか?
いずれは解放されるのか?

そう考えながらも、
心の片隅では 「でも、稼げるよ」と思っている自分がいる。
そう、稼げば遊べるのだ。
遊ぶために働く、それがこの世の理(ことわり)。


~過去の呪い、発動寸前~

先日の埼玉コールで、梅の時期に埼玉へ行くことが決まった。
どうやら、おかーさんが寂しそうなのだ。
名古屋旅行は当面無理そうなので、
ここでワンクッション入れておこう、
という計画である。
撮影もできるし、一石二鳥。
すると、おかーさん、嬉しそうに云い放った。

「梅林を観に行きましょう!」

――いいじゃないか、梅林。風情がある。

そう思ったのも束の間、
彼女の次の一言で思考がフリーズした。

青梅の梅林がいいわよね!

吉野梅郷(よしのばいごう)か!?
…あれはダメだ!!

かつて暮らした地。
幸せな思い出と、辛すぎる記憶が
ミルフィーユのように積み重なった、呪われし土地。
あんな場所へ行ったら、
メンタルクラッシュして、たちまち過呼吸を起こすに決まっている。
あの地に残してきた想いが、
尋常じゃない勢いで感情を揺さぶるのだ。

実際、以前にちょっと懐かしくなって、
グーグルであの場所を見たことがあった。
その瞬間は、「あ〜懐かしいな」くらいで済んだのだが…、

夜になって地獄を見た

情緒と呼吸が乱れ、胃と腸が暴動を起こした。
完全にトリガーだった。

つまり、これは意志の力でどうこうできるものではない。
あの場所へ行けば、間違いなく、爆発四散する。(さよなら)


~過去の呪い vs おかーさんのポジティブ論~

恐怖に駆られ、私は必死で訴えた。

「いや、あそこは無理だよ!」

すると、おかーさんは ド正論 を繰り出してきた。

「そんな後ろ向きな考えじゃダメよ。物事は良い方向に考えるの!」
→いや、それは正しいけどね?

「過去は過去。これからは良いことしか起こらないのよ」
→ いや、あの地では悪いことしか起きなかった歴史があったの。
それが問題なの。

「梅がキレイに咲いていて、気分がいいはず!」
→ その梅の花でメンタルが崩壊の危機なんだよ。

「色んなお店も出ていて、買い物も楽しいわよ」
→ 感情のダークホールに落ちて、買い物どころじゃないと思うよ?

「おいしいものもたくさんあるのよ」
→ いやいや、下手すりゃ吐くレベルですよ!?

…悪い人じゃないんだが、なんか微妙にズレてる。
人の痛みに、若干、鈍いというか。
多分、過呼吸の仕組みを
理解していないからこうなる。

梅を観に行く計画を立てたことを、
激しく後悔した。


~過去は過去。…本当に?~ 「前向きに捉えられるかどうかの境界線」

辛い思い出があった場所に、人は行けるのか。
私はこれを深く考察したい。

少なくとも、何事もなかったかのように平常心で行ける人間は、
鋼のメンタルの持ち主だと思う。
誇っていい。
感情を殺して赴ける人も、
相当強い人間なんだろう。

世の中には、家族の事故現場に献花に行く人の話もあるけれど、
私にはとても真似できない。
そこに渦巻くであろう、あらゆる思念に、
私は完全に呑まれるだろう。
いや、むしろ、
残留思念まで拾って発狂する自信がある。

そんな繊細すぎる私に対し、
おかーさんは決して鈍いわけじゃない。
むしろ、彼女の人生もなかなか
ハードモードであることは知っている。

思わぬ出来事で伴侶を失い、
子供たちの不祥事の後始末に奔走し、
何度も疲れ果てながらも、それでも頑張って生きている。

彼女のポジティブさは、
天性のものというより、
「これを身につけなきゃ乗り切れない」
という境地で習得したものなのだろう。
彼女はきっと、前向きにならざるを得なかったからこうなった。
だからこそ、私は彼女を見捨ててはならないような、
謎の脅迫観念に取り憑かれている。
――いや、もうこれは呪いの領域では?

そして、かつて救えなかった自分の母の姿を、
彼女に投影しているのだろう。

で、そんな葛藤を抱えていたところに、吉野梅郷の話である。
が、話は突然変わった。


~助かった…!! ありがとう、越生梅林~

会話の途中で、おかーさんの口から、
突如として、別の梅林の名が飛び出した。

「越生梅林(おごせばいりん)はおもしろいわよ」

…はい?

「え? 越生梅林? 青梅じゃなくて?」
越生よ。毎年行くの」

まったく悪気のない声。
え?
さっきまで青梅の話してたよね?
吉野梅郷って云ってたよね?

