タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

山下惣一先生が身土不二に疑問を持った理由。

2023年09月21日 | Weblog
NHKが近々、農民作家の故山下惣一先生の特集番組を放送するそうです。
NHKは生前から山下先生が好きでしょっちゅう登場させてたからなあ~。
心配なのは、番組予約画面で、「身土不二を唱えた山下さん」、って趣旨を言っているところです。

身土不二ねえ。あれ、食養会が発明してそのスピンオフのマクロビオティックが精力的に広めた言葉なんですけどね、食養会もマクロビも身土不二を盾に「ミカンを食べるな!」って禁止しているんですよね。
だって、昔の東京人からみたらみかんは遙か遠方の和歌山や愛媛などから届くから。「地元の食品じゃないのを食べると病気になる。それが身土不二という言葉の意味。」って理屈だったんですよ。

ましてや山下先生は佐賀県唐津市のミカン農家。身土不二なんて言葉は商売上の天敵ですよ。

山下先生は「身土不二の探求」という本で、この言葉のうさんくささも正直に記してます。仏教の身土不二(しんどふに)と食養会の身土不二(しんどふじ)は本来関係ないのに仏教と混合されたことや、それではもともと仏教の方ではどういう言葉なのか、などを調べた労作です。(ただ、今では彼の調査不足の点も明らかになっています。)
山下さんは身土不二について、魅力的だけどきわどい言葉と懸念も抱いていました。他のエッセイや講演などでは、韓国の農協幹部が食養の説に魅力されて韓国に広めようとしたけど、日本人が創作した言葉だなんて言う訳にいかないもんだから「我が国には中国伝来の身土不二の伝統がある、地元以外の食品を食べると病気になるという中国の伝統だ」と作り話を創作して韓国の辞書に載せたアカン経緯や、そんな韓国初発のでたらめな説を信じた日本で身土不二ブームが起こった、という、実にきな臭い裏事情も正直に語っています。
NHKの番組紹介欄に書かれているような単純に「唱えていた」というのとは山下さんの本音からはずれています。

山下先生も草葉の陰で歯がゆく思っているのでは。どういう番組になるのか期待と不安が入り交じってます。

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ユネスコ無形文化遺産に登録された和食は一汁三菜でない。発酵食品も強調してない。

2023年08月30日 | Weblog
朝倉書店といえば信頼できる書店だったはずなのですが、朝倉農学大系5「発酵醸造学」(北本勝ひこ編)p8の次の記述は明らかな間違いです。

引用「2013(平成25)年12月、「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録された。一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルなどが特徴とされる。和食にとって、醤油、味噌、みりん、それに日本酒などの伝統的な発酵食品はなくてはならないものである。」

違います。ユネスコに登録された和食は、正月のおせち料理を代表とした年中行事を基盤とした食文化全体であり、モチや旬の野菜や魚など非常に多種多様なものです。ユネスコに登録されたのは一汁三菜ではありません。しかも発酵食品はだし(昆布や椎茸などの非発酵型のものも多い。)とともに並列で紹介されているので、特に発酵食品に重きを置く内容ではありません。

北本先生の文章は明らかに何か誤解しています。

ユネスコに日本政府(文化庁と農水省)が実際に登録した文章はこちらのURLから読めます。
https://ich.unesco.org/en/RL/washoku-traditional-dietary-cultures-of-the-japanese-notably-for-the-celebration-of-new-year-00869
ユネスコのホームページの概要とノミネーション文書は英文です。英語は苦手という方のため翻訳を以下、紹介します。

まず、ホームページの概要記述をgoogle翻訳したもの。
「和食、日本人の伝統的な食文化、特に新年のお祝い

和食は、食品の生産、加工、準備、消費に関連する一連のスキル、知識、実践、伝統に基づいた社会的実践です。それは、天然資源の持続可能な利用と密接に関係する、自然を尊重するという本質的な精神と結びついています。和食に関連する基本的な知識と社会的および文化的特徴は、通常、新年のお祝いの際に見られます。日本人は新年の神様を迎えるためにさまざまな準備をします。餅つきをしたり、新鮮な食材を使った特別な食事や美しく装飾された料理を用意したりしますが、それぞれに象徴的な意味があります。これらの料理は特別な食器で提供され、家族で、またはコミュニティ全体で共有されます。この習慣は、さまざまな自然食品の摂取を促進します。米、魚、野菜、山菜など地元産の食材を使用。家庭料理の正しい味付けなど、和食に関する基礎的な知識や技術は、共通の食事の時間の中で家庭内で伝承されています。草の根団体、学校教師、料理講師も、公式および非公式の教育や実践を通じて知識やスキルを伝達する役割を果たしています。」


続いてノミネーション文書のうち、和食の説明をしている部分(画面の左から英語版pdfをダウンロードして、マイクロソフトの機能で自動翻訳。和食に関連する個人の名前、登録者の住所や電話番号などの情報はカットしました。また、「土双」は屠蘇の間違いと思われます。)

B. 要素の名前
和食、日本人の伝統的な食文化、特に新年のお祝い

B.2. 該当するコミュニティの言語およびスクリプトの要素の名前 (該当する場合)
和食; 日本人の伝統的な食文化 -正月を例として-

C. コミュニティ、グループ、または該当する場合は関係する個人の名前
(省略)

D. 要素の地理的位置と範囲
この要素は、州の領土全体で実践されています。
基本的な共通点を持つが、北日本の北海道から南日本の沖縄まで多様性に富み、地理的条件の多岐にわたることや歴史的背景の違いに対応している。多様な魚介類や農産物、山菜などを活用することで、地域に多様性が生まれ、日本各地に特有の伝統的な食文化が地域の人々に育まれてきました。


E. 連絡窓口
(省略)

1. 要素の識別と定義
(省略)

(一) 要素を見たことも経験したこともない読者に紹介できる要素の簡単な要約説明を提供します。

WASHOKUは、食品の生産、加工、調理、消費に関連する包括的なスキル、知識、実践、伝統に基づいた社会的実践です。それは、天然資源の持続可能な利用に密接に関連する自然を尊重する本質的な精神に関連しています。WASHOKUは、日常生活の一部として、また年中行事とのつながりを持って発展し、自然環境や社会環境との人間関係の変化に応じて常に再現されています。
和食に関する基本的な知識、社会的、文化的特徴は、日本人が世代から世代へと受け継がれる伝統に没頭し、アイデンティティと継続性を再確認する新年の儀式で典型的に見られます。新年のお祝いの和食は 、各州が独自の歴史的および地理的特異性を持っていることを考えると、地域的に多様性に富んでいます。人々は来年の神々を歓迎するためにさまざまな準備をします。餅を叩いたり、美しく装飾された料理「おせち」「雑煮」「土双」など、それぞれが象徴的な意味を持つ新鮮な食材を使った特別な料理を用意しています。これらの料理は特別な食器で提供され、家族が共有したり、コミュニティメンバーがまとめて共有したりして、人々の健康と社会的結束を確保します。これは、高齢者がこの社会的実践に含まれる意味を子供たちに教える機会を提供します。
和食は、伝統的でバランスのとれた食事を共有することで、日本人がアイデンティティを再確認し、家族やコミュニティの結束を育み、健康的な生活に貢献するために、日常生活の中で重要な社会的機能を持っています。


(二) 要素の担い手と実践者は誰ですか?
(省略)

(三) 要素に関連する知識とスキルは今日どのように伝達されていますか?

