やっと天気になった。しかし今日は暑くなりそうだよ。
相模湖駅を9時に出発した。久々の真夏の日差しだ。
じっとして日差しを浴びていると暑いけれど、ペダルをこいでいると風が気持ちいい。
相模湖だよ。水が緑色に濁っているね。
相模ダムの天端道から相模川を見下ろす。この濁った水面は雨のせいだろうか、雨が少ないせいだろうか。涼しげな水の景色とは程遠い眺めだね。
相模ダムから桂橋まで相模川南岸を走る道だよ。この道は空気にしっとり感があり、静かな道なんだ。みみ爺の好きな道のひとつだよ。
桂橋だ。橋は渡るより遠くから見るほうがいい。きれいだね。
このあたりは寸沢嵐という。石老山のほうを眺めると青空がとてもきれいだよ。
5月に自転車仲間とこの道を走ったときも、このあたりから同じ山並みを写していたよ。いいと思う景色は、忘れたころに通りかかっても、また同じように語りかけてくるのだろうかね。「ほら、いい眺めだろ。ここを写せ」と。
ここを入っていくと小野林道へ続いている。3年前に宮ヶ瀬湖へ向かう途中で走ったんだ。きついのぼりの林道だったよ。その林道は途中で行き止まりになり、自転車を降りて急勾配の山道を下ったんだ。怖かったのでよく覚えているよ。 →<みみ爺一人旅、宮ヶ瀬湖へ(その3)小野林道 >
道志川の弁天橋からの眺めだよ。これも今年の5月にまったく同じ写真を撮っていたよ。
横浜水道青山沈殿池だ。同じ場所を走ると同じ場所で同じ景色の写真を撮っている。これは自分の好みがそうさせているのかね。以前に写した写真と比べてみると結構楽しい。
国道413号、道志道だ。国道を走るのは好きではないが道がないので仕方がない。
梶野の手前で国道を離れホッとする。車がほとんど来ないよ。宮ヶ瀬湖へ続く県道64号だ。
きついのぼりが続く。汗が噴き出る。
近道と思って入ったら、えらい急勾配に出くわした。ここは自転車を押して上ったよ。やれやれ。
宮ヶ瀬湖だ。いよいよオレンジ色の虹の大橋を渡るよ。
“いよいよ”と書いたのは、やはり3年前この宮ヶ瀬湖を訪れたときに、遠くから眺めたこのきれいな橋の姿にちょっと感動していたからなんだ。その橋をこれから渡るという気持ちが“いよいよ”なんだよ。
宮ヶ瀬湖は水が少ないようだ。天気の悪い日が続いていたけれど、結局水源にはほとんど雨は降っていなかったんだね。
宮ヶ瀬湖畔園地だ。
空に薄く雲が広がってきたよ。ちょっと心配だね。
宮ヶ瀬湖やまびこ大橋を渡って右へ進む。
やはり水が少ないようだね。渇いた地肌が痛々しい。
向山トンネルに続く大棚沢橋。この橋は遠くから見ると白とブルーがとてもきれいなんだ。
橋の上からは左手にこんな景色が眺められる。
県道64号、この辺は橋がいくつも現れる。このトラス橋は“いしころびばし”と書いてある。そのすぐ先にわずかに見えているのは東沢橋だ。
電光掲示板に今の気温が表示されているよ。33℃とある。暑いわけだね。
赤いアーチの仏果沢橋。
白いアーチの七曲橋。
おやおや。こんな悲しい景色は見たくないね。
さあ、いよいよ法論堂林道だね。半原越えへ向かうよ。前半の平均勾配は6.
5%、後半は8%くらいだよ。
半原越えとは峠の名前なんだね。変わった名前の峠だね。普通は〇〇峠というんだが。
清川村煤ヶ谷は、昭和初期まで養蚕が盛んだったそうだ。半原は当時糸の町として栄えていて、煤ヶ谷から半原へ繭を背負ってこの峠を越えたことからこの名が付いたと言われているようだよ。
ここを通るとき、犬たちの悲しげな鳴き声が胸に突き刺さってきたよ。捨てられた犬や猫を保護している施設なんだね。はやく新しい飼い主が見つかるといいね。
清川しっぽ村を過ぎるとだんだん林道ぽくなって来たよ。
涼しげな道だね。全線舗装された林道だそうだ。
シャツは汗でびっしょり濡れている。ボトルの水がどんどんなくなる。
少し上っていくと法論堂橋というのがあったよ。反対側の欄干の上にカメラを置いて写したんだ。誰もいない山の中で、カメラに向かって一人ニタッと笑顔を作るのは難しい。
車やバイクも走れる林道のようだが、まだ一度も出会っていない。自転車にも出会わない。今日は平日だからだろうかね。
あまり眺望がない林道だね。せみの声ばかりが山を埋め尽くしているよ。
峠の少し手前だ。この辺は結構きついね。それほど標高のある峠ではないので気温は高いままだ。ペダルをこいでいると汗が噴き出てくるよ。
ようやく峠に着いたよ。標高は488メートル。ここまでが法論堂林道で、ここから先は南山林道というらしいね。
ちょうど1時、大体予定通りだよ。
お腹もすいてきたのでお昼にしたいところだが、水だけ飲んですぐに出発した。実は、今日の目的の二つ目、宮ヶ瀬ダムの放流を見たいからだよ。放流は2時から6分間だ。
3年前に見たときはダムの上からだった。今回はどうしてもダムの真下から見たいと思ってるんだ。 →<みみ爺一人旅、宮ヶ瀬ダムへ(その4)宮ヶ瀬ダムと北岸林道 >
長い急な下り坂でブレーキを握る手が痛くなる。林道の下りは飛ばしすぎては危ないからね。
涼しげな水の音が聞こえたよ。手と肩を休めるために少しの時間水の音を楽しんだ。
ここは何だろう?
