じいの病院の主治医から、直々に電話が来た。良くない知らせか、良い知らせか、身構えた。進行を止められない難病だから、良い知らせである筈はなかった。
じいの呼吸が、いよいよ怪しくなり、呼吸ができない苦痛を訴えていたらしい。もう補助しないと生命の危機に直面したらしく、本人の意志で人工呼吸器を装着した。その報告だった。ついにこの時が来たか、と心臓がバクバクした。身動きの取れない、呼吸すら自力で出来ない体で、じいは生きる決意をした。まぁ、呼吸が苦しくなれば、人間は呼吸器つけたくなるよね。苦しいのはイヤだもん。私は娘を産む前に、気管支喘息で、3か月ほど咳が止まらず、もう苦しくて苦しくて、気がおかしくなりそうな経験をした。毎日が普通に息ができない恐怖だった。夜、横になると、症状が激しく出るから、夜が来るのが怖かった。咳で眠れない日々でボロボロになった。人間には本当は欲求が四つあると聞いた。呼吸欲だそうだ。確かに呼吸しなきゃ生きられないよね。食事と一緒。仕方のないことなのよ。じいの気持ちはわかるよ。でも、動かない体で生きるのも、辛かろうな。この難病の残酷なところ。
面会規制が少し緩和されたので、来週じいに会いに行く。