家庭料理の適切な味付けやその精神的・健全な側面など、要素に関する基礎的な知識や技術を「おふくろの味:家庭料理」と呼びます。彼らは両親や祖父母から家で彼らの子孫に受け継がれました。地域の高齢者は、自分たちの食文化を若い世代に伝えてきました。これらの精神的で健全な側面、文化的知識とスキルは、食事の時間とイベントを一緒に共有しながら、 主に口頭の伝統と実践によって伝達されてきました。
草の根グループはまた、公式および非公式の教育(学校や料理教室での伝統的な食文化の講義など)または体験の提供(地域の特産品のデモンストレーションや提供など)を通じて、知識とスキルを子供や若い世代に伝えます。
また、学校の先生は、生徒に伝統的な食文化を体験する機会を提供することで、学校のカリキュラムや学校給食の要素に関する知識やスキルを伝達しています。
料理インストラクターは、料理学校や都市の文脈でのいくつかのイベントでそれらを送信します。
また、元素の専門知識・技能を実習生に伝承 し、見習い制度を通じて元素の専門知識を一般社会に伝達することに貢献しています。
これらの知識や技術は、多様な文化の流入や技術開発などの社会環境の変化に応じて常に再現されていますが、その根底にある精神と機能は引き続き浸透しています。したがって、この要素は日本人にアイデンティティと継続性の感覚を提供します。


(四) その要素は今日、そのコミュニティにとってどのような社会的および文化的機能と意味を持っていますか?

日本人は、他の日本人が消費し、先祖が享受していた文化的、社会的、栄養的に適切な食事を共有することで、帰属意識を高め、日本人としてのアイデンティティを再確認します。 例えば 、お正月の特別食によく使われる餅やだし、発酵調味料の味や香りは、日本の伝統的な食生活の象徴であり、日本の伝統やアイデンティティを再確認する貴重な機会となっています。
社会的および文化的機能の観点から、この要素は、非常に高齢者や障害者を含む家族やコミュニティ間の家族的および社会的結束を促進します。新年のお祝いのためのご飯を叩くなど、地域連携や相利共生による様々な行事のための食事の準備は、連帯感や親睦を強める一例です。 食事の時間を共有し、自然の恵みのある食材を一緒に鑑賞することで、人々は家族やコミュニティのメンバーの絆を強めます。このように、 和食原料の生産において農家が共有する連帯の精神など、社会関係資本の発展の基礎を築いてきました。
また、日本人の健康生活、長寿、肥満予防にも貢献しています。米、魚、野菜、山菜など、自然を基盤とした様々な食材や地元産の食材を摂取する必要があるため、栄養的にバランスが取れており、日本人にとって文化的に意味のある食事です。 また、濃厚な旨味のあるだしや発酵調味料に関する知識と実践は、動物性脂肪の代替により、カロリー摂取量の低減や肥満予防に貢献します。

(以下略)

以上で翻訳はおしまいにしますが、ユネスコが受け取った上記文章はあくまでも日本政府側がノミネーションで主張した文章なので、ユネスコは健康面の効果を確認して居ません。ユネスコの立場は「日本政府は健康に良いって言っているけど、健康面を確認するのはWHOの業務。うちは文化遺産として保護対象かどうかを判断しているだけよん。」です。文化遺産に登録されたことで「和食が身体に良いと世界が認めた」なんて言っている馬鹿がいたら、それは国際機関の仕組みを知らない方でしょう。

国際歌唱コンテストに応募した男性がノミネーション文書に「僕は柔道も書道も師範級です」と書いて、ステージで歌って受賞しても、本当に書道師範級かまではコンテスト委員会がチェックしてないのと同じです。

最後に一言。皆さんもちゃんと原文に当たってね。


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朝日新聞の「発酵ブーム」記事の疑問点

2023年07月16日 | Weblog
2023年7月9日朝日新聞デジタルに、実に興味深い記事が掲載されました(11日には本紙にも掲載されています)。発酵食品ブームを牽引していると自称する「小倉ヒラク」さんが、発酵ブームはうれしいけど、発酵食品でナショナリズムを喚起して政治利用しようとしている動きがあるので特に農水省当たりには目配りしてくれ、と書いているのです。

ヒラクさんは「安易に民族的精神性や「日本スゴイ」に結びつけるのは危険です。」と指摘し、和食がユネスコ無形文化遺産に登録された時に「独自性が過度に強調され」たと書いています。そのユネスコ登録文書にも記載された新鮮な食品を最小限の加工で食べる伝統(=刺身や煮物、焼き物、酢物などが該当します。)は、明治以降の「作られた伝統ではないか」と主張しています。

確かに和食をナショナリズムの高揚に結びつけてはいけません。その点は賛成します。
しかしヒラクさんには申し訳ないけど、ヒラクさんの文章には大きな誤解が含まれているし、彼の人脈を見ると彼の発言に隠された本音が見えてきます。
 先に人脈の方を指摘しましょう。その方がわかりやすいから。

 ヒラクさんは①2010年に東京農大名誉教授の小泉武夫氏の元で学び、②スピリチュアル系右寄りニセ科学で大変有名な「マクロビオティック」の信奉者に支えられてマスコミの寵児になった人物です。

 小泉氏は東京農大教授時代の2001年に「食の堕落と日本人」という本を書き、その内容は完全に洋風の食事を「堕落」として否定する本でした。和食を食べない日本人は堕落しており正しい日本人は和食を食べなさい、洋食を止めなさい、という本です。おやおや、最近のどこかのナショナリズム喚起政党の発言内容とそっくりですよ。小泉氏のこの本は大ヒットしました。農水省より前からナショナリズムを喚起・利用していた訳です。
 その小泉氏の弟子であるあなたが何を言うのかと問いたい。

そして、小泉氏は雑誌ソトコトでのスローフード連載で「食の総理大臣」という称号を授かって、和食こそが正しい、と右寄りの説を唱え続けたんですよ。誌上で総理大臣ごっこしながらなんて、ナショナリズムの発露ではありませんか。

 ソトコトは当時スピリチュアルもよく載せていたので、スピリチュアルなマクロビ人脈が小泉氏の知己になって行きました。もともとマクロビは「米をたくさん食べることが正しい。洋風の食品は避けなさい。」と民族的精神性を重視する発想だったので、ますますそういう人が小泉氏のファンになりました。
 
 で、②なんですけど、ヒラクさんは自分自身のブログでも自伝を記して、「最初のターニングポイントは、2011年以降。環境や自分の生活環境に不安を抱える人たちが発酵に持つようになりました。僕の講座に参加する人で一番多いのはこの人たち。マクロビや菜食主義の実践者」((https://hirakuogura.com/?p=7419 参照 2023年7月16日))と述べました。つまりマクロビに向かって足を向けて寝られないほどマクロビに恩義を受けているのがヒラクさんだと判明。
 ほかにも有名な和風自然化粧品の「あきゅらいず」の広告対談では、ヒラクさんはマクロビで有名な中島デコ氏と対談して、女性の間で知名度を上げました。