どうやら、おかーさんの中では、
青梅、越生、吉野梅郷、越生梅林が、
見事にごっちゃごちゃになっていたらしい。

つまり…、

行くのは「越生梅林」だった。

助かった。
心底ホッとした。

助かった…!!(二度目)

「そこの梅なら、きっときれいでしょうね」

と思わず口にする私。

――いや、同じ梅の花だろ?
と思う人もいるかもしれない。
でも、私にとっては天と地ほどの差がある。


~場所は違えど、春は来る~

結局、どの梅林も
春になれば花を咲かせる。
でも、どこでその春を迎えるかで、
気持ちは大きく変わる。

しかしながら、
あの梅の香りを吸いこめば、
私の中で、何も起きないとは、
断言はできない。
実際、視覚を通して入る情報に
情緒が乱れるのは事実だが、
嗅覚だって、
立派なトリガーになり得る。
あの地で、春を迎えるたび吸いこんだ
花の香りは、
幸福の象徴だった。
けれど、それはあまりにもあっけなく
崩れてしまった。
そして、今でも、
その残響が胸の奥でくすぶっている。

こんな穏やかな田舎道でさえ、
ふいに記憶を拾いあげてしまえば、
生理的反応は、不可避。
身体は勝手に反応する。

だから、梅に囲まれる自分が、
少し怖い。
毎年の春に、訪れる、
小さな脅威。

桜だったら、こんな気持ちにはならない。
でも、梅の花は…、
静かに見送るのが、ちょうどいい。
そっと、花の下を歩くくらいがちょうどいい。
それが、本音かも知れない。

かつて、桃源郷と呼ばれた地で暮らした、
名残であるから、仕方がないこと。

でも、今年の春は、
越生からはじまるようだ。
愛しい人と、腕を組んで歩きたいと思うよ。













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苦悩にまみれた使命すら、希望に満ちた夢だと笑う。幼かった君は、いつの間にそんなに強くなっていたんだ。

2025-01-29 22:13:30 | 日記
映画鑑賞 『地獄の便意と緒方拳』


〜時代劇、それは思わぬ伏兵〜

専門学校時代のある日、
クラスメイトのYちゃんに映画に誘われた。

「時代劇なんだけどね」

…またしても,新たなるジャンルをぶちこんできましたな!
今度はどんな試練を課されるんだ? 
と思いつつ出演者を聞いてみると、

「緒方拳だよ」

渋い。渋いがすぎるぞ、Yちゃん!

しかし、前回の「クズアウトロー男が浮気して殴って精神崩壊」
みたいな地獄よりは 100億倍マシ だろう。
桃太郎侍や遠山の金さんくらいは好きだったし、
これは意外と楽しめるかも知れない。
そんなことを考えながら映画館へ向かうと、
クラスメイトのA君とB君にばったり遭遇。

A君「君たちも観に来たんだ。
この映画、期待していいみたいだよ!」

お、なんだか期待が膨らむ。
だが、その横でB君の顔色が妙に悪い。

「どうしたの?」

Yちゃんが聞くと、B君は静かに告げた。

「便意を…我慢しているんだ…」

…いや、行けよ。
しかし、B君は神経質で
「気に入らないトイレでは用が足せない」
という繊細なフェアリー系男子だった。
映画館のトイレは彼の基準値に達していなかったようだ。
「生理的に受けつけないんだ」と訴えるB君に、
「映画を観てるうちに腹も落ち着くだろ」と、
A君は適当なフォローを入れ、ふたりは劇場の闇に消えた。


〜そして、上映開始〜

結果的に 、その映画、めちゃくちゃ面白かった。
時代劇らしい勧善懲悪の筋書き、
高潔な武士道。
ソードアクションはキレキレだし、
ド派手なファイヤースタントや
ダイブスタントが桁外れだった。
きっとそれが話題を呼んだのだろう。
次々と凄惨に散りゆく
正義の浪人たちや、
(この散り方が、いちいち、
個性的で壮絶だった。
考案者はおそらくサイコ)
圧倒的多数の敵陣に斬りこんでいく緒方拳。
文句なしにカッコいい。
守るべき者を命を張って守る。
渡される命のタスキ。

この展開、大好物だ。
いいぞ、この映画。素晴らしい!


