PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

医療福祉連携士とソーシャルワーカー

2010年07月02日 11時44分41秒 | PSWのお仕事

以前、このブログに、チラッと書きましたが…。
「医療福祉連携士」養成のための講習会が、今夏スタートします。
「医療福祉分野の連携・調整のエキスパートを養成する」ことを掲げています。
病院の地域医療連携室や、地域包括支援センターのスタッフを対象にした、初めての認定資格制度です。

主催は、NPO法人の日本医療マネジメント学会(JHM)です。
僕は会員でもないのに、ひょんなことからプロジェクトに関わることとなり、講師までやる羽目になりました。

ご存じのように、一般科の医療資源は、現在、明確にシビアに機能分化されています。
精神科も退院促進にシフトしつつあると言っても、まだ医療再編の蚊帳の外です。
特に急性期医療の提供病院は、どこも退院調整看護師などを配置して地域医療連携室を設けています。
圏域内の限られた医療資源を、最大限効率的に活用するというのが国の趣旨です。
国の増大する総医療費抑制というシナリオの中で、だいぶすったもんだがありましたが。
状態に応じて患者が医療機関を移動する、病病連携、病診連携が、今やもう当たり前です。

在宅介護面では、地域包括支援センターが定着し、社会福祉士等が配置されています。
でも、医療や福祉の連携をトータルにコーディネートする力は乏しく、これまでも課題でした。
高齢患者が急増している中で、医療提供や福祉利用、在宅医療や介護支援の体制整備が求められています。
患者・家族が最適な治療・療養環境を確保できるよう、医療、福祉、介護、行政等をつなぎ、橋渡ししていく人が必要です。

SWの立場からは「医療ソーシャルワーカーがいるじゃないか」と言いたいところですが。
一昔前のように、医療福祉相談室が単独ですべて回せるほど、業務量は甘くありません。
医師・看護・事務その他の多職種と協働しなければ、業務をこなせなくなっています。
むしろ、地域連携別立てで、MSWは純粋に福祉相談だけ、という病院はもう少ないのでは?
退院・転院調整だけやってきたMSWだと、地域医療福祉連携という流れに呑み込まれつつあります。

JHMは、全国・地方の学術集会の他に、クリティカルパスセミナー等開催している学会です。
「医療福祉連携士」講習会でも、地域連携クリティカルパスの演習等が組まれています。
医療・福祉連携パスの策定を進めることで、地域での連携を構築し、患者の共有ツールとして集積していくことを目指しています。

今回の資格化で、JHMが掲げている目的は…
地域の急性期医療機関から、在宅支援までの切れ目のないサービスの効率的提供。
患者にとって最適な連携を推進するための、医療と福祉のコーディネート。
地域における、限られた医療資源や福祉資源の効率的利用の促進と、医療福祉連携のシステムの構築に貢献。
…といった言葉に集約されます。
「医療福祉連携士」の育成と認定制度を創設することで、連携を実のあるものにしていきたいということに尽きるでしょう。

この講習会の履修が、学会認定の「医療福祉連携士」資格試験の受験資格の必須要件とされています。
学会の認定資格であって、国家資格ではないので、外部からどうこう言われる筋合いはないと言えば、それまでですが。
SW団体との意見交換等、事前に為されて然るべきだったのではと、個人的には思います。

次代のこの国の医療提供体制をにらんで、新しいバスが次々に発車しつつあります。
医療介護福祉士、医療メディエーター、医師事務作業補助者、相談支援センター相談員…。
医療現場というバスターミナルで、見慣れないバスに戸惑う専門職種もかなりいます。
実は、一番出遅れているのが、福祉の担い手を自称してきたSWなのかも知れません。

新しいバスの行き先と路線は、まだハッキリしません。
それでも、今後の病院経営を展望して、トレンドを志向する多くの職種が集まるでしょう。
あなたがSWなら、「医療福祉連携士」という新しいバスに乗りますか?
それとも、時代遅れと言われても、従来の「相談室」という独自路線を守りますか?

