だいぶ以前から行ってみたいと思っていた大血川林道、昨日の午後になって急に行こうと決めたんだ。予報では、曇りがちだが雨は降りそうもないようだった。ただ、30℃を越える暑さは間違いなさそうだよ。実は、房総も考えたんだが、同じ暑いなら山へ行こうと思ったんだ。山なら、標高が上がれば気温は低くなるからね。
今朝は4時に起きたよ。外はすっかり明るくなっていた。だが、空は一面の曇り空だ。予報通りだよ。
せっかく早起きしたんだから、とにかく行ってみようかね。晴れ間も出るかもしれないし。
池袋発6時50分の西武特急ちちぶ3号に乗ったんだ。車窓の外にはどこまでも続く曇り空。たまに青空がチラリとのぞく。
西武秩父から秩父鉄道に乗り換えて、三峰口に着いたのは8時42分だよ。
自転車を組んで出発する頃には、ありがたいことに雲間から薄日が差してきたよ。でも強い日差しだ。覚悟しよう。
出発前に駅員さんが写してくれたんだ。
「お気をつけて」
「ありがとう」
駅の近くにコンビニがないので、今日は家からおにぎりを持ってきたんだ。水は駅の自動販売機で、とりあえずペットボトル3本を買ったよ。2本はフレームのボトルホルダーに、もう1本はフロントバッグの中に入れておいた。たぶん3本では足りないだろうな。
大血川林道、どんな道だろう。他の人のブログを見ると、相当きついらしい。ルートラボで調べると、上り平均斜度は8.4%だ。平均斜度だから当然10%を越える激坂もあるだろう。この年で無事に上れるだろうか。そんな不安を抱きながら出発した。
駅からは、途中の大滝発電所までは、国道140号ではなく、荒川を挟んだ対岸の静かな道を行くことにしたよ。たいしたアップダウンもなく走りやすい道だね。
国道のある対岸の景色だ。雲間にきれいな青い空が見えるよ。
まんねん橋だ。そしてあれが発電所だね。
荒川の水音の中に、低く唸る発電機のモーター音が谷間にこもっていたよ。
大滝発電所からは、1.4キロほど国道を走らなければならない。車や大型バイクがものすごいスピードで追い越していく。みみ爺は歩道を走ることにしたよ。安全だし、なにより左手の荒川の景色を眺められて最高だよ。
さあ、大血川林道へ向かう分岐点だ。通行止めの看板が立っているよ。看板の横に手書きで何か書いてある。太陽寺までは通行可能だが、三峰神社方面への通り抜けはできませんとある。どうしよう。
…とにかく太陽寺までは行ってみよう。もしかしたら、自転車なら通れるかもしれないし。…だめなら戻ってこよう。
大血川橋を渡ると、すぐに8%近い急勾配が始まったよ。
こんな勾配がこの先10キロ以上も続くのかと思うと、ちょっと心配になるよ。みみ爺の来るところじゃなかったのかもしれないね。まあ、力尽きたら引き返してくるか。それにしても山が高い。谷が深い。やっぱり秩父はいいなあ。
左へ上って行く道は林道前大血川線というんだね。
あれはきっと妙法ヶ岳だろう。日が差してきたよ。嬉しいねえ。
また林道起点の標示だ。林道奥大血川線とある。これも左へ上って行く道だね。延長1キロにも満たないで行き止まる林道らしいよ。
更に進むと、今度は林道大血川線という標示だ。どうやらここが起点らしいね。
この無明橋の先に大血川渓流観光釣り場がある。車がたくさん停まっているね。
林道前大血川線起点付近からここまでは、いくらか勾配は落ち着いていたけれど、観光釣り場を過ぎたところからまた急勾配が始まったよ。12%と標示がある。
大血川に沿って上って行くよ。きつい上りだね。
きつい上りがまだまだ続くよ。この辺は特にきつい。
少し勾配が落ち着いて来ると、ようやく太陽寺への入口に着いたよ。その先はゲートが閉まっていて通行止めの看板がある。前と同じことが書いてあるよ。
いよいよここまでだろうか。この先は無理だろうかね。
さっき観光釣り場のところで尋ねたら、
「ゲートはくぐることはできるけれど、その先で工事をしているから戻った方が無難でしょうね」
と言ってた。
ここから5キロ先が崩落現場なんだね。…通れるかどうか崩落現場までは行ってみよう。通れなければ戻ってくればいいさ。そうなったら予定を変更して、御岳山林道にでも行こうか…そんなことを考えながら急勾配を上って行く。
なんて山がきれいなんだろう。そそり立つ緑の山、そして深く落ち込んだ谷。この雄大な眺めを目にしたいがために、みみ爺はやって来たんだよ。
どこまでも続くよ、急勾配。よいしょ、よいしょ。時速4~5キロでペダルを回す。ときどき心が折れそうになる。水をかぶったようにシャツは汗でびっしょりだ。額から流れ落ちてくる汗が目にしみるよ。ペットボトルの水が見る見る減っていく。
うわあっ、きれいだなあ!