〜そして、戦の終焉〜

興奮冷めやらぬまま外へ出ると、
再びA君とB君にばったり。
A君が「いやあ、良かったね! 面白かった!」
と爽やかに感想を述べる。

私 & Yちゃん「緒方拳、かっこよすぎ!」
「主題歌も良かったよね!」
「CD出たら買うかな!」

そんな話で盛り上がる中、
B君は限界ギリギリの状態で立ち尽くしていた。
彼は2時間近くずっと便意を耐えていたのだ。

映画の中では、
浪人たちが命をかけた戦いを繰り広げていたが、
劇場の片隅では、
B君が己の腹と 壮絶な死闘 を繰り広げていたようだ。

「早くきれいなトイレを探してあげなよ」と、
ふたりを見送るしかなかった。


〜そして、平和な日常へ〜

帰路につきながら、Yちゃんがしみじみと呟いた。

「B君、アホだな」

その後、私とYちゃんは、
テリヤキバーガーにかぶりつきながら、時代劇考察に花が咲いた。

「私、高橋英樹さんがわりと好きなんよ」と告白すると、
「渋い趣味だな」と、Yちゃんが微笑んだ。

やはり、映画は趣味が合う人と行くのが一番だ。

ちなみに、あの日観た映画は、
『将軍家光の乱心・激突』である。








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自分のために生きてと願っても、君は笑って首を振る。逆に傷つかないでと、僕を気遣いながら。

2025-01-28 15:44:40 | 日記
友人と映画を観に行く



~映画鑑賞という名の拷問~


専門学校時代のある日、
クラスメイトのKちゃんに映画に誘われた。

「私がファンの俳優さん主演の邦画なんだけど」

…うん、もうこの時点で帰りたい。
私はファンタジー派。
空飛ぶドラゴンや、剣を構えるイケメンエルフ、
かわいい魔法使いが出ない映画には、
毛ほども興味がなかった。
だが、誘われたからには仕方がない。
友人とはそういうものだ。

しかし、映画館に向かう道中、Kちゃんがとんでもない爆弾を投下した。

「たぶん、エッチなシーンがあるよ」

待て待て、そんな地雷情報を今さら?
お金を払って時間を奪われた上に、一体何を見せつけられるんだ? 
観る前から不安しかなかった。

そして上映開始―
当然のことながら、
そこに は美しいエルフのお兄さんも、
魔法使いも、海賊も、妖精もいない。
壮大な音楽も、美しい風景もなし、
かわいい魔法動物すら出てこない。
出てきたのは…
アウトローな男が、惚れた女を殴り、
優しくし、浮気し、
さらにその浮気を見られ、女が精神崩壊する という、
なんかもう 救いのない物語。

何この地獄みたいな展開?
私はこの映画で 何を得ればいいの?

一ミリも胸がときめかないし、
癒されるどころか
胸くそ悪さでむしろ帰りたい。

せめて電柱の影に
ひっそりとゴブリンの一匹でもいれば
救いがあったかも知れないが、
それすらない。

そして、終わった。
いや、やっと終わった。
エンドロールが流れたあと、私はKちゃんに素朴な疑問をぶつけた。

私「好きな俳優さんの濡れ場を見て、どんな気分になるの?」
Kちゃん「ドキドキするよ!」
キラキラした眼で答えるKちゃん。
さらに彼女は、感動した表情で。
「ねえ、ショウちゃんも、
あの俳優さん、カッコイイと思ったでしょ?」

「男の尻は見たくなかった」なんて、口が裂けても云えなかった。

私「ああいう男がカッコイイとか思うの?」
Kちゃん「怖いところもあるけど、優しいところもあって、
そこがいいんだよ!」 
 
違う!
女を殴った時点でアウトだよ!
永久追放レベルのクソ野郎確定案件だよ!
その上 浮気して、その現場を見られて女が崩壊するって、
むしろコントじゃん!
Kちゃん、その男性観で大丈夫? 
DV男の典型的な症例じゃん。
それをカッコイイなんて、
その感性は将来、君を破滅に追いこむよ!
(まるで他人事のように思った)
しかし、恋する乙女の眼になっている彼女に、
現実的なことを、云ったら野暮というもの。

映画の余韻に浸り、まだ何か語り合いたげなKちゃんを残し、
私は そそくさと帰路についた。
だって、 話すことなど何ひとつない。


~Kちゃん、その後~


後日。
Kちゃんは 隣のクラスのとある男子 を見て叫んだ。

「あの俳優さんに似てる!!」

いや、髪型以外は、まるで似ていなかった。
しかしKちゃんは 一瞬で恋に落ち、猛アタックを開始。
そして私は、
彼女が華麗に玉砕する姿を見届けることになった。


まさかの伏線回収


そして時は流れ、私は驚愕することになる。
あの時、Kちゃんが狂ったように推していた俳優が 、
映画のスクリーンの中で「青島、確保だ!」と叫んでいたのだ。

Kちゃんの見る目、正しかった説浮上。

それをきっかけに、
私は 普通にその俳優のファンになった。
結局のところ、
Kちゃんの目は節穴じゃなかったのかも知れない。

















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痛みも涙も、そのひとつひとつが根となり、葉に変わってゆく。やがて空を仰ぐ花たちは、風に乗って希望を歌うだろう。

