今、全国各地で、長期在院精神障害者の退院支援が取り組まれています。
この国の精神医療の、長年にわたる負の遺産を、解消していく作業です。
このミッションのために創設された国家資格が、精神保健福祉士です。
日本PSW協会なども調査や研修を行い、積極的に取り組んでいます。
それらの成果は、いくつかの冊子にまとめられ、構成員(会員)らに既に配布されています。
(『精神障害者退院促進支援事業の手引き』2007年、
『精神障害者の地域移行支援』2008年、
『精神障害者地域移行支援特別対策事業』2009年、等)
でも、まだまだ各地の取り組みや、ノウハウを共有するようなメディアは少ないのが実情です。
商業ベースで出されているのは、昨年刊行された『精神科臨床サービス』ぐらいでしょうか?
(第9巻3号「特集:地域で元気に生活できるための退院支援」、星和書店、2009年)
今回、ようやく僕の関与している雑誌でも、特集を組むことができました。
色々な地域の、様々な職種の方々に執筆をお願いし、皆さん快くお引き受け頂きました。
それぞれの現場(病院・地域)での、自らの実践を通して、このテーマを真摯に論じてくれています。
マイナーな雑誌なので、よほど大きな書店でないと直接手にとって見ることはできないと思います。
ご面倒でも、取り寄せて、目を通して頂ければ幸いです。
ちなみに、目次は以下の通りです。
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■退院・地域移行支援の現在
『精神医療』第4次57号
編集:『精神医療』編集委員会
責任編集:古屋龍太・佐原美智子
●特集:退院・地域移行支援の現在
○巻頭言:退院・地域移行支援の現在~特集にあたり
古屋龍太(日本社会事業大学/国立精神・神経センター)
○総論:退院・地域移行支援の現在・過去・未来~長期入院患者の地域移行は、いかにして可能か
古屋龍太(日本社会事業大学/国立精神・神経センター)
○地域移行支援は地域の課題~精神障害者地域移行支援特別対策事業を通して
岩上洋一(埼玉・地域生活支援センターふれんだむ)
○ピアサポータ-の活動を中心に始めた退院促進支援事業~東京・練馬の地域生活支援センターの取り組み
河島京美(東京・練馬区社会福祉協議会石神井障害者地域生活支援センターういんぐ)
○病院から地域へ~私たちに今、みえてきたこと
越智浩二・宮脇真理子・安里順子(京都・ねこのて訪問看護ステーション)
○地域移行支援事業の意義と課題~京都の精神障害者退院支援事業から
波床将材(京都・京都市こころの健康増進センター)
○地域への再定住のために~共感からはじまるピア・ガイド・ヘルパーの活動
三橋良子(神奈川・百合ヶ丘地域生活支援センターゆりあす)
○退院・地域移行~巣立ち会からの発信
田尾有樹子(東京・巣立ち会)
○精神科病院と地域生活支援
西澤美津子(長野・愛生会松岡病院)
○精神障害者の地域移行のためのプログラム開発および地域支援体制構築に向けた研究報告
香山明美(宮城・宮城県立精神医療センター)
○やおき福祉会における「精神障害者地域移行支援事業」の取り組み
柳瀬敏夫(和歌山・やおき福祉会紀南障害者地域生活支援センター)
○国立精神・神経センター病院社会復帰病棟での長期入院者への退院支援の実践
伊藤明美(東京・国立精神・神経センター病院)
●コラム
○「精神医療」は「精神障害者福祉」を位置づけることができるのか~問われているのはパラダイムの転換である
物江克男(京都・宇治おうばく病院けあほうむぴあ)
○外来診察室とペア家庭訪問
丹羽國子(愛知・まちの縁側クニハウス&まちの学び舎ハルハウス)
●連載
○雲に梯(1):フラーはいやです
久場政博(秋田・加藤病院)
○暴力のリスク・マネージメント(6):現代の精神医療における暴力を考える
煤賀隆宏(北海道・札幌医科大学付属病院)
○引き抜きにくい釘(25):アイヅチのジェネシス
塚本千秋(岡山県精神科医療センター)
○老いのたわごと(44):日本社会精神医学外史(その6)~戦争のことー立津政順、戦争中の松沢病院入院患者死亡率(昭和32年12月、精神神経誌)を中心に
浜田晋(東京・はまだクリニック)
●書評
○『手記から学ぶ統合失調症~精神医学の原点に還る』(八木剛平著、金原出版刊)
向谷地生良(北海道・北海道医療大学看護福祉学部)
○『自殺予防学』(河西千秋著、新潮社刊)
浅野弘毅(宮城・東北福祉大学せんだんホスピタル)
○編集後記
佐原美智子
(2010年1月10日 批評社発行、本体定価1700円)