この医療福祉連携士の資格は、今後SWの世界で物議を醸すでしょう。
僕が、このプロジェクトに関わる中で、それなりの物議を醸したように…。
この資格ができて、一番問われているのは、実はSWのアイデンティティなのかも知れません。

参考までに、第1回医療福祉連携士講習会の案内の一部を以下に載せておきます。
詳しくは、日本医療マネジメント学会のホームページで確認して下さい。
→ http://jhm.umin.jp/


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特定非営利活動法人日本医療マネジメント学会
2010年度 医療福祉連携講習会
テーマ:医療・福祉分野の連携・調整のエキスパートを養成する。

1.会期
(1) 共通科目講習:2010年7月31日(土)、8月1日(日)、8月28日(土)、8月29日(日)の4日間
(2) 専門科目講習(A)医学系科目:9月11日(土)、9月12日(日)の2日間
(3) 専門科目講習(B)社会福祉学系科目:9月25日(土)、9月26日(日)の2日間
(4) 課題講習:10月23日(土)、10月24日(日) の2日間

2.会場
日本医科大学 教育棟2階 講堂

3.プログラム( )内は担当講師
<共通科目講習>概論等18時間、演習6時間、実習12時間以上

概論
1.地域医療連携概論 (武藤正樹)
2.医療政策・関係法規概論 (大久保一郎)
3.医療保険制度・診療報酬概論 (大久保一郎)
4.福祉連携論 (相原和子)
5.ケアマネジメント論 (古屋龍太)
6.病院運営概論 (高橋利毅)
7.医療情報システム概論 (津村 宏)
8.クリティカルパス概論 (野村一俊)

演習
9.クリティカルパス演習1 (野村一俊)
10.クリティカルパス演習2 (野村一俊)
11.地域連携クリティカルパス概論1 (武藤正樹)
12.地域連携クリティカルパス概論2 (武藤正樹)
13.地域連携クリティカルパス演習1 (野村一俊、藤本俊一郎、武藤正樹)
14.地域連携クリティカルパス演習2 (野村一俊、藤本俊一郎、武藤正樹)
15.在宅医療概論 (岡田晋吾)
16.カウンセリング概論 (矢永由里子)

実習
17.地域医療連携実習 (下村裕見子、武藤正樹)
18.地域連携クリティカルパス実習 (野村一俊、武藤正樹)
(17.及び18.ともに必須)

<専門科目講習>
○A 医学系科目  概論12時間、実習12時間以上

概論
19.臨床医学概論1(呼吸器系、循環器系) (西澤延宏)
20.臨床医学概論2(脳・神経系) (中村雅彦)
21.臨床医学概論3(感覚器系) (中村雅彦)
22.臨床医学概論4(筋・骨格系) (西澤延宏)
23.臨床医学概論5(消化器系・内分泌系) (宇治原誠) 
24.臨床医学概論6(泌尿器系、生殖器系) (金岡 剛)
25.臨床看護学概論 (橋口広子)
26.地域看護学概論 (秋山正子)

実習
27.臨床医学実習(急性期病院) (野村一俊)
28.臨床医学実習(回復期病院) (森 照明)
29.臨床医学実習(地域診療所) (宮澤総介)
30.臨床医学実習(保健所、市町村保健センター等) (清水 博)
(27.~30.のうち、少なくとも2施設を履修)

○B 社会・福祉学系  概論12時間、実習12時間以上
概論

31.医療福祉論 (小松美智子)
32.精神保健福祉論 (古屋龍太)
33.退院支援論1 (生駒真由美)
34.退院支援論2 (生駒真由美)
35.地域移行支援論 (古屋龍太)
36.福祉制度論 (小松美智子)
37.福祉施設論 (古屋龍太)
38.在宅介護論 (小林月子)