まだまだ上るぞ。でも、崩落現場はどこだろう。
この辺まで上ってくると暑さは感じないね。だいぶ気温が低くなっているんだね。すでに標高1000メートルは越えているはずだよ。
やっと駆ヶ越トンネルに着いた。トンネルの中はカーブしているので出口は見えないね。真っ暗だよ。
この辺りの標高は1120メートル。空気はとても涼しい。トンネルの中は下りで風を切る。その風が寒いくらいだよ。汗をかいた身体にはなんとも気持ちがいいね。
暗いトンネルを抜けると、秩父の山々が目の前に広がる。両神山や双子山も見えているはずだが、どれがどれだかよくわからない。ずいぶん上ってきたなあ。
下り坂が少し続くよ。とがった岩のかけらがいたるところにころがっている。崩落現場はどの辺だろうかね。ここまで来ると後戻りは嫌だね。
休憩所に熊出没注意の看板がある。こんな看板のあるところでは休みたくないよ。
また上り坂だ。ここもかなりきつい勾配だよ。
谷が深いなあ。
日が差してくると、さすがに夏の日差しだ。カッと背中が暑くなる。しかし日陰に入ると涼しい。空気がとても気持ちいい。
自転車を立て懸けたガードレールの下をのぞいてみたよ。写真ではわかりにくいがかなり怖い。
さあ、もうすぐ二つ目のトンネル、三峰トンネルがあるはずだよ。
おや、トンネルの手前が崩落現場だったんだね。大きな岩が道にころがっているが、もうだいぶ片付けられたようにもみえる。通り抜けることはできそうだね。引き返さずにすみそうだよ。ああ~よかった。
何度も目にする妙法ヶ岳だ。
ところで、三峰山とは本来は妙法ヶ岳、白岩山、雲取山の総称なんだそうだよ。今まで知らなかったよ。三峰山という山があるのかと思っていたんだ。…みみ爺は知らないことばかりだ。この年になっても、知っていることなんて針の先ほどにも満たないかもしれないね。
崩落現場からすぐの三峰トンネルだ。大血川林道のピークだね。標高は1240メートルあるそうだよ。トンネルの中はゆるやかに上っている。延長は488メートルで、275メートルの駆ヶ越トンネルよりやや長い。中はこちらも真っ暗だ。
トンネルを出るとまた違う山の景色が広がる。
標高2036メートルの雄大な和名倉山(別名白石山)の姿が眺められた。残念なことに、頂上がもみじの葉陰に隠れた写真になってしまったよ。
さあ下りだ。空がきれいだねえ。一気に下るよ。
ここが大血川林道の終点なんだね。
三峰神社の駐車場だ。日曜日だから車やバイクでいっぱいだよ。
駐車場から1.2キロほど道を下る。この道は県道278号・三峰観光道路だ。三峰神社へ上って行く車や戻ってくるバイクが、ひっきりなしに飛ばして通り過ぎていく。
引き返すような感じの左手の細い道へ入り下って行くと、その先に林道の標示が立っている分かれ道があった。
そのまま林道の方へ進めばいいのか、それとも手前右手に引き返すように下って行く道を行けばいいのかよくわからなかったよ。気持ちはもちろん林道の方だったが。
迷っていると、後ろから大型バイクが一台、ためらいもなく林道の方へ疾走していった。それで、半信半疑に林道を進んでいくと、農作業をしている地元の人の姿が目にとまった。
「とにかく真っすぐ行けばいいよ。ずっと下りの一本道だから。そしたらまた広い道に出るよ」
「ありがとうございます」
「どこからきたんだね」
「三峰口から大血川林道を通ってきました」
「おやまあ、すごい!気をつけて」
思いがけなく林道を見つけて、なんだか得したような気持ちでその林道を下って行ったよ。
道はやがて折り返すように右にカーブして、またそのまま真っ直ぐに下って行く。途中民家があるあたりからはきれいに舗装された路面に変わり、林道らしさはなくなった。しかし走りやすいので、どんどんスピードが出る。
再び観光道路に出たよ。林道はここまでだね。日差しが強い。
休憩所があったよ。ここでお昼にしたんだ。持ってきたおにぎりを食べて一休みだ。通り過ぎる車の中からは、乗っている人がかならずこちらを見て行く。それをこちらも眺めながらおにぎりにかぶりつく。梅干しの入ったおにぎりは最高においしい。