2025-01-27 20:51:41 | 日記
繰り返し観る映画の地獄絵図


久しぶりに、『スターウォーズ』を通して観ようと思い立った。
ここは、公開順に行くかと、
まずは「エピソード4新たなる希望」から。
学生時代、休みの日はこれをひたすら観ていた。
レンタルビデオが流行していた時代、
何度も何度も観るうちに、セリフを完璧に覚えてしまった。
そして、ルーク・スカイウォーカーの勇姿に憧れて、
ハムスターに「ルーク」と名付けたことがあるほどだ。
(このハムが、やたら利口だったのは、偉大な名を授かり内なるフォースが覚醒したせいだろう)

だが、よくよく考えてみると、何故、あんなに何度も観ていたのかは未だに謎である。


さて、そんな私の映画愛が遺伝したのか、
我が娘も同じく「映画を繰り返し観る体質」になったらしい。
彼女がハマった映画、
それは『タイタニック』だった。

まだ娘が低学年だった幼い時代。
休みになると、朝から『タイタニック』を観始める。
まるで何かに取り憑かれたかのように、
映画が終わるたびに「巻き戻し」ボタンを押す、
彼女の手が止まらない。
幼い子供に内容が理解できているのかは全く疑問だ。
だが、私が心配したのは、
あの壮絶な沈没シーンではなく、
ジャックとローズのラブシーンだった。


つぶらな眸で一心不乱な娘は、
微動だにせずにそのシーンを観ていた。
私はその横で冷や汗かきながら、
心の中で
「どういう感情で観てるの!?」と叫んでいた。
でも、恐ろしくて何も云えず、ずっと震えている。
ただひたすら、虚しく、
「ジャックとローズよ、早く済ませて」
と心の中で祈り続けた。
娘の無表情からは何も読み取れない。
「なんか引く」って感覚なのか、
それとも密かに
「これが大人のロマンスか…憧れる」ってなっているのか、
全く見当もつかない。
でも結局、彼女の心は
こうなったんだろう。

「これは一体どういう状況だ?」

娘が画面を指差して、
「母、あの人たちは一体…」
と、云いだすのをひたすら恐れた母は、
繰り返された長い時間の中で
静かに崩壊していった。

せめて、娘が中学生になっていたなら、
問題にはならなかった。
そのシーンは美しいものとして、
少女の記憶に刻まれた事だろう。
だが、早かった。あまりにも。
まだ、トカゲと遊び、花占いを信じる年頃だったのだ。

そして、映画が終了。
娘は、無慈悲にもリモコンで「巻き戻し」ボタンを押して、
また映画が最初から始まる。
地獄の無限ループ。

娘! お願いだから、普通の子供のアニメを観てくれ。
とっとこハム太郎とか、プリキュアとか色々あるだろ!?


あの頃、娘がハマったのが『スターウォーズ』だったら、
どんなに良かったか。
今さらながら、そう思う。
だって、『スターウォーズ』ならたくさん語り合えるよ。

親子でフォースを語り、
帝国の闇を語り、
ジェダイの教えを語り、
「おまえの父は私だ!」と、
と叫んでベイダー卿になりきって遊ぶ。

なのに、現実は『タイタニック』。
ジャックとローズのラブシーンに微動だにしない娘を横目に、
私は動悸と戦っていた。
何故だ…、何故よりによって『タイタニック』なんだ…。

もしも娘が『スターウォーズ』にハマっていたら、
私たちは親子でこんな会話をしていたかも知れない。


「母よ、恋愛とは…」
「それはな、ハン・ソロとレイア姫のようなものだ」
「ほう」
「敵地のど真ん中で、キスをしてすぐに引き剥がされる。
そして極限の状況でこう云う。

レイア姫「愛してるわ」
ハン・ソロ「知ってたよ」

これを観た瞬間、私は天に召されたぞ!!
娘よ、これこそ究極のロマンスだ。
一瞬のキス、命がけの愛の言葉、
そして余裕たっぷりの返し。
これが最高なんだよ!!(力説しながら震えている)」


…どうでもいい事かも知れないが、
こんな母が、そのうちきっと
とんでもないラブシーンを書くよ。
娘がそれを読んでしまう世界線があるかも知れない。

「これは、仕方がなかった!」と言い訳する母に
今度は娘が、
「一体、どういう感情なの」と嫌な汗をかくのだろうか。













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