以前書いた通り、現在日本産食品の輸出が伸びている主因はいわゆる「和食ブーム」ではありませんでした(ここで言う「和食」とは、伝統的な食材で作る、和のイメージが強い伝統的食品のことです。ここでは和食にラーメン等は含めません)。また、ミラノ万博で宣伝された「和食の基本は一汁三菜」という説も、前回のブログに書いた通り近年に作られた人造的な標語であり、歴史的な裏付けはありませんでした。
さて、そこで考えてしまいました。タミアは、日本の食品が海外に輸出され農家さんや食品産業がもっと豊かになることを願っています。どのように海外に宣伝すれば、もっと国産品が海外で売れるようになるでしょうか。現在日本産の輸出が伸びている理由は、フランス料理や中華料理の材料として日本の食材が優れていることや、日本製の菓子や清涼飲料水が海外で絶大な人気を誇っていることなどが主な理由です。米や味噌の輸出は伸びていますが、金額ベースでは清涼飲料水に遠く及びません。
しかし、これからの伸びしろとして、「和食の基本は一汁三菜」と海外で宣伝すれば輸出は伸びるかもしれません。そこで、この仮説が正しいか、考察してみました。まず、一汁三菜というのをお米と味噌汁またはすまし汁、漬け物、主菜1品(魚介類)、副菜2品(野菜のおひたし、野菜の煮物)、そして海苔、と想定します。そして売り込み先はEUとしましょうか。
・・・そうすると、実はこんな大変なことが起こるのです!
一汁三菜を提供しようとするEUの日本料理店や、一汁三菜を食べたいと思ったEUの消費者は原料をどうやって入手するでしょうか。日本産米の価格は高いので、スペイン産米を代用することでしょう。
また、味噌汁やすまし汁を作るには、鰹節または昆布の出汁(だし)が必要です。ところが日本産鰹節は禁輸品なのです。なぜかというと、製造過程で発がん性物質のベンゾピレンが付着するからです。「ベンゾピレンは水に溶けないので健康上問題がない」と、日本国内では規制されてませんが、EUではそういう理屈は通りません(NHKの「時論公論「拡大できるか 日本産食品の輸出」2015年7月24日金、合瀬宏毅解説委員の記事に基づく情報です。NHKのHPでも読めます)。
そういえば、鰹節を出汁として使用すれば発がん性がない訳ですが、粉末にしてパラパラとおひたしやご飯や焼き魚などにかけると発がん性はどうなるのでしょうか?調べてみたのですがデータが見つからなかったので、ご存じの方は教えてください(信頼できる文献情報などの裏付けも示してくださいね)。
話を元に戻して、日本産鰹節には発がん性物質があるためEUに輸出できません。そのため、EUで鰹節を入手したいときは中国産鰹節を使うしかないのです。中国産鰹節にはHACCPという食品安全に関する国際認証を取ったものがあるからです。
じゃあ昆布出汁を宣伝しましょうか?実はこれも不可なのです。厚生労働省の畝山智香子博士の「「健康食品」のことがよくわかる本」のp55によると、昆布は欧州の人々が食べると健康障害を起こす可能性が高いため、欧州では販売が禁止されているのだそうです。ちなみにこの本によると、日本人でも妊娠中や授乳中の昆布の食べ過ぎは赤ちゃんに悪い影響が起こりえるそうです。なお、以前このブログでもおすすめした「管理栄養士パパの親子の食育BOOK」p51にも、日本人でも毎日昆布出汁を摂っていると過剰摂取になりかねないと書いてあります(マクロビオティックでは動物性食品である鰹出汁が禁止されているため、マクロビアンは毎日昆布出汁の味噌汁を召し上がるそうですが、上記情報から考察するとマクロビは身体に悪いようですね)。
さて、昆布は使えないので、EUでは中国産鰹節を使わないと味噌汁やすまし汁を作れないという結論になりました。
