<小川町→林道栗山線→黒山三滝→奥武蔵グリーンライン→宿谷の滝→飯能>
小川町からスタートするのは初めてだよ。
船橋からだとやっぱり遠いいね。家を出てから2時間半かかった。
今日は、世の中はまだゴールデンウイーク中だ。もう少し人が大勢いるかと思ったけれど、この駅ではそれほどでもなかった。数人の自転車乗りと、何組かのハイカーたちが目に付く程度だったよ。
風も弱く、空は真っ青で雲ひとつない。最高にいい天気だよ。きっとすばらしい景色に出会えるだろう。
9時にスタートしたときは、空気がひんやりしていて半袖ではちょっと涼しすぎるくらいの気温だったよ。しかし、町を外れる頃にはちょうどよい涼しさになってきた。日差しもぽかぽか温かい。
山並みが近づいてくるとワクワクしてくるよ。天気がいいから余計だ。
このトラス鉄橋は、見た目ちょっと古そうでいい雰囲気だね。
ここの矢岸の橋は、もともとは吊り橋だったそうで、同じ小川町を流れる槻川に架かっていた柳町橋をここに移設したものだそうだよ。
館川に沿って進んで行くよ。空気が澄んでいて、山々がくっきりとした姿を見せているね。
県道11号をそれてからは、ほとんど車もなく、気持ちのいい道が続くよ。
民家も少なくなり、静かな山の気配に包まれてくる。
小さな神社の祠があったよ。みみ爺は、ここで今日一日の安全をお願いしたんだ。
さらに少し行くと、林道赤谷線の分岐があった。この林道は延長1キロほどで行き止まりだそうだ。
道は少しずつ上っている。新緑がまぶしいくらいだ。5月は最高に気持ちのいい季節だね。
二十二夜塔だ。
手賀沼周辺でよく見かける十九夜塔と同様、やはり如意輪観音を本尊とする女人講、念仏講だね。
さあ、いよいよここから林道栗山線だね。
実はこの場所へ来るまで、みみ爺はずっと迷っていたんだ。このまま真っ直ぐに館川ダムのほうへ林道赤木七重線を進むかどうするかと。
赤木七重線を行けば上りの標高差は280メートルほどだが、栗山線のほうは450メートルほどもある。標高差の小さい赤木七重線は、それだけで爺には魅力だ。そのうえに、館川ダムを見ることができる。
一方、栗山線のほうは赤木七重線より標高もありきつそうだけれど、みみ爺の大好きな“絶景ポイント”があるらしい。
迷った末に、林道入り口の対面にあった馬頭観音に、なんとか上りきれますようにと祈って、ペダルをこぎ始めたよ。林道栗山線起点の緑色の標示板にひきよせられるようにね。
およそ2キロほど10%の勾配が続く。空気が涼しいのでそれほど苦ではないね。
景色を一つ一つ楽しみながら上って行く。空には雲がまったくないよ。
上ってきた道を眼下に眺めるのは楽しい。
山がきれいだ。澄んだ空気がひんやりとおいしい。
林道栗山支線の分岐だ。起点から約2キロの距離だよ。ここから少しだけ勾配が落ち着く。
長閑な山間の集落を抜けて行くよ。
山ではおなじみの“熊出没注意”の看板だ。気の弱いみみ爺はそそくさと熊よけ鈴をつけたよ。
6~7%の勾配をさらに上って行く。
おや、水場だ。ここにも熊出没注意とある。熊が水を飲みに出てくるんだろうね。
“栗山の延命水”というらしい。山の湧き水は冷たくておいしいよ。この水で少しは長生きができるかね。
だいぶ上ってきたよ。絶景ポイントはまだかな。
おーっ!素晴らしい。これが林道栗山線の絶景だね。
この景色を前に言葉は要らないね。上りの辛さいはっぺんに吹き飛ぶよ。
絶景ポイントからはふたたび10%を超える勾配になったよ。
杉林の中の急勾配を上り、藤の花の下を行く。