対談広告から引用しましょう。
「【中島デコ×小倉ヒラク対談#1】美肌の秘訣は、毎朝の味噌汁と「好き」を極めること2016.11.18 ある晴れた日、千葉県いすみ市にある「ブラウンズフィールド」で、発酵デザイナー・小倉ヒラクさんが料理研究家の中島デコさんを訪ねました。ヒラクさんは、「大人すはだ」の運営元である「あきゅらいず」の創成期のメンバー。デコさんも5年ほど前に「あきゅらいず」の代表である南沢典子さんに出会い、以来お付き合いが続いています。」((http://otonasuhada.jp/dialogue_deco_and_hiraku_1/ 参照 2023年7月16日)) 

①に話を戻すと、小泉氏は洋食否定運動を開始してしばらくして、農水省からお誘いがあり、様々な検討会講演会で、日本は世界一の発酵の国!と「日本スゴイ!」を連発して、農水省の食育分野で広く活躍したのですよ。
 ヒラクさん、あなたの師匠が農水省を踏み台に食育で「日本スゴイ」を散々広めておきながら、今更「麹を使ってナショナリズムをやってる農水省には目配りを」って他責するなんて恥ずかしくないのですか?農水省がナショナリズム的な思想に傾倒するようになったのなら、それはあなたの師匠のまいたタネではないでしょうか。

 さて、ヒラクさんが朝日記事に書いた説「「正しい和食」は生鮮な食材を使用するという説は明治時代にねつ造された伝統だ、なぜなら和食は発酵大国だからだ、明治時代に食の廃仏毀釈が行われたため、ねつ造されたんだ」という趣旨のトンデモ発言も、食文化論を分かってないようです。

 そもそも「正しい和食」と言ってるのはだれ?そうやって「麹や発酵食こそ正しい日本の伝統」と言ってナショナリズムをあおっているのはヒラクさんですよ!

 「和食」の定義は文脈や場面によって異なるというのが、多数の食文化研究者の共通的考え方です。あの第一人者の熊倉功夫先生でさえ、書く媒体によって定義を使い分けているため、時々自己矛盾することを言っていますよ。私自身もブログで何度も「和食」は文脈によって様々なパターンがあるため定義が難しいと指摘しています。「正しい和食」があるという考え方を共有しているのは、むしろヒラクさんとヒラクさんの師匠の小泉氏ではありませんか。
 
 「正しい和食」は無いが、他国(欧米や中国韓国など)との差異はあります。特徴という言葉でも言い換えられるでしょう。そして、外国人に「日本の食の特徴は?」と問われた時に、「発酵食品です」と言ったら相手に差異を説明しにくいものです。いくら「日本は発酵食品大国で麹が麹が」と言ったところで、諸外国にも似た文化があるからです。似た文化を説明しても特徴ではありません。

似た文化を「特徴だ」と言い張ると、例えばこんなわびしい結果になります。
「麹?ああ、うちの国のクモノスカビ文化を取り入れようとして失敗した結果ですよね?うちの国は堅い穀物を生のまま粉砕して固める技術があったから、餅麹(クモノスカビを穀類にはやしたもの)ができたんですよね。日本にはその技術が無かったから米を蒸して菌類を生やすしか方法が無かったわけだけど?」
「麹?ああ、うちの国も発酵食品大国で、パンにビールにワインにチーズ。コウジは身体に良い?はあ、それを言ったらチーズも身体に良いけど。コウジは美味しい?ビールも美味しいよ。・・・あなた自分の物差しで話してない?」

このように発酵文化は和食の特徴としては不適切です。発酵以外の何かを特徴として明確に説明が出来ないと、日本はどこかの国の属国扱いされかねません。そこで明治時代に、洋・中・韓との違いを明示できる特徴として、新鮮な食材を最低限の加工度で提供するのが日本の食文化の特徴だと気づき指摘したわけです(例えば刺身、煮物、焼き魚、貝の吸い物、おひたしなどです)。これらの調理法は明らかに他の文化体系と異なる事実です。正しさの押しつけでもねつ造でもありません。

ユネスコ無形文化遺産に和食が登録された時に、新鮮な食材を使うのが和食の特徴だとされたのは当然です。大陸文化等と決定的に違うところを説明出来ないなら、ユネスコが登録するはずもない。それなのにヒラク氏は、こうした大陸との差異の指摘をねつ造だ、「独自性が過度に強調され」ていると言っているのです。残念な方だと思いました。

先に、ヒラクさんはマクロビ仲間を大事にしなければならない立場に置かれていることを指摘しました。しかもマクロビは漬物が大好きです。マクロビ擁護のために、「新鮮な食材を食べる日本の伝統」はねつ造だと主張しているのではありませんか?
しかも小泉氏やマクロビが散々盛り立てた「日本スゴイ」を役所の責任に押しつけて、「日本のコウジスゴイ!」って宣伝するなんて・・・良心がとがめませんか。


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海外抹茶ブームの陰で国産抹茶の危機が。

2023年06月25日 | Weblog
近年欧米諸国で抹茶が大ブームです。火付け役になったのは大手カフェチェーン店などの抹茶ラテと言われています。その結果、ドリンクやお菓子などを美しい緑色に染められると、抹茶が大人気です。日本の高級抹茶は高値で輸出され業界はうれしい悲鳴だそうです。しかし、英語圏の情報を検索していて、大きな問題が生じつつあることに気が付きました。抹茶生産者も多分まだ知らないと思いますので、急いで紹介します。ぜひ対応急いでほしいと思います。

4,5年前からアメリカなどでは、バタフライピー茶をブルー抹茶、ドラゴンフルーツの粉末をピンク抹茶と命名して売り出す企業が現れています。このため、アメリカのお茶ブログでは「ブルー抹茶は抹茶ですか?」と言うQ&Aを設けているページさえあります。(答えはもちろんノーです。)

幸いまだ英語圏ウキペディアでは、抹茶はあくまでもチャノキの粉末に限られるとしています。しかし、すでにInstagramではバタフライピー茶をブルー抹茶として紹介する動画が1,000,000回再生されているケースもあります。
このまま放置すると、数年以内に英語圏では「マッチャ」は単に「赤や青や緑などカラフルな色を飲み物やお菓子などに与える色素」という意味に変換することでしょう。

日本の茶業界が適切に対応しないと、「マッチャは植物性色素の総称であり、その中に緑色のチャノキ粉末も含まれる」となるでしょう。和食の大好きな私としては、このようにお茶の位置づけを矮小化する誤解が広まる可能性を危惧しています。


