看護師詰め所 集中治療室 701号室 トイレ
病院のドアの上にはその部屋の名前が書かれているはず
ひとつだけ名前のないドアがあり、曇りガラスの向こうには明かりがついていなかった
ストレッチャーに移された次兄と私たちは名前のないドアをあけて入った
業務用エレベーターだった
それで地下に降りた
一般のエレベーターには乗せないんだ
他の人の心情や途中出会うこと考えると当然のこと
地下につくと銀色の四角いドアが壁に並んでいた
冷蔵庫かな?
祭壇のある簡素な部屋にろうそくとお線香を用意してくれた
家族の次に先生と看護師さんが順番にお線香をあげてくれた
葬儀社がくるまでのしばらくの間待った
長兄が
風もないのにカーテンが動くことあるだろ
と言う
ああ、この場でこの会話、看護師さんたち変わった家族と思ってるだろうな
葬儀社の車が来た
次兄を乗せ、空席は二つだったので母と長兄が乗り
残った私は看護師さんたちに囲まれて車を見送った
非常に気まずい
やれやれ終わったなんてと笑顔になるわけにはいかない状況なので
それまで張り詰めていた気持ちを緩める事でうわっと泣いた
これで一般的な家族と思ってもらえたのではなかろうか
ひとりの看護師さんが出口に案内してくれた
私にも兄がいるんですよ
と話をしてくれた
どうぞ元気なうちに会って思い出作ってください、という趣旨のことを言ったつもりだが
伝わっただろうか
外に出る頃には涙は止まり、お礼を言って分かれた
いい病院だった
母も看護師さんや先生の丁寧な対応には感謝していた
今日のひとこと
夜の街は何も変わらずきれいだった