いくつかのカーブを過ぎると、ようやく林道栗山線の終点に着いたよ。絶景ポイントからの勾配がきつかったね。
ここからは林道栗山七重線を下って行くんだ。
この林道は終点までずっと下りだよ。
下り最高!冷たい空気を切って下る。少し寒いくらいだよ。
あっという間に林道栗山七重線の終点についてしまった。
ここからは、館川ダム方面からの林道赤木七重線に合流するんだ。
赤木七重線に移っても下りは続く。
七重川砂防堰堤群だ。石積みによって造られた堰堤が急勾配の川に階段状に連続して続く。「百段の滝」とも呼ばれているようだ。大きな石の隙間に小さな石を積んで造られた工法で、百年たった今でも崩れることがない。1916年に埼玉県内で最初に着手した砂防事業だという。
もちろん下流のほうにも同様に続いているよ。
さらに道を下って行き、やがて林道赤木七重線の終点に着いた。
ここからは県道172号を下って行くんだ。
道の脇で絵を描いている人の先の景色だよ。静かな山里の風景だね。
道をさらに下って行く。車はほとんど走っていない。
都幾川に沿うこの県道172号はなんていい雰囲気の道だろう。長閑な景色がどこまでも続くよ。しかもずっと下りだ。
三波渓谷だよ。
群馬県と埼玉県にまたがる下久保ダムの下流にある名勝・三波石峡には緑色の美しい三波石が見られるが、この石に似た岩石が渓谷を作っていることから、三波渓谷の名がついたということらしい。
都幾川沿いの県道172号を離れ、越生梅林方面へ向かう。静かな道だ。
このあたりが越生梅林のある越生町なのだろう。今は花の季節ではないが、いたるところに梅ノ木を見ることができる。
黒山三滝へは県道61号を南へ行けばいいのだが、ゴールデンウイークで車の多い県道は避けたい。裏道を行くことにしたよ。車がまったく通らない静かな道だよ。
ちょっとしたアップダウンはあるがたいしたことはない。
いったん県道を横切り、さらに細い道へ。いい感じだ。
ここからは県道を行く。黒山三滝の入り口まではもうすぐだよ。
滝への入り口からは沢沿いの道を上って行く。沢を流れる水音が心地よい。
連休中で人が多い。駐車場も車が一杯だよ。
この石の階段を上って行くと一つ目の天狗滝がある。
天狗滝は、水音は聞こえるが、すぐ近くの滝の下まで行っても、その姿の全体を見ることができなかったよ。
涼しくて気持ちのいい沢沿いをさらに上って行く。
レトロな土産物屋の前を行くよ。写っているのは人のよさそうな店のおばあちゃん。
手前が女滝、後方が男滝だ。
これが女滝。
こちらが男滝。
この赤い橋を渡って行くと天狗滝の上の水の落ち口付近に出られるよ。
さて、県道まで引き返してさらに南へ向かう。
ここで県道61号は終わるんだね。いよいよ林道笹郷線の急勾配の上りが始まるよ。
その前に、遅いお昼のおにぎりを食べて一休み。
林道笹郷線の勾配は、最初の1.2キロは10%ほどで、その後は8%に落ち着く。
林道起点から終点の奥武蔵グリーンラインの一本杉峠までは2.6キロほどの距離だ。
おにぎりを食べ終わる頃、一台のロードバイクが目の前を力強いペダリングで通り過ぎ、林道へ消えて行った。
みみ爺が上り始めて少し行くと、そのロードは途中で止まっていた。が、みみ爺の姿を見るとふたたび上り始めたよ。そしてすぐに姿が見えなくなった。
ところが、それからしばらく進んでいくと、ロードはまた止まっていた。乗り手の中年の男性は息を弾ませて休んでいたよ。
「きついですね」
と声をかけ、みみ爺はそのまま先へ行く。
「ええ、きついです」
と、苦しそうに答えた。そのうち、またみみ爺を追い越していