PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

福祉系大学の受験生

2010年01月12日 13時06分23秒 | 大学という場所

まもなく、大学入試センター試験が始まります。
すでに昨年中に、推薦やAO入試等で合格の決まっている人もいますが、
いよいよ大学受験シーズン本番です。

今や、高卒の大学進学率は5割を超えました。
東京での進学率は65%に達しています。
一方で少子化により、受験生の激減は目を見張るばかりです。
今や選り好みしなければ、どんな学業成績でも、誰でも大学に入れます。

今年の新成人数は、過去最低を記録しました。
減少の一途を辿っていた国内の18歳人口は、2008年度を境に留まりました。
少子化傾向は一段落したと言われています。

私立の大学は、どこもあの手この手で、受験生の確保に躍起になっています。
定員割れを起こしている私立4年制大学は、570校中265校46.5%に達しています。
(2009年度入試における日本私立学校振興・共済事業団の調査)
約5割の私立大学が定員を満たせず、経営が苦しくなっています。

一方で、定員充足率は全国平均では106.5%に達しています。
大都市圏の大規模総合大学に、人気が一極集中しています。
全国の私立大学の8.5%に過ぎない49大学で、一般入試全志願者の70%を占めています。
誰もが名前を知っている「有名ブランド校」による、寡占化が進んでいます。

今年は更に、併願を避けて、地方出身者の地元校志向が強まっているようです。
学費を出す親の側が、不況による所得の落ち込みで、仕送りが難しくなっているためでしょう。
当然、学費の安い国公立大学に、昨年より人気が集まっています。

一方で、小規模な私立大学では、志願者数の激減が進行しています。
志願者数が減ると、偏差値も下がり、更にその大学の人気が下がるという悪循環に陥ります。
経営難に陥り、教職員の給料遅配が生じているところもあります。
募集停止、廃校、吸収合併等による、大学再編が既に始まりつつあります。

これまで、福祉系大学は、不況にこそ強いと言われてきました。
実際に、長引く不況の中で、受験生の学部志望動向は大きく変化しています。
昨年度と比較しても、手に職をつけることや資格を得る実学志向の学生が増えています。
社会福祉系・看護系を志望する受験生が増加している、というのが受験産業界の分析です。

現実には、福祉関係の求人も、前年同月比で20~30%減少しています。
それでも、不況にあえぐ一般企業よりは、はるかに高い水準の求人を維持しています。
一方、福祉を目指す求職者も30~50%の増となっています。
(東京都福祉人材センターの2009年度の求人・求職動向)
3Kと称された介護現場のイメージによる、学生の福祉離れが、ここ数年顕著でしたが、
不況の中で、安定した職場として福祉を選択する傾向が、強まっているようです。

たしかに、2008年9月のリーマンショック以降、志願者数が増えている学校もあります。
福祉系全体としては、志願者減少は底を打ち、かすかな復調傾向にあるのかも知れません。
けれども、やはり大規模な有名ブランド校志向による寡占化は、福祉系でもあります。
福祉系の大学は小規模なところが多いですから、志願者減少には未だに歯止めがかかっていません。

でも、福祉を本当に目指すなら、本当に学びたいなら、福祉系大学が良いです。
教員が揃っていると言うことだけではなくて、
共通の目標を持つ学生たちが創る、4年間の学びの環境というのは何物にも代え難い。
僕自身が今、小さな福祉系単科大学で仕事をしていて、そう強く思います。

人の人生にかかわり、人の人生に学ぶ。
綺麗事じゃない、リアルに生きる人間の幸福追求を支える。
そんな福祉の現場、ソーシャルワーカーの仕事を、
生きる道を探す若い人たちに、ぜひ志して欲しいです。