実習
39.介護療養型施設実習(入所施設) (小宅比佐子)
40.在宅福祉実習(包括支援センター等) (武藤正樹、下村裕見子)
41.福祉行政実習(市町村、福祉事務所、児童相談所等) (清水 博)
42.居宅介護支援施設実習(在宅施設) (古屋龍太)
(39.~42.のうち、少なくとも2施設を履修)

課題講習・ワークショップ・発表会
(大久保一郎、小宅比佐子、清水 博、野村総介、武藤正樹、木佐貫篤、下村裕見子、古屋龍太、矢永由里子)

特別講演
(長谷川敏彦)

※実習について
・実習は受講者が希望し、学会が承認した施設(自施設を含む)において履修。
・共通科目実習は2施設、専門科目実習(医学系科目及び社会・福祉学系)は各4施設のうち
夫々2施設を選択履修し、その後レポートを提出、評価を受ける。

講師一覧(50音順)
相原和子(国際医療福祉大学)
秋山正子(ケアーズ・白十字訪問看護ステーション)
生駒真由美(国立病院機構愛媛病院)
宇治原誠(国立病院機構横浜医療センター)
大久保一郎(筑波大学大学院)
岡田晋吾(北美原クリニック)
小宅比佐子(国立精神・神経医療研究センター)
金岡 毅(元福岡大学)
木佐貫篤(宮崎県立日南病院)
小林月子(岐阜大学)
小松美智子(武蔵大学)
清水 博(神奈川県平塚保健福祉事務所)
下村裕見子(東京女子医科大学病院)
高橋俊毅(国立病院機構横浜医療センター)
津村 宏(東京医療保健大学)
中村雅彦(波田総合病院)
西澤延宏(佐久総合病院)
野村一俊(国立病院機構熊本医療センター)
橋口広子(国立病院機構新潟病院)
長谷川敏彦(日本医科大学)
藤本俊一郎(香川労災病院)
古屋龍太(日本社会事業大学大学院)
武藤正樹(国際医療福祉大学大学院)
宮澤総介(なるみやハートクリニック)
森 照明(湯布院厚生年金病院)
矢永由里子(財団法人エイズ予防財団)
ほか

※ 授業の順番及び講師については、変更になる場合あり。履修の有効期限は2年間。

受講資格

・医療福祉連携士を目指す方もしくは医療福祉連携分野に関心の高い方
・日本医療マネジメント学会会員であることを原則としますが、非学会員でも受講できます。
<医療福祉連携士認定試験の受験を希望される方へ>
・学会認定試験ですので、学会会員であることが必要です。
・本講習の履修が必須です。
但し以下の免除規定があります。
・医療系の国家資格を有する者は医学系科目講習の、社会・福祉学系国家資格およびこれに準ずる資格(例:臨床心理士等)を有する者は、社会・福祉学系科目講習の履修を申請により免除できます。
・大学院において、医療福祉連携に関する課題により、修士号・博士号を取得した者は、医学系科目講習および社会・福祉学系科目講習の履修を申請により免除できます。試験の免除はありません。

参加費
100,000円(但し、非学会員110,000円)
但し、医学系科目講習または社会・福祉学系科目講習のいずれかの履修の免除をうけた場合
80,000円(非学会員 90,000円)
医学系科目講習および社会福祉学系科目講習の両方の履修の免除をうけた場合
60,000円(非学会員70,000円)
※ 実習、宿泊および交通に掛かる費用は自己負担。参加費の有効期間は2年間。

定員
150名(定員を満たし次第締め切らせて頂きますので、お早めにお申込み下さい。)

受付期間
2010年6月1日(月) ~ 2010年7月9日(金)
問い合わせ先
日本医療マネジメント学会事務局
〒860-0806 熊本市花畑町1-1三井生命熊本ビル3階
TEL 096-359-9099  FAX 096-359-1606
E-mail jhm@space.ocn.ne.jp