そしてまた下って行く。下りはやっぱり気持ちがいい。しかし下るにつれて空気が熱くなってくるのがわかる。日差しはさらに強くなるよ。
ちちぶ湖が見えてきたよ。
緑の山、緑の水、そしてきらめく水面。
二瀬ダムだ。
ダム天端道は信号によって、交互に一方通行になる。狭いうえに後ろから車の列が押し寄せてくるので、ダムの上で停まることはできない。片手放しで、いい加減な見当でシャッターを切った。結構うまく写っていたよ。
これが今通って来たダムの姿だ。立派なもんだね。なんでも重力式アーチダムで高さは95メートルあるそうだよ。
今は塞がれている謎のトンネルだよ。駒ヶ滝隧道だ。通ってみたいと思っていたら、いつの間にか塞がれてしまったんだ。
ダムから1キロほど国道140号(秩父往還)を秩父方面へ下ると、左へ分岐する道がある。二十六木トンネルへ向かう道だ。その道を八百メートルほど上り、道が折り返すように左へカーブしているところに龍泉寺と滝沢神社がある。
車の通らない静かな道だよ。
二十六木トンネルだ。延長369メートルで、明かりの点いているのは最初と最後のそれぞれ一つだけだ。中は真っ暗だよ。
おおっ、滝沢ダムだ。ダムも空も水もきれいだなあ。大きなダムだなあ。
ダム湖(奥秩父もみじ湖)を右手に見ながら静かな道をのんびり走って行くよ。
本当にいい道だなあ。対岸の国道の橋は新遊仙橋というんだね。国道を走っていたらあの美しい姿は見ることができないね。
ダムの水はずいぶん少なくなっているね。雨らしい雨が降らないからなあ、梅雨なのに。
あの橋は中津川大橋だね。橋の左手には大峰トンネルの入口が見えるよ。…それにしても水位が下がっているね。台風の一つも来れば、水位はいくらか回復するんだろうなあ。このままでは干上がっちゃいそうだね。
こまどりトンネルだよ。このトンネルは国道の大峰トンネルの下をくぐっているんだね。
トンネルを出たところから中津川大橋を見上げる。
いい雰囲気の道はさらに湖畔に続くよ。
いよいよ塩沢もみじ橋だ。この橋を渡って対岸の県道210号へ。
欄干のもみじ模様がとてもかわいい橋だが、残念なのは、橋のプレートが4枚ともはぎとられていたことだ。ときどきニュースに上る金属泥棒の仕業だろうか。去年の秋、八丁峠からの帰りに見たときにはちゃんと付いていたんだが。きれいなプレートだったのになあ。
県道210号と国道140号の長いトンネルをいくつも通ってループ橋のところまで来たよ。ダムが放水しているね。
よし、ダムの下へ行ってみようかね。
途中に不動滝があったよ。滝の横の小さな不動堂の前には、飲み水用の蛇口があったが、ひねっても水はポタポタと落ちる程度だった。ペットボトルの水もつき、のどが渇いていたのでラッキーと思ったんだがね。
すさまじい放水の音が聞こえてくるよ。
ダムの下まで来ると吊り橋があった。水は吊り橋のほうに向かって放水されていたよ。水の勢いとその音はすごい迫力だ。
吊り橋を渡ってみたよ。うわあ~、涼しい。マイナスイオンだあ~。
吊り橋の上から振り返ってループ橋のほうを見ると、きれいな虹ができていたよ。
高さ132メートル、幅424メートル。圧倒されるなあ、この巨大さと高さには。
青空をバックにループ橋がきれいだなあ。
国道へ戻り、秩父駅へ向かう。ほとんど下りなので楽だよ。
荒川橋から見る荒川の景色だ。
もうすぐ一日の旅が終わる。楽しい一日だったね。大血川林道の上りのきつさは、みみ爺にとっては今までで一番だったかもしれない。でも、素晴らしい山の景色に出会えて最高によかった。
そして、もみじ湖南岸の静かな道、滝沢ダムとダムの下で見た虹。忘れられない旅の一つになりそうだよ。ありがとう人生。お疲れさん、みみ爺。
今朝は4時に起きたよ。外はすっかり明るくなっていた。だが、空は一面の曇り空だ。予報通りだよ。
せっかく早起きしたんだから、とにかく行ってみようかね。晴れ間も出るかもしれないし。