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「漬物を食べて野菜不足が解消出来る」の嘘。

2023年06月13日 | Weblog
6月3日の朝日新聞be「食のおしゃべり」欄に良い記事が載っていました。タイトルは「漬物で野菜摂取量アップ?食塩取り過ぎに注意」です。
この記事によると、農林水産省が4月末に「漬物で野菜を食べよう!」という取り組みを発表していたが、どうも科学的におかしな内容なんだそうです。
そもそもそんな取り組みがあるなんて知らなかったので農水省ホームページを調べたら確かにやっていた。
 農水省によると、日本人の野菜摂取量は、厚生労働省の策定した目標値より70グラムほど少ないので、このたび漬物で野菜を食べるように勧めることにしたそうです。チラシを用いて各種イベントでもっと漬物を食べようと訴える、ということです。農水省の言い分では「生野菜70グラムは、梅干しなら35グラム、福神漬けなら33.6グラムで済むので、漬物は少量で健康に良い」という説なんですが、ちょっと待ったああああ!それ、間違いですよ。

 まず、朝日新聞の指摘を書いてから、次に私の付け足し情報を書きます。
 朝日新聞の指摘では塩分取り過ぎになるのが心配だということです。「食塩の過剰摂取は高血圧の要因で、ひいては脳卒中や腎臓病を招く恐れがあります。胃がんとの関係も指摘されています。日本人にとって最重要の栄養課題なのです。」ということで、日本高血圧学会の三浦克之滋賀医科大教授にも伺ったところ、日本人の食塩摂取量の約10%が漬物からだったという研究結果もあり、学会でも高塩分の漬物をひかえるよう奨励していたのに、農水省のメッセージは「国民を混乱させる危険性があります」ということでした。三浦教授の指摘は非の打ち所もない事実です。

 そこへ私からも追加情報を投下します。
 農水省のそのチラシでは「漬物は、ビタミン、ミネラル、食物繊維、乳酸菌などを含みます」といかにも漬物は身体に良いように誤解するキャッチフレーズを書いて居ましたが。それ、大げさなんですよ!
 実際に最新版の八訂日本食品標準成分表で、調べてみました。
 農水省は福神漬け33.6グラムを取れば生野菜70グラムに相当すると言うので、皮をむいた大根生サラダにマヨネーズ(全卵)10グラムをかけて食べた場合とで栄養価を比較しました。驚きましたよ。サラダの方が葉酸やカリウム・マグネシウムなどのビタミン・ミネラルが多いのでした。塩分は福神漬けは1.7グラム、マヨネーズサラダなら0.2グラム。後で述べるけど福神漬けにはほとんど乳酸菌が入ってません。これらを総合的に判断すれば、サラダの方が健康にいいことはすぐわかります。(ちなみに農水省は福神漬け33.6グラムの食塩量を1.1グラムと少なく表示してましたが、特別に減塩な製品では?)

 福神漬けだけでは信じられないというあなたに、キュウリの例も挙げましょう。
 キュウリは浅漬けなら56グラム食べるだけで生キュウリ70グラムに相当し、食塩量は0.8グラムだと言う農水省。
 でも実際に八訂で塩漬けキュウリと生キュウリ70グラムに全卵マヨネーズ10グラムをかけたサラダを比較したら、サラダの方がほとんどのビタミン・ミネラル量が勝っている上に食物繊維量はほぼ同じ、それで塩分は塩漬けが1.4グラム、サラダは0.2グラム。
どう考えてもサラダの方が良い。それに塩分量が農水省側は大甘表示なのはなぜでしょう。

それでも信じられないという方のために、キュウリの古漬け(食品成分表では醤油漬けに相当)とキュウリマヨネーズサラダを比較したら、これもビタミンやミネラルがサラダの方が多いんですよ。
 なんで漬物より生の野菜の方がいいのでしょう。それはね、漬物にすると、つけ汁にビタミンやミネラルが溶け出て失われるからです。身も蓋もない話ですね!!

 いやいや、漬物には乳酸菌があるじゃないかー!!と叫ぶそこのお姉さん。それも誤解なんです。農水省のチラシでは、19種類の漬物を写真入りで紹介していたんですが、業界関係者など見る人が見れば、メーカーや製法が分かるんですよ、ふふふ。農水省さん、国民をなめないでちょうだいな。写真を見る限り、確実に乳酸菌がたくさん含まれているのはたった一つ、キムチだけです。キュウリ・大根・キャベツ・なすなどの浅漬けも掲載されてますが、これらはメーカーが乳酸菌を添加しない限り、それほど発酵しないうちに出荷されるので、乳酸菌の健康効果はほんのお気持ち程度です。漬物から取るよりヨーグルトから取る方がたっぷり乳酸菌がとれますよ。

 チラシ写真のきゅうりの「古漬け」は某有名メーカーのだとすぐ分かるんですが、会社さんの為に名称を伏せます。この漬物は中国で塩づけしたキュウリを輸入して、国内で殺菌した調味液に付け直しているので、乳酸菌はほとんどありません。「干し大根の古漬け」「カブの浅漬け」「福神漬け」「野沢菜の浅漬け」「しそ漬けきゅうり」「生姜の浅漬け」「らっきょうの古漬け」も同様に、殺菌した甘酢や調味液(酢、塩、醤油、砂糖、うまみ調味料などの混合液)につけ込んで味をしみこませた商品なので、乳酸菌はほとんどありません。乳酸発酵している漬物と調味漬物では色やつやが違うので写真で分かります。
 奈良漬けはというと、あれは5回ぐらい漬け床を取り替えているし、販売する直前にも漬け床を水で完全に洗い流してから新鮮な調味酒かす(業界用語で「化粧かす」と言います)を塗って出荷しています。こういう行程で何度も乳酸菌をこそげ落としているので、健康にメリットがあるほどの乳酸菌は含まれないと考えられます、

 さて、漬物は塩辛いのでつい水を飲み過ぎたり食が進んでしまいます。おなかの中でかさばって早く満腹する野菜サラダやうすい味付けの煮野菜の方がダイエットにもいいでしょう。また、漬物は輸入原料が多く使用されています。日本国内の漬物の多くは、中国産野菜(大根、キュウリ、柴漬け、梅干し、ニンニク、なす、しょうがなど)を塩漬け加工して輸入し、日本国内で調味液などに漬け直しています。また、キムチは韓国産や中国産が多いです。
本当に日本の農業を応援したいなら、漬物を変に勧めるのはよろしくないのではないでしょうか。農水省さん。


訂正と補足(6月16日)・奈良漬けの漬け替え回数を5~10回と書きましたが、現在は4~5回が主流です。お詫びして訂正します。・上記の農水省のチラシの中に梅干しが紹介されていますが、梅干しの漬ける前の姿は野菜でなく果実(青梅の実)です。青梅の実は毒があるため決して生で食べないでください。青梅は、梅酒にするなどの適切な加工を経て毒を消してからでないと食べられません。このチラシは生で食べるより漬物にした方が効率よく食べられると主張する内容なので、このままだと生の青梅が食べられると消費者に誤解されのではないでしょうか。

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衝撃!日経が陰謀論の本をおすすめしちゃった!

2023年05月22日 | Weblog
今朝(2023年5月22日)の日経朝刊で、なんと陰謀論の本がおすすめ本として紹介されてしまいました。陰謀論とは、事実ではないのに「あれはアメリカの陰謀で」「あれは宇宙人が人類に仕掛けた壮大な陰謀で」などと大げさに言って読者を洗脳するアレです。
「読むヒント!」という毎週月曜日に掲載される若者向けおすすめ本のコーナーです。紹介されてしまった陰謀論本は、鈴木猛夫氏の「「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活」という、20年くらい前に出版された本です。
 この本はこういう陰謀論です。「アメリカの小麦団体が小麦粉を使った欧米風料理を日本に紹介した。それで日本人の食生活を変えてしまい欧米型の病気や成人病(生活習慣病)が増えてしまった。そこにはアメリカの陰謀があった。」この鈴木氏の説がでたらめだらけだということは、2013年にこちらのリンク先の論文で発表されてます。
生活改良普及員の昭和20~30年代の栄養指導の意義と功績
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2030870944

 読むと鈴木猛夫氏の大間違いをこれでもかと指摘しまくりで、論文ってこんなに笑えていいのかしらと思う内容です。おすすめポイントを列挙します。
小麦の一人当たり消費量は昭和40年頃から現在までほとんど変化ない。
・米を食べると頭が悪くなる説はアメリカの陰謀ではなく、戦前から日本人が唱えていて、戦前の人気小説「細雪」に描かれるほど一般国民によく知られていた説。
食が欧米化したのはパンではなくお米が原因。日本人は洋風おかずをパンの代わりにごはんを中心において食べるようになった。ごはんに肉と油のおかずが合うことに気がついたため。その結果、日本型食生活が成立して世界一の長寿国になった。
キッチンカーは洋食だけでなく日本の伝統食や中華料理などを指導した

なぜ鈴木氏はでたらめを書いたかについても、2019年発表論文「自給運動と地産地消の歴史」にさらっと指摘してます。実は鈴木猛夫氏の本業は南大塚の商店主で、昔は精米機を扱っていた。その頃共産党系の雑誌の「読者の投稿欄」に、身体に良いお米は自宅でつかないと手に入らないから小型精米機をお売りしますと投稿していた、と。
 共産党ねえ。アメリカが嫌いだから陰謀論をながしたんでしょうね。ついでに精米機販売でもうけるつもりだったんだ。なるほどね。
日経さん、若い方々、陰謀論にはくれぐれもご用心!

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牛のゲップは温室効果ガス増加の主因では無かった

2023年05月17日 | Weblog
タイトルの件についてはこのブログで繰り返し訴えてきたことですが、やっと公益的な雑誌もこの問題を正面で扱ってくれるようになって、うれしいです。日本政策金融公庫が広報AFCforum(2023年春1号)で、牛のゲップは日本の温室効果ガス全体でみると非常に小さいことを指摘してくれました。指摘してくださったのは協同組合日本飼料工業会業務部長兼安全プロセス推進室長の石川巧先生です。
 先生も、最近「牛のげっぷは環境を破壊している」という言説を見かけて疑問に思ったそうです。そこで事実から検証したところ、日本全体の温室効果ガス総排出量(二酸化炭素換算で」約12億トン)のうち、畜産由来は1%程度だと計算されたそうです。畜産由来の約半分がげっぷ、残りが排泄物由来だそうです。つまりげっぷ由来はおよそ0.5%程度ですね。

そもそも論として、農林水産分野に話を絞った時でさえ、牛のゲップ由来のメタンより稲作由来のメタンの方が多いのです(農林水産分野の排出量全体を100%とした時、げっぷは15%、稲作は25%です)。

それに、牛のゲップを抑制するエサも開発・販売されており今後ますます牛のゲップは減るということです。それを考えると、人間には食べられない草を畜産物に変えてくれる牛のありがたさの方が温暖化効果を上回る。

地球温暖化は待ったなしの問題です。私たちも、車の運転の際に無駄なガソリンを使わない、公共交通機関で行けるところは、自家用車より公共交通機関を使う、お風呂やシャワーなどの無駄を見直す、など様々な行動をしましょう。牛のゲップを批判するより遙かに効果的で確実です。

食育は誤解して大げさな説を広める人がたくさん居るのが実情です。当ブログは今後も、食育で勘違いしやすいポイントを指摘し、科学的に正確で史実に基づく食育を紹介します。

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坂本龍一さんへ謹んで哀悼を捧げます。

2023年04月19日 | Weblog
このブログでは過去2回坂本龍一さんを取り上げています。
坂本さんは、90年代後半から10数年間、スピリチュアル系健康法を行っていました。
(彼の環境問題等への発言は、時に過激ともとれる内容でしたが、
それはそのスピリチュアルの発想と重なるところがありました。)

しかし、ご自身ががんになり人生を見つめ直した結果、西洋医学を受け入れる決断を
なさったので、以前のブログでその勇気に感謝して投稿しました。
スピリチュアルに染まったままでは彼の寿命はもっと短命だったのではと思います。

ですが西洋医学にも限界はあります。
訃報に接したときは、悲しみでぼう然となりました。
せめて愛惜の思いをここに記したいと思いましたが、もしも坂本さんが
「寿命が短くてもニセ医療を信じてるほうが良かったな」と
考えながら亡くなったかもしれないと想像すると、文章が書けなくなりました。

ですがおととい、細野晴臣さんがTwitterでコメントされました。
坂本さんは、数年かけて準備し、後悔なく静かに旅立ったと。
それを知って私も感謝で涙がでてしまいました。

心よりご冥福をお祈りいたします。

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健康ニュース番組がまた粗雑化している。

2023年03月16日 | Weblog
数年前まで、テレビやネットの健康ニュースは本当にひどいものでした。統計的根拠も医学的根拠も無い、自称「識者」の思いつきを垂れ流す健康番組が多くて、だから私もブログでなんども繰り返し指摘してきたわけです。

一方で、業界の方も無責任な健康情報を流すのは国民に有害と気がつき、いい加減な情報は検索トップに上がらないようにこの数年で変化してきたわけです。ところがここに来て、またヤフーニュースがあきれた記事を紹介してきました。3月14日火曜日配信の「まずは検診を!専門家も呼びかけ「大腸がん」検診で早期発見」という記事です。

 なお、もとはTOKYO MX(地上波9チャンネル)の朝の報道・情報番組の1コーナーで紹介された情報で、それをテキスト化してヤフーニュースで紹介した、という流れです。

キャスターがあるクリニックの先生に大腸がんについて伺うと、先生は大腸がん患者の増加背景には「食事の欧米化」がある、と真っ先にあげました。でもですね、このブログで何度も指摘してきたんですが、昭和末から平成初めの日本人の方が、現代の日本人よりもよほど欧米化しているんですよ。例を挙げます。

・欧米化の象徴といえば牛肉を思い浮かべる方が多いでしょう。
 実は農水省データによると意外なことに1995~2000年頃の日本人の方が、現代人より牛肉を食べているのですよ。引用します。
 「平成12(2000)年度には1人当たり7.6kgに達しました。(中略)消費が急激に減少し、減った分の需要は豚肉や鶏肉に置き換わりました。令和元年度の1人当たり消費量は6.5kgで、ピーク時の水準には至っていません。」((https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-04.html 参照 2023年3月16日))
 なお、牛肉と入れ替わるように豚肉の消費は増えましたが、豚肉はとんかつなどの和風料理や、肉まん・ギョーザ・ラーメン等中国料理に消費されることが多いので、これを「食の欧米化」と呼ぶのは間違いです。「食の中国支配」と言った方がいいかもしれません。

