昨年末から新年にかけて、雪が殊の外少ない年を迎えました。
「天国までの百マイル」朝田次郎著の読書のお勧め
この小説の主人公の名前が私と同じであること。そして狭心症という病名が、読むのを
途中で止めることなく最後まで辿り着きました。それはともかく、この書物の解説文の一部を
紹介して読書のお勧めをしたい。以下、解説文の一説です。
この「天国までの百マイル」はきわめてシンプルな、いい話である。
カイシャモ金も失い、妻子にも別れたろくでなしの中年男の安男が、心臓を病む年老いた母
の命を救うため、奇蹟を信じて千葉の病院までオンボロ車で百マイルをひたすら駆け抜けるのだ。
話は単純だが、そこには不況、倒産、自己破産、離婚、親の病気、介護といった現代社会の問
題と家族崩壊の病果をじっとみつめる眼がある。
そして底抜けの無償の愛情、友情、庶民たちの善意、医師の良心などに支えられながら、主人
公は奇跡をみる。
朝田次郎さんを「平成の泣かせ男」という人がいる。情緒過剰の浪花節ではないか、と陰口を
叩く人もいる。しかし私は、人情か紙より薄くなっている現代だからこそ、情緒OK感情過多い
にではないか、むしろかつての日本人の特徴であった浪花節調やセンチメンタリズムを見直すべ
きではないか、とさえ思っている。
この「天国までの百マイル」のなかの人物像は、それぞれに個性の光を放っているが、なかで
も魅力的なのは、自己犠牲にとみ、相手のことを自分の命わかけて信じ「無償の愛」を貫こうと
する人たちである。
太ったマリ。母親。そして金儲けより義務と権利として仕事にたちむかう医師たちの姿には胸
が熱くなる。安易な子捨てや年老いた親の病院への遺棄、人名をあずかる職業人の使命感不足、
金融政策の弱いものいじめなどほ向けた、フツ-のおやじ感覚での庶民的抗議ゆ憤懣か、この作
品の底流にこめられているように思う。
かつての日本の母親は、貧しさから脱出するために、主人公の母「きぬ」がそうであねように
子供たちが自分を見捨てても責めようとしなかった。むしろ子供達が上昇する踏み台になること
を期待していた。「無償の愛」を捧げて悔いはないという生き方であった。
「いかに不公平な世の中でも、神の手によって人は勇気と力を与えられている」と浅田さんは言う。
解説 大山勝美
私は4歳の時に父が亡くなり、その後、母が鋳物工場でパ-トとし文字通り真っ黒になって三人
の供を育ててくれました。私は末っ子で成長の遅い存在感の少ない子供だったようです。私の母も
「無償の愛」を子供たちに注いでくれました。何一つ親孝行が出来ずに母は74歳で亡くなっりまし
た。亡くなって初めての母の人生がどんなにつらかっただろうかと、母の生きた年齢を越えた今、
痛切に思うようになりました。「親孝行.したい時には親はなし」とはよく言ったものですね。
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