池袋発6時50分の西武特急ちちぶ3号に乗ったんだ。車窓の外にはどこまでも続く曇り空。たまに青空がチラリとのぞく。
西武秩父から秩父鉄道に乗り換えて、三峰口に着いたのは8時42分だよ。
自転車を組んで出発する頃には、ありがたいことに雲間から薄日が差してきたよ。でも強い日差しだ。覚悟しよう。
出発前に駅員さんが写してくれたんだ。
「お気をつけて」
「ありがとう」
駅の近くにコンビニがないので、今日は家からおにぎりを持ってきたんだ。水は駅の自動販売機で、とりあえずペットボトル3本を買ったよ。2本はフレームのボトルホルダーに、もう1本はフロントバッグの中に入れておいた。たぶん3本では足りないだろうな。
大血川林道、どんな道だろう。他の人のブログを見ると、相当きついらしい。ルートラボで調べると、上り平均斜度は8.4%だ。平均斜度だから当然10%を越える激坂もあるだろう。この年で無事に上れるだろうか。そんな不安を抱きながら出発した。
駅からは、途中の大滝発電所までは、国道140号ではなく、荒川を挟んだ対岸の静かな道を行くことにしたよ。たいしたアップダウンもなく走りやすい道だね。
国道のある対岸の景色だ。雲間にきれいな青い空が見えるよ。
まんねん橋だ。そしてあれが発電所だね。
荒川の水音の中に、低く唸る発電機のモーター音が谷間にこもっていたよ。
大滝発電所からは、1.4キロほど国道を走らなければならない。車や大型バイクがものすごいスピードで追い越していく。みみ爺は歩道を走ることにしたよ。安全だし、なにより左手の荒川の景色を眺められて最高だよ。
さあ、大血川林道へ向かう分岐点だ。通行止めの看板が立っているよ。看板の横に手書きで何か書いてある。太陽寺までは通行可能だが、三峰神社方面への通り抜けはできませんとある。どうしよう。
…とにかく太陽寺までは行ってみよう。もしかしたら、自転車なら通れるかもしれないし。…だめなら戻ってこよう。
大血川橋を渡ると、すぐに8%近い急勾配が始まったよ。
こんな勾配がこの先10キロ以上も続くのかと思うと、ちょっと心配になるよ。みみ爺の来るところじゃなかったのかもしれないね。まあ、力尽きたら引き返してくるか。それにしても山が高い。谷が深い。やっぱり秩父はいいなあ。
左へ上って行く道は林道前大血川線というんだね。
あれはきっと妙法ヶ岳だろう。日が差してきたよ。嬉しいねえ。
また林道起点の標示だ。林道奥大血川線とある。これも左へ上って行く道だね。延長1キロにも満たないで行き止まる林道らしいよ。
更に進むと、今度は林道大血川線という標示だ。どうやらここが起点らしいね。
この無明橋の先に大血川渓流観光釣り場がある。車がたくさん停まっているね。
林道前大血川線起点付近からここまでは、いくらか勾配は落ち着いていたけれど、観光釣り場を過ぎたところからまた急勾配が始まったよ。12%と標示がある。
大血川に沿って上って行くよ。きつい上りだね。
きつい上りがまだまだ続くよ。この辺は特にきつい。
少し勾配が落ち着いて来ると、ようやく太陽寺への入口に着いたよ。その先はゲートが閉まっていて通行止めの看板がある。前と同じことが書いてあるよ。
いよいよここまでだろうか。この先は無理だろうかね。
さっき観光釣り場のところで尋ねたら、
「ゲートはくぐることはできるけれど、その先で工事をしているから戻った方が無難でしょうね」
と言ってた。
ここから5キロ先が崩落現場なんだね。…通れるかどうか崩落現場までは行ってみよう。通れなければ戻ってくればいいさ。そうなったら予定を変更して、御岳山林道にでも行こうか…そんなことを考えながら急勾配を上って行く。
なんて山がきれいなんだろう。そそり立つ緑の山、そして深く落ち込んだ谷。この雄大な眺めを目にしたいがために、みみ爺はやって来たんだよ。
どこまでも続くよ、急勾配。よいしょ、よいしょ。時速4~5キロでペダルを回す。ときどき心が折れそうになる。水をかぶったようにシャツは汗でびっしょりだ。額から流れ落ちてくる汗が目にしみるよ。ペットボトルの水が見る見る減っていく。
うわあっ、きれいだなあ!