・農水省統計データによると一人当たりの野菜の消費量ピークは、米国の食文化の影響を強く受けていた昭和40年代で、例えば1971年は年間に119㎏も食べています。
 日本は古代から、野菜は少量だけ食べる文化でした。明治初期に日本に来た米国人ホーレス・ケプロンもあまりの野菜の種類や量の少なさに驚いたため、日本政府へ様々な野菜・果樹・家畜をプレゼントしています。しかし、明治時代に誕生した穀食主義(お米をたくさんたべればおかずは少なくても良いという考え方)が文化人に広まったため、野菜を食べる大切さはなかなか広まりませんでした。この思い込みが改善されたのが、第二次世界大戦後のことです。カレーライスや肉じゃが(洋食をヒントに誕生したと言われます。)やサラダなどが一般家庭に広まり、野菜をたくさん食べるようになりました。つまり次第に野菜の消費が減ったのは、日本の伝統に戻ったということです。
(3月26日、誤解のないように追記します。カレーライスや肉じゃが、サラダは、都会の中間層や地方の上流層は戦前から食べていました。ここで言う「一般家庭に広まり」というのは、戦後にほぼ全ての人が知る食べ物になったという意味です。)

・牛乳の消費ピークは1994年前後で、年に一人当たり34.7リットル。
 ちなみに2021年は25.5リットルだから9リットルも減ってます。
(出典 https://www.j-milk.jp/gyokai/database/raku_nyu-sanko.html)

・小麦の消費量も伸びてません。「長期的に見ても小麦の一人当たり消費量は年間29.0kg(昭和40(1965)年度)から31.7kg(令和2(2020)年度)へと3kg程度しか増えていません。」((https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-11.html 参照 2023年3月16日))

さて、以上のように、牛肉、野菜、牛乳、小麦、これらの消費の動きはどれも、食事の欧米化どころか「食事の脱欧米化」を如実に物語っているのです。

クリニックの先生は一体何を根拠に「食事の欧米化」と言っているんでしょうね。
でも、このお医者さん程度ならまだ可愛いもので、この記事は続けて、食文化研究家という人物が登場して食の欧米化についてこんなことを言っているのですよ。引用します。

「今、私は日本で過ごしているけれど、自分の胃などに受け付けにくいような動物性タンパク質を食べてしまう。それが積み重なることで負担をかけてしまうのではないか。(中略)(食の欧米化が)どこに効くのか、どこに負担がかかるのか、それが自分の食生活に合っているのかなどは再認識していかないと、40歳、50歳になって検査をしたときに良くない結果に繋がってしまうと思うので、気をつけるべき」

驚きましたよ。食の欧米化が身体にどう影響するかについて統計データも医療データもなにも示さずに「と思うので」で締めくくる大胆さ。
それに「胃が受け付けにくい」という日本語は「個人的好き嫌いや満腹度や習慣などが理由で食べたくない」という意味の言葉です。個人的な理由で動物性タンパク質が苦手だと言いながら、他人にも動物性タンパク質がよろしくないような一般論として語ってしまうのは、自分と他人の区別がつかない混沌とした発言です。
また、「胃が受け付けにくい食べ物を食べると身体のどこかに負担がかかるのではないか」なんて「嫌いな授業を勉強したら頭が破裂しちゃうんじゃないかしら?」と同じレベルの空想です。

ヤフーさんにもテレビ局さんにもお願いですが、もう「食の欧米化」なんて使い古した作り話なんかやめて、信頼出来る健康情報を提供してください。

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発酵食品の褒めすぎは良くない。

2023年02月05日 | Weblog
しばらく前にこのブログで、ある新聞社の栄養系記事が大分良くなったということを書きましたが、しまったなあと思いました。また最近になってその新聞社が「発酵食品は健康に良い、甘酒は飲む点滴」と断言しちゃったニセ科学記事をでかでかと書いてしまったものだから。

いままで何度も繰り返しこのブログで書いてきましたが、発酵食品の健康性の研究は道半ばですし、点滴は生理食塩水や糖類が主成分ですから、「甘酒は飲む点滴」という言葉はぶっちゃけ「甘酒は糖類と少量の塩分で代用できる」という程度の意味です。

点滴は、口から水や塩類やカロリーなどをとれない人のために使う目的です。また、口から投与しても効かない薬を血液を通じて与える通り道としても点滴は使用されますが、点滴が病気を治すのではなく、薬が病気を治すのです。
 それなのに、点滴自体が病気を治す物だと誤解している人が多いものです。この誤解を逆手にとって、甘酒を薬のように思わせるために「飲む点滴」などという売り文句が生まれた訳です。大体、点滴は飲み物ではありませんので「飲む点滴」なんて言い方は「黒い白馬」や「昨日生まれたおばあさん」並のつまらない言葉遊びです。

発酵食品自体も、「原料、菌、生成物」これらが食品によって全く異なるのだから、それらを全部身体に良いと言うのは恥ずかしいことです。量や成分の概念もなしに身体に良いと言うのは「キノコは身体にいい」という説を聞いて見たことの無いキノコを採って食べてしまう人とあまり変わり有りません。

 日本では味噌や醤油、酒の醸造元などは地域の有力者であるケースが多く、その子息が政治家や大学教授など日本のオピニオンリーダーになってきた歴史があり、だから、発酵食品業界におべっかを使う大学教授がいるわけです。お名前を言うとはばかれるので黙ってますが。マスコミは残念ながらそれを鵜呑みにして記事にしているようです。そういう事情ですので、マスコミが、腸活とか発酵食品で健康になろうとか言うのは、話半分で聞き流した方がいいです。マスコミは食の専門家ではありません。
 
 もともと伝統的な日本の食文化はヨーロッパ諸国よりもむしろ発酵食品の種類が少ないです(これも過去ブログで既出です)。ヨーロッパではパンやワイン・ビール、発酵肉や発酵バターやチーズ、チョコレート(意外ですが発酵食品です)、など、多様な発酵食品の恵みがありましたが、日本は新鮮な食材を調理する方が格上であったため、鮮魚や新鮮な野菜、発酵させない主食や和菓子が発達しました。発酵は味噌・醤油などの調味料および酒と一部の漬物分野で発達しましたが、これらの多くは料理の主原料ではないことに注目してください。ごはんのお供で日本を象徴する漬物「梅干し」も発酵食品でないことから分かると思います。
 最後にもう一度言います。発酵食品が身体に良いという話は大げさですよ。

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教育の敗北(食べ物版)

