タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

「お米は栄養バランスが良い」は勘違いです。

2019年01月18日 | Weblog
遅ればせながらあけましておめでとうございます。今年もよろしくおねがいします。

さて、年明け早々悲しいお話ですが、ある科学雑誌に、よりによって疑似科学が紹介されました。全くとほほです。

その雑誌記事によると、お米は栄養バランスが良いので「米だけを食べ続けても栄養失調になりにくいといわれています」だそうですが、そう「いわれている」だけで、事実としては、米だけを食べ続ければ栄養失調になります。例えば1985年にも、お米ばかり偏食したのが原因で「ペラグラ」という病気になった患者さんの症例が、学術誌「皮膚」27巻4号に報告されています。ペラグラは放置すれば死に至る病気ですが、この患者さんは、食事を改善し、不足する栄養素の投与も受けて回復したそうです。この論文「ペラグラの4例」はネットのJ-STAGEの頁で無料で読めます。

科学雑誌の記事を書いた先生は、お米は必須アミノ酸をバランス良く含んでいるから栄養バランスが良い、と自説を展開してるんですが、その論理は「タレントのAさんは、体型のバランスが良いから芸能界でのバランスも良い。」ぐらいに論理展開がずれてますよ。

栄養学的に説明すると、この記事の大きな間違いは3点あります。

(1)お米は必須アミノ酸のバランスが良いという指摘自体が間違い。
(2)お米に含まれるアミノ酸の絶対量が少ないから、お米だけでは筋肉や酵素など体に必要な成分を保つことができない。
(3)お米にはある種のミネラルやビタミンが含まれてないので、「栄養バランスが良い食品」と言ってしまうと読者の健康を害する恐れがある。

これから、この3点について詳しく解説しますね。
まず、
(1)筋肉や酵素などのタンパク質は、アミノ酸という物質の集まりです。アミノ酸には、体内で合成できるアミノ酸と、体内では合成できないので必ず食べものから取らなくちゃいけない「必須アミノ酸」があります。それで、人間はタンパク質を食べて消化して、必須アミノ酸を吸収しなければならないのですが、この、必須アミノ酸のバランスを確認するときには、アミノ酸スコアという値を見ます。このスコアは100に近いほど理想的なのですが、リジンという必須アミノ酸のスコアがお米は61,小麦が39,トウモロコシが31です。スコア61というと、100にはほど遠いので、「お米はアミノ酸バランスが良い」と言ってはいけません。ここは栄養学の基礎中の基礎です。

 記事では、「米に含まれるアミノ酸バランスがよかった」という文章の後に「米はリジンが不足していますが」と続けて書いていますが、自己矛盾ですよね。
 しかも、この文章の後には、リジンが不足するけど大豆製品を食べれば不足分が補えて合理的です、と言う趣旨が書いてあるので、またまたびっくりしました。そういうパターンの説明がOKなら、「小麦やトウモロコシはアミノ酸バランスが良いのです。なぜなら小麦やトウモロコシはリジンが不足していますが、肉と一緒に食べることで不足分が補えて合理的になります」という文章も正しいことになりますよ。

次に、
(2)アミノ酸が結合したものがタンパク質ですが、お米に含まれるタンパク質の絶対量はとっても少ないのです。炊いたご飯のお茶碗1杯のタンパク質量は、玄米で4.2グラム、白米なら3.8グラムです。お茶碗1杯のご飯は150グラムとして計算してます。

 日本人成人男性の1日あたりタンパク質の推定平均必要量は50グラムですから、玄米なら1日12杯以上食べないと最低限のタンパク質が摂取できないのです。玄米をそんなにたくさん食べられる人はあんまりいないですよね。だから、大豆や魚など他の食品も食べて補うことが推奨されています。

ラストの、
(3)については、ものすごーく率直に言うと、現在自然に存在する食用の植物・動物で「それ単品で栄養バランスが良い食品」というもの自体が存在しません。例えば炊飯した玄米にヨウ素やビタミンB12やビタミンCはほとんど含まれていません。

 なので、高橋久仁子群馬大学名誉教授は様々な著著の中で、単独で栄養バランスの良い食品はないが、栄養バランスの良い食べ方ならありますよ、とわかりやすく表現しています。

 「1つの食べものばかりを食べてると体を壊すよ。色々な食べものを味わおうね。」と幼稚園の時から習いますよね。こんな基本知識が、どうして科学雑誌で吹っ飛んでしまったのかしら。この記事を書いた先生は高名な方ですが、食品や栄養については残念ながら素人の先生でした。疑似科学批判活動で有名な編集長が、なぜこのような誤解だらけの記事を載せてしまったのかしら・・・。今までこの編集長のファンだったので、とても心が痛いです。マスコミの方々や学者の皆さんには、プロとしての誇りを保つ質の高い記事を期待しています。次回こそはと応援しています。

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