…どうやら炭を焼いているところらしいが人気がないね。
そろそろ林道も終わりだよ。
小さな感慨を持って走ってきた林道のある仏果山の方角を振り返る。緑一色の夏の山だ。
国道412号を少し走り、中津川の愛川大橋を渡ったところから左へ入っていくよ。
宮ヶ瀬副ダム(通称石小屋ダム)だね。
さらに進んでいくと、巨大な宮ヶ瀬ダムの姿が見えたきた。
新石小屋橋を渡り,ダムの近くまで行く。
このダムの高さは秩父の浦山ダムと並び156メートルもあるそうだよ。
観光放流は高さ100メートル付近にある2門のゲートから行われるんだ。
2時からの放流開始までまだ30分ほど時間があった。とにかく間に合ってよかったよ。
ダム正面の橋の上に陣取って、放流が始まるのを待つ間、暑い日差しの中で遅い昼食におにぎりとアンパンを頬張った。
いよいよ時間だ。これから6分間の水のショーが始まる。
真白い水の帯が100メートルほどの高さから下りてくるよ。下りてくるといったのは、まるでスローモーションの映像のように見えるからだ。高さがあるからそんな風に見えるのだろう。
「きたーっ!」
大勢の観光客の歓声が上がる。みみ爺も息を呑んで見守る。
水の帯が下まで達すると、その幅を徐々に広げていき、轟音とともに霧のような水しぶきを含んだ恐ろしく冷たい風が押し寄せてきたよ。
「うワーッ、寒いなーっ!」
そんなうれしそうな声が上がる。
迫力の6分間は長いようで短かった。猛烈に吹き付けてくる氷のように冷たい風にさらされて、体はすっかり冷えてしまったよ。
放流が終わると、大勢の観光客たちはそこここで感嘆のため息をもらしている。
下流の水色のきれいなアーチ橋は新石小屋橋だ。その橋を観光客たちが渡って帰っていく。
それにしても巨大なダムだね。
橋の上からダムを見上げると、放流された水のあとが残っているよ。
今日の二つ目の目的も無事果たすっことができてよかったよ。
さあ、後は京王線の橋本駅へ向かって走るばかりだ。
コーヒータイムとしよう。
ふたたび愛川大橋の袂まで引き返し、そこから国道412号の急な坂を1キロほど上る。
コーヒーに水を全部使ってしまい、ボトルは空っぽだ。のどがからからだよ。自動販売機がなかなか見つからない。
たぶん水分不足のせいなのだろう、太ももの筋肉が今にもつりそうだったが、だましだまし坂を上ったよ。
坂を上り詰めたところでようやく自動販売機を見つけることができた。冷たい一本を、ひと息に飲み干したよ。おいしかたね。
そこからは国道を離れ、静かな田舎道をのんびりと走って行ったんだ。
遠くに津久井の町並みが眺められる。なかなかいい道だね。
串川沿いに出たよ。こんななんでもない風景だけれど、なんとなくホッとするのはみみ爺だけだろうか。
串川の下河原橋だ。
県道510号を下っていく。
ようやく相模川の小倉橋が見えてきたよ。
橋の上からの眺めだ。この景色の写真もたぶん3年前と同じかもしれない。
橋を渡ってすぐ、右の道を下っていく。相模川沿いの遊歩道のような道だ。なかなかいい道だよ。
遠く小倉橋が見える。大きいほうが新小倉橋だ。新旧二つの橋が対照的で面白い。旧小倉橋のほうが雰囲気があっていいね。
相模原市の市街を抜けて橋本駅へ向かう途中に、六地蔵という交差点がある。交差点から、広い道ではなく左へ入ってすぐのところに下九沢六地蔵というのがあった。このお地蔵様が交差点の名前になっているのだろう。
六地蔵の左端に“徳本念仏塔”があった。徳本というのは、江戸時代後期に伊豆や関東の各地に念仏を広めた僧のことだそうだ。
六地蔵横の路地を入っていくと、恐ろしく急勾配の坂があったよ。今日はもう、上り坂はペダルをこぎたくない。自転車を押して上った。
坂の途中で、犬の散歩をしていた老婦人が、
「ほんとにつらい坂ですよ」
と。
それから橋本駅までは、車の少ない裏道をたどって行ったよ。
駅に着いたのはちょうど5時ごろだった。
お疲れさん、みみ爺。そしてみみ爺のランドナーもね。
法論堂林道の上りは暑さでとてもつらかったけれど、宮ヶ瀬ダムの放流は、水の勢いもその轟音もほんとうに迫力があって楽しかったね。
それにしても今日は暑かった。これから帰る千葉の家のほうでは35℃を越えて猛暑日だったらしいよ。