2022年12月30日 | Weblog
先日「来年から新しい戦前が始まるでしょう」とタモリさんがテレビで言ったことに、各方面から驚きと賛同の声が寄せられています。軍事や政治のことは専門家に任せて、食のことだけ書きますが、食も悪い意味で戦前に戻るのだろうと危惧しています。
 思えば1980年代バブル期、知識人がテレビや新聞で「現代の豊かな食事は間違っている。質素な昔の食事が正しい。」的なことを時々言っていて、一方私のような子どもなど多くの視聴者はそれを「昔は良かった式幻想にとらわれたかわいそうな人」という目で見ていました。職人の包丁さばきがさえる日本料理、本格的フランス料理やイタリア料理や中華料理に、大勢が熱狂し、いまや日本は世界に誇る料理人やスイーツ職人がたくさんいます。

 一方で、バブル期にまかれた「現代の食事は間違っている。」タネは少しずつ「自然回帰」「ナチュラル志向」というアニミズム的発想と結びつきました。そして、彼らの「無農薬がよい」「西洋薬を使うな」という声と「戦前のような食事が良い」という言葉は強固に結びつき、情報弱者な学校の先生やSNSを通じて多くの人々を捉えました。今子どもをほしがっている30歳前後の方は、10数年前の食育で「農薬を使った食品は汚れている」とか「健康な事どもを生むなら昔の日本の食事にしなさい」という科学的根拠のない説を習っています。そんな10数年前の食育が強迫観念となって、善意のつもりで結果的に我が子を虐待している人たちが、最近SNSで話題になっています。

 生まれた幼子に必要な薬を与えずに野菜や塩で治そうとする親などです。やっていることは、戦前の知識の乏しい層がすがった「祈祷(まじない)」と結果的には同じです。学校の情弱先生たちが指導する「なんとか菌のパワーが宿る自然な食品」というのも、発想のベースは戦前の「お祓いをして精霊の魂が宿った食べ物」と大して差がありません。

 このような情報劣化が今後も続けば、来年はいよいよ食の世界も「新しい戦前」になるでしょう。きちんとした論理的思考も科学的な教育も身につかないまま、頭ごなしに「良い菌に感謝して自然な食べ物を食べてよい身体をつくりましょう」と唱える人々はおそらくもっと増えるのでしょう。そうして「昔が一番良い」と言いながら、一人一人が考える「昔の料理」が人によって「玄米菜食」だったり「白米に魚のひもの」だったりと全く違うため、お互いに会話がちぐはぐになりながら。
 食品の値段が高騰して、今までのようには職人やシェフの料理を食べられない人も増えるでしょう。そして、この科学的知識も物質的にも貧しい2023年が今の幼い子らには「当然の日常」と心に植え付けられるのでしょう。
・・・て、そんな世の中にしたいですか?
庶民の料理から高級料理まで様々なものがあって、それらを安心して楽しめる社会であって欲しい。食べ物の戦前化を防ぐため、まずは教育の敗北を認めて、科学的にまともな食育を広めていこうじゃありませんか。

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日本人「身長の限界」に到達は本当?

2022年11月12日 | Weblog
11月5日の日経土曜版に、戦後一貫して伸びてきた日本人の身長がここにきて停滞しているという記事がありました。
仮説も含めて多角的に切り込んだ非常に面白い内容である一方、踏み込み足りないと感じた部分もあるため、ここで紹介します。

まず記事では、日本人(17歳)の平均身長が一番高かったのは1994年度で、その後は横ばいと紹介しました(文部科学省 学校法検糖計調査)。記事に掲げられた別のグラフ(医薬基盤・健康・栄養研究所の池田奈由氏の研究データ)では1996年には男女ともに韓国や中国に追い越されてしまいました。
 日本人は実は古墳時代に高身長でした。では鎌倉~江戸時代に身長が低かったのはなぜか?従来の説である「仏教の影響で肉食を避けるようになったため」へのカウンターとして記事では、国立科学博物館明洋研究員の馬場悠男さんの説「急速な都市化と人口増で身長が低くなった説を取り上げています。
 「動物は特定の場所で個体数が増えるとリソースを効率的に分け合うため」という視点はなかなか面白い説なのですが、これはリソースが一定であるという前提が必要です。外部から食料の移入があれば成立しない説です。江戸時代は言うまでも無く、海運や陸路で各地の食材が江戸や大阪など都市に運び込まれたわけなので、タミア的には、やっぱり従来の「肉食を避けるようになったため」の方が要因として大きく、過密説はその次の要因だろうと想像します。

 この記事の白眉は、国立成育医療研究センターの森崎菜穂さんらの研究紹介部分です。実は1980年代以降に生まれた人の成人身長はむしろ低下していたというショッキングなデータです。記事ではきちんと医薬基盤・健康・栄養研究所の池田奈由氏の研究データも示して、平均身長が低下気味のデータを示しています。低下が始まった時期は森崎さんのデータと完全に一致しませんが、これは今後の精査が必要でしょう。
 森崎さんは身長低下が始まった理由は1980年頃から妊婦の体重制限が着目されたのが原因であろうと推測しています。記事のグラフによると1986年前後から低体重児が次第に増加したことが示されています。そして低体重児は大人になっても身長が低めになることは国内外の論文で指摘されている、だから妊婦の体重制限が原因だろうと。

 ですが身長は17歳ぐらいで伸びが止まることを考えると、森崎先生の説だけが正しいなら身長低下は今世紀になってから現れ始めないと説明がつきません。池田先生のデータだと日本人男性の平均身長(18歳)は1980年より1996年の方が低いので、話のつじつまが合いません。つまり他にも重要なファクターがあるはずです。

 そこで厚生労働省の国民健康・栄養調査報告を見ると興味深い事実が・・・。
 実は日本は酸性土壌のため昔からもともと日本人のカルシウム摂取量も大変少なかったのですが、戦後に食品の量や質が豊かになりカルシム摂取量も増えていきます。1番目のピークは1975年の550ミリグラム/day。
 ところが1980年に入ると535ミリグラムと減少し、その後は大きく上下を繰り返しながら、1998年の2回目のピーク(568ミリグラム)を最後に、後はカルシウム摂取量が右肩下がりになるのです。
 一方、カルシウムの食事摂取基準が人生で一番大なのが12~14歳です(日本人の食事摂取基準2020年版より)。言い換えればこの年ごろの子供にカルシウム豊富な食品を与えると身長が伸びる可能性が高くなります。

1980年以降に生まれた子供は、それ以前に生まれた人よりもカルシウム摂取量が減少しています。わかりやすく説明するため1980年生まれを例にピン止めすると、この人はカルシウムをたくさん取るべき12歳(1992年)に平均で539ミリグラムしか取っていません。14歳の1994年でも545ミリグラム。繰り返しますが1975年には550ミリグラム取っていたのにそれより低い値ですよ。これじゃあ日本人男性平均身長が1980年測定値より1996年の方が低いのも納得です。
 カルシウム摂取量の2番目のピーク(1998年)の恩恵を受けるのが1984~1986年生まれ。それ以降は、年々摂取量が落ちています。2000年以降にカルシウム摂取量が減ったのは、牛乳が身体にどーだこーだという変な作り話がまことしやかに広められて、情報弱者が信じてボイコットしたためと考えられます。