続いて漬け物ですが、梅干しやたくあんは欧州の人は苦手な人が多いので、定着させるには長い時間が掛かると思われます。それにHACCPという認証を取った工場の商品でないと輸出が難しいのですが、HACCP認証を取るには一説には5千万円かかるとも言いますから、中小企業の多い漬け物企業にはハードルが高いのです。また、浅漬けはEU国内で採れた新鮮な野菜から作れるので輸出に不向きですね。
次は主菜の魚ですが、これも、ノルウェイ産サーモンとか地中海産の豊富な魚介類、東南アジア産のエビカニで代用されますので、国産の輸出にはつながりません。
続いて副菜の野菜のおひたしや煮物。これも欧州の野菜で代用されてしまうでしょう。ちなみにEUでは基本的にグローバルGAPという認証を取得した農産物でないと流通できません。そして、日本国内でこれを取得した野菜農家さんは少ないのが現状です。こうした問題もあって、なかなか日本の野菜の輸出は難しいのです。早くこの問題が解消されることを願っています。
最後に海苔ですが、これも日本国内でHACCPを取った工場がほとんど無いことから、イタリアなどでは韓国産海苔が使われているそうです。
さて、以上のように、一汁三菜をEU諸国に宣伝したら、かえって喜ぶのはEU諸国や中国や韓国などの人々だろうと想定されることが分かりました。
米国にて宣伝した場合も、米がスペイン産から米国産などに置きかわるだけで、あとはだいたい似たような状況になると思われます。醤油は米国内に大規模工場がありますし、豆腐も米国内で生産可能です、なにしろ大豆生産国ですから・・・。
東南アジアで宣伝した場合には、醤油・味噌の製造にアルコールが使用されていることから「ハラル(イスラム教の戒律に則った食品等)」ではないとされ、醤油と味噌を多用する一汁三菜はむしろ敬遠されてしまうでしょう。最近ハラル醤油が開発されたそうで、今後の発展が期待されるところです。
というわけで、海外で日本の食を宣伝するとすれば、やはり、和牛のおいしさや、リンゴやミカンやゆず等の品質の高さなど、海外の原料では太刀打ちできない高品質な部分で付加価値を宣伝する方がよさそうです。もちろん、ある程度手の届く価格で、という条件が付きますが。
もちろん、日本の伝統的食文化を国外に宣伝すること自体は大切なことですが、前にブログに書いた通り、日本の伝統食は一汁三菜ではありませんので、これを宣伝するよりは、むしろ、きりたんぽとかせんべい汁とか煮込みうどんとか、非常に多種多様な地方の郷土料理があることを広告宣伝する方が、中国や韓国などの諸外国の材料を使ってすぐにまねすることが出来ないので、輸出に有利ではないかと考えます。
さて、そこで考えてしまいました。タミアは、日本の食品が海外に輸出され農家さんや食品産業がもっと豊かになることを願っています。どのように海外に宣伝すれば、もっと国産品が海外で売れるようになるでしょうか。現在日本産の輸出が伸びている理由は、フランス料理や中華料理の材料として日本の食材が優れていることや、日本製の菓子や清涼飲料水が海外で絶大な人気を誇っていることなどが主な理由です。米や味噌の輸出は伸びていますが、金額ベースでは清涼飲料水に遠く及びません。
しかし、これからの伸びしろとして、「和食の基本は一汁三菜」と海外で宣伝すれば輸出は伸びるかもしれません。そこで、この仮説が正しいか、考察してみました。まず、一汁三菜というのをお米と味噌汁またはすまし汁、漬け物、主菜1品(魚介類)、副菜2品(野菜のおひたし、野菜の煮物)、そして海苔、と想定します。そして売り込み先はEUとしましょうか。
・・・そうすると、実はこんな大変なことが起こるのです!