まだまだ上るぞ。でも、崩落現場はどこだろう。
この辺まで上ってくると暑さは感じないね。だいぶ気温が低くなっているんだね。すでに標高1000メートルは越えているはずだよ。
やっと駆ヶ越トンネルに着いた。トンネルの中はカーブしているので出口は見えないね。真っ暗だよ。
この辺りの標高は1120メートル。空気はとても涼しい。トンネルの中は下りで風を切る。その風が寒いくらいだよ。汗をかいた身体にはなんとも気持ちがいいね。
暗いトンネルを抜けると、秩父の山々が目の前に広がる。両神山や双子山も見えているはずだが、どれがどれだかよくわからない。ずいぶん上ってきたなあ。
下り坂が少し続くよ。とがった岩のかけらがいたるところにころがっている。崩落現場はどの辺だろうかね。ここまで来ると後戻りは嫌だね。
休憩所に熊出没注意の看板がある。こんな看板のあるところでは休みたくないよ。
また上り坂だ。ここもかなりきつい勾配だよ。
谷が深いなあ。
日が差してくると、さすがに夏の日差しだ。カッと背中が暑くなる。しかし日陰に入ると涼しい。空気がとても気持ちいい。
自転車を立て懸けたガードレールの下をのぞいてみたよ。写真ではわかりにくいがかなり怖い。
さあ、もうすぐ二つ目のトンネル、三峰トンネルがあるはずだよ。
おや、トンネルの手前が崩落現場だったんだね。大きな岩が道にころがっているが、もうだいぶ片付けられたようにもみえる。通り抜けることはできそうだね。引き返さずにすみそうだよ。ああ~よかった。
何度も目にする妙法ヶ岳だ。
ところで、三峰山とは本来は妙法ヶ岳、白岩山、雲取山の総称なんだそうだよ。今まで知らなかったよ。三峰山という山があるのかと思っていたんだ。…みみ爺は知らないことばかりだ。この年になっても、知っていることなんて針の先ほどにも満たないかもしれないね。
崩落現場からすぐの三峰トンネルだ。大血川林道のピークだね。標高は1240メートルあるそうだよ。トンネルの中はゆるやかに上っている。延長は488メートルで、275メートルの駆ヶ越トンネルよりやや長い。中はこちらも真っ暗だ。
トンネルを出るとまた違う山の景色が広がる。
標高2036メートルの雄大な和名倉山(別名白石山)の姿が眺められた。残念なことに、頂上がもみじの葉陰に隠れた写真になってしまったよ。
さあ下りだ。空がきれいだねえ。一気に下るよ。
ここが大血川林道の終点なんだね。
三峰神社の駐車場だ。日曜日だから車やバイクでいっぱいだよ。
駐車場から1.2キロほど道を下る。この道は県道278号・三峰観光道路だ。三峰神社へ上って行く車や戻ってくるバイクが、ひっきりなしに飛ばして通り過ぎていく。
引き返すような感じの左手の細い道へ入り下って行くと、その先に林道の標示が立っている分かれ道があった。
そのまま林道の方へ進めばいいのか、それとも手前右手に引き返すように下って行く道を行けばいいのかよくわからなかったよ。気持ちはもちろん林道の方だったが。
迷っていると、後ろから大型バイクが一台、ためらいもなく林道の方へ疾走していった。それで、半信半疑に林道を進んでいくと、農作業をしている地元の人の姿が目にとまった。
「とにかく真っすぐ行けばいいよ。ずっと下りの一本道だから。そしたらまた広い道に出るよ」
「ありがとうございます」
「どこからきたんだね」
「三峰口から大血川林道を通ってきました」
「おやまあ、すごい!気をつけて」
思いがけなく林道を見つけて、なんだか得したような気持ちでその林道を下って行ったよ。
道はやがて折り返すように右にカーブして、またそのまま真っ直ぐに下って行く。途中民家があるあたりからはきれいに舗装された路面に変わり、林道らしさはなくなった。しかし走りやすいので、どんどんスピードが出る。
再び観光道路に出たよ。林道はここまでだね。日差しが強い。
休憩所があったよ。ここでお昼にしたんだ。持ってきたおにぎりを食べて一休みだ。通り過ぎる車の中からは、乗っている人がかならずこちらを見て行く。それをこちらも眺めながらおにぎりにかぶりつく。梅干しの入ったおにぎりは最高においしい。
そしてまた下って行く。下りはやっぱり気持ちがいい。しかし下るにつれて空気が熱くなってくるのがわかる。日差しはさらに強くなるよ。
ちちぶ湖が見えてきたよ。
緑の山、緑の水、そしてきらめく水面。
二瀬ダムだ。
ダム天端道は信号によって、交互に一方通行になる。狭いうえに後ろから車の列が押し寄せてくるので、ダムの上で停まることはできない。片手放しで、いい加減な見当でシャッターを切った。結構うまく写っていたよ。
これが今通って来たダムの姿だ。立派なもんだね。なんでも重力式アーチダムで高さは95メートルあるそうだよ。
今は塞がれている謎のトンネルだよ。駒ヶ滝隧道だ。通ってみたいと思っていたら、いつの間にか塞がれてしまったんだ。
ダムから1キロほど国道140号(秩父往還)を秩父方面へ下ると、左へ分岐する道がある。二十六木トンネルへ向かう道だ。その道を八百メートルほど上り、道が折り返すように左へカーブしているところに龍泉寺と滝沢神社がある。
車の通らない静かな道だよ。
二十六木トンネルだ。延長369メートルで、明かりの点いているのは最初と最後のそれぞれ一つだけだ。中は真っ暗だよ。
おおっ、滝沢ダムだ。ダムも空も水もきれいだなあ。大きなダムだなあ。
ダム湖(奥秩父もみじ湖)を右手に見ながら静かな道をのんびり走って行くよ。
本当にいい道だなあ。対岸の国道の橋は新遊仙橋というんだね。国道を走っていたらあの美しい姿は見ることができないね。
ダムの水はずいぶん少なくなっているね。雨らしい雨が降らないからなあ、梅雨なのに。
あの橋は中津川大橋だね。橋の左手には大峰トンネルの入口が見えるよ。…それにしても水位が下がっているね。台風の一つも来れば、水位はいくらか回復するんだろうなあ。このままでは干上がっちゃいそうだね。
こまどりトンネルだよ。このトンネルは国道の大峰トンネルの下をくぐっているんだね。
トンネルを出たところから中津川大橋を見上げる。
いい雰囲気の道はさらに湖畔に続くよ。
いよいよ塩沢もみじ橋だ。この橋を渡って対岸の県道210号へ。
欄干のもみじ模様がとてもかわいい橋だが、残念なのは、橋のプレートが4枚ともはぎとられていたことだ。ときどきニュースに上る金属泥棒の仕業だろうか。去年の秋、八丁峠からの帰りに見たときにはちゃんと付いていたんだが。きれいなプレートだったのになあ。
県道210号と国道140号の長いトンネルをいくつも通ってループ橋のところまで来たよ。ダムが放水しているね。
よし、ダムの下へ行ってみようかね。
途中に不動滝があったよ。滝の横の小さな不動堂の前には、飲み水用の蛇口があったが、ひねっても水はポタポタと落ちる程度だった。ペットボトルの水もつき、のどが渇いていたのでラッキーと思ったんだがね。
すさまじい放水の音が聞こえてくるよ。
ダムの下まで来ると吊り橋があった。水は吊り橋のほうに向かって放水されていたよ。水の勢いとその音はすごい迫力だ。
吊り橋を渡ってみたよ。うわあ~、涼しい。マイナスイオンだあ~。
吊り橋の上から振り返ってループ橋のほうを見ると、きれいな虹ができていたよ。
高さ132メートル、幅424メートル。圧倒されるなあ、この巨大さと高さには。
青空をバックにループ橋がきれいだなあ。
国道へ戻り、秩父駅へ向かう。ほとんど下りなので楽だよ。
荒川橋から見る荒川の景色だ。
もうすぐ一日の旅が終わる。楽しい一日だったね。大血川林道の上りのきつさは、みみ爺にとっては今までで一番だったかもしれない。でも、素晴らしい山の景色に出会えて最高によかった。
そして、もみじ湖南岸の静かな道、滝沢ダムとダムの下で見た虹。忘れられない旅の一つになりそうだよ。ありがとう人生。お疲れさん、みみ爺。