 記事中で、馬場先生は日本人の身長が伸びなくなったのは遺伝的限界だろうと言いましたが、それが事実なら1980年の身長が1996年より大きいなんて不思議な現象は説明がつきません。身長は遺伝子でも決まりますが、子供時代の栄養状態も影響することはすでに先行研究があります(注1)。
 遺伝だ限界だと諦めずに、まだ伸びしろがあると考えて、妊婦の食事制限を緩め学童・中学生への牛乳飲食を呼びかけると1980年の頃のように身長が伸びるのではないでしょうか。遺伝子限界説は子供たちから健全な成長を奪ってしまう可能性があるので心配です。
注1: 岡田知雄「子どもの生活習慣病の改善と牛乳摂取の効果」『食の科学』光琳(2003年)

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命の数と言い出したら何も食べられないよ。

2022年10月07日 | Weblog
さっきの投稿に付け足します。

牛肉を食べるのをやめる代わりに鶏肉を食べればその分お前は多くの命を奪っている、と呪いをかける人たちがいます。
そういうことを言う人はタラコやイナゴの佃煮なんて絶対食べちゃいけませんね。
道を歩くときや車を運転するとき、蟻を踏み潰さないように気をつけてますか?
蚊取り線香なんてもってのほかです。

発酵食品を食べて大量の微生物を胃の中で殺してませんか。
大豆もお米も命がありませんか?
お茶碗には三千粒近いお米の赤ちゃんの命がつまっています。

結局、動植物の命の数がどうのこうのと言い出したら、
食べるものは無くなり、餓死するしか有りません。

命の尊さを言う時は、私たちはヒューマニズム、人間中心主義で話すより他ありません。
まず人の命を尊重する(でないと人間にしわ寄せが行きます)。
その上で、無駄な殺生は避けるのは当然ですが、虫も殺さない人は居ません。
動物の命を奪うなと言う人がいたら、「あ、あなたの足下にアリンコさんが!かわいそう!」
とでもいってあげましょう。

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あなたもバラモン左翼に利用されている。

2022年10月07日 | Weblog
近年トンデモの世界はますますひどくなっています。正直に言って「それを信じる?小学校出てる?」と問い詰めたくなるほど、すさまじい「健康法」「食育」「食事療法」がネットで広まっています。どうして政治や厚生省などが変な話にカツを入れてくれないんだろうと残念に思います。ネットの情報には気をつけてくださいね。もちろんこの頁はファクトチェックしているので安心して読んでね。

ネットと比較して、マスコミは、昔よりだいぶ科学的な記事になりました。特に朝日新聞と日経は、かつてはある種のニセ科学が大量に載っていたのですが、いまでは激減しました。読売は、そもそも食育ネタをあまり扱わない。毎日は記者さんが本当に科学を理解しているのか微妙に感じることがよくあります。東京は食育について勉強不足です。
 
 ただし、代替肉と昆虫食になると、ある2紙が環境問題の救世主のように頻繁に持ち上げるので、そういう企業に肩入れしているのが丸わかりです。牛を悪者にして代替肉や昆虫食を持ち上げますが、ちょっと待て!!実は牛由来のメタンガスを減らすための研究が盛んに行われていることや、鶏肉を選べば牛肉よりも環境負荷が大幅に減ることは言わないんですよね。1キログラムの肉を得るために、牛肉は11キログラムの穀類を必要としますが鶏肉は4キロ、鶏卵は3キロです。また、家禽はメタンガスをほとんど出しません。

また、私たちが購入しなかった弁当類や外食の調理場の食品残渣を餌に育てた家畜(こういう餌をエコフィードとも言います。)や、放牧で育てた家畜は環境負荷が下がります。穀類などを栽培しにくい土地が放牧地に選ばれ、そこに生えた牧草を牛などが食べて肉や乳などに還元してくれるので農地の有効利用になります。また、家畜糞尿を有機肥料として土壌に戻すことで、輸入肥料をセーブして環境に優しい農業を確立する有機農業も行われています。こんな話はあまり報道されないですね。

かのトマ・ピケティはこう言いました。貧困対策よりも環境問題の方が大事だからみんな言うことを聞きなさい、と全体主義的な圧力をかける「バラモン左翼」と、彼らの声を商品化・ファンド化して儲ける「ビジネスエリート右翼(てか商人右翼)」が手を組んで、中間層や貧困層対策をなおざりにしていると。それを教えてくれるのが日経の記事。日経も代替肉や昆虫食をよく取り上げますが、どういう会社が資本提携して投資会社がどうだから、と背景を紹介しています。

環境にやさしいから代替肉や昆虫食べるって目をキラキラさせる高校生やZ世代の方は、大人に搾取されています。あなたが環境負荷を下げたいなら「がんもどきや煮豆や卵、時々鶏肉や放牧牛、エコフィードで育った豚肉」という食べ方でもいいはずです。それなのになぜあえて昆虫に手を伸ばそうとしているのですか?全体主義的な発想では、地球の未来を解決出来ません。もっと柔軟に視野を広げてみませんか。

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ハレの日とケの日、トンデモでぶっとび。

2022年08月25日 | Weblog
先日、地方の友達から質問があってぶっとびました。
「こういう噂を聞いたけどほんと?
昔の日本は、ハレの日は米や肉などご馳走を食べてココロを満たし、ケの日は一汁一菜の食事でカラダをいたわっていたというんだけど。」
  えーそれでたらめです!!断言できます。

 昔の日本は長生き出来なかったので、ハレの日にこそ、健康長寿になると信じる物を食べてココロも満たしてハッピーになっていたんです。

たとえばおせち料理にエビが入っているのは腰が曲がるまで長生きしたいという願いがこめられていました。昔は疱瘡や結核など様々な病気で早世する人が多かったから、「腰が曲がるまで長生き」は縁起良い言葉でした。
 ハレの日には餅を食べました。餅は力が出るから元気になると考えられていました。
 土用の丑の日にウナギを食べて健康を願うのもハレの日のことです。

ハレの日にはココロを満たす物も食べました。
 おせちを例にしましょう。
 酢蓮は穴がたくさん開いているので「先が見通せる」という願いがこめられていました。
 昆布はもちろん「よろこんぶ」です。
 紅白なますは「紅白は縁起が良いから」です。
 田作りは豊作への願いがこめられました。
 クワイは「芽が出る」と信じられて出世のモチーフです。
 黒豆は「まめに働ける」への掛詞で、こまめにカラダが動いて仕事がはかどりますようにと願いがこめられてました。
 おせちに南天を飾るのは難(なん)を転(てん)ずるため、つまり不幸を追い払うためでした。

 このようにハレの日にこそ、カラダとココロに良いと信じる食品を食べていました。

 じゃケの日は何かというと、単に日常の延長です。

 栄養学的にも、ケの日の一汁一菜で健康を保てたとは考えにくいです。
 江戸時代にはお金のそこそこある人はハレの日に「薬食い」といってこっそりと獣の肉などを時々食べていましたし、
そうでない町民もハレの縁日で雀の焼き鳥を食べたりたまには自分へのご褒美で卵売りの卵を購入しました。
そういう動物性タンパク質などの補給があったからこそ、普段は貧しい食事ながらもそこそこ生きていたわけです。

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