一汁三菜を提供しようとするEUの日本料理店や、一汁三菜を食べたいと思ったEUの消費者は原料をどうやって入手するでしょうか。日本産米の価格は高いので、スペイン産米を代用することでしょう。
また、味噌汁やすまし汁を作るには、鰹節または昆布の出汁(だし)が必要です。ところが日本産鰹節は禁輸品なのです。なぜかというと、製造過程で発がん性物質のベンゾピレンが付着するからです。「ベンゾピレンは水に溶けないので健康上問題がない」と、日本国内では規制されてませんが、EUではそういう理屈は通りません(NHKの「時論公論「拡大できるか 日本産食品の輸出」2015年7月24日金、合瀬宏毅解説委員の記事に基づく情報です。NHKのHPでも読めます)。
そういえば、鰹節を出汁として使用すれば発がん性がない訳ですが、粉末にしてパラパラとおひたしやご飯や焼き魚などにかけると発がん性はどうなるのでしょうか?調べてみたのですがデータが見つからなかったので、ご存じの方は教えてください(信頼できる文献情報などの裏付けも示してくださいね)。
話を元に戻して、日本産鰹節には発がん性物質があるためEUに輸出できません。そのため、EUで鰹節を入手したいときは中国産鰹節を使うしかないのです。中国産鰹節にはHACCPという食品安全に関する国際認証を取ったものがあるからです。
じゃあ昆布出汁を宣伝しましょうか?実はこれも不可なのです。厚生労働省の畝山智香子博士の「「健康食品」のことがよくわかる本」のp55によると、昆布は欧州の人々が食べると健康障害を起こす可能性が高いため、欧州では販売が禁止されているのだそうです。ちなみにこの本によると、日本人でも妊娠中や授乳中の昆布の食べ過ぎは赤ちゃんに悪い影響が起こりえるそうです。なお、以前このブログでもおすすめした「管理栄養士パパの親子の食育BOOK」p51にも、日本人でも毎日昆布出汁を摂っていると過剰摂取になりかねないと書いてあります(マクロビオティックでは動物性食品である鰹出汁が禁止されているため、マクロビアンは毎日昆布出汁の味噌汁を召し上がるそうですが、上記情報から考察するとマクロビは身体に悪いようですね)。
さて、昆布は使えないので、EUでは中国産鰹節を使わないと味噌汁やすまし汁を作れないという結論になりました。
続いて漬け物ですが、梅干しやたくあんは欧州の人は苦手な人が多いので、定着させるには長い時間が掛かると思われます。それにHACCPという認証を取った工場の商品でないと輸出が難しいのですが、HACCP認証を取るには一説には5千万円かかるとも言いますから、中小企業の多い漬け物企業にはハードルが高いのです。また、浅漬けはEU国内で採れた新鮮な野菜から作れるので輸出に不向きですね。
次は主菜の魚ですが、これも、ノルウェイ産サーモンとか地中海産の豊富な魚介類、東南アジア産のエビカニで代用されますので、国産の輸出にはつながりません。
続いて副菜の野菜のおひたしや煮物。これも欧州の野菜で代用されてしまうでしょう。ちなみにEUでは基本的にグローバルGAPという認証を取得した農産物でないと流通できません。そして、日本国内でこれを取得した野菜農家さんは少ないのが現状です。こうした問題もあって、なかなか日本の野菜の輸出は難しいのです。早くこの問題が解消されることを願っています。
最後に海苔ですが、これも日本国内でHACCPを取った工場がほとんど無いことから、イタリアなどでは韓国産海苔が使われているそうです。
さて、以上のように、一汁三菜をEU諸国に宣伝したら、かえって喜ぶのはEU諸国や中国や韓国などの人々だろうと想定されることが分かりました。
米国にて宣伝した場合も、米がスペイン産から米国産などに置きかわるだけで、あとはだいたい似たような状況になると思われます。醤油は米国内に大規模工場がありますし、豆腐も米国内で生産可能です、なにしろ大豆生産国ですから・・・。
東南アジアで宣伝した場合には、醤油・味噌の製造にアルコールが使用されていることから「ハラル(イスラム教の戒律に則った食品等)」ではないとされ、醤油と味噌を多用する一汁三菜はむしろ敬遠されてしまうでしょう。最近ハラル醤油が開発されたそうで、今後の発展が期待されるところです。
というわけで、海外で日本の食を宣伝するとすれば、やはり、和牛のおいしさや、リンゴやミカンやゆず等の品質の高さなど、海外の原料では太刀打ちできない高品質な部分で付加価値を宣伝する方がよさそうです。もちろん、ある程度手の届く価格で、という条件が付きますが。
もちろん、日本の伝統的食文化を国外に宣伝すること自体は大切なことですが、前にブログに書いた通り、日本の伝統食は一汁三菜ではありませんので、これを宣伝するよりは、むしろ、きりたんぽとかせんべい汁とか煮込みうどんとか、非常に多種多様な地方の郷土料理があることを広告宣伝する方が、中国や韓国などの諸外国の材料を使ってすぐにまねすることが出来ないので、輸出に有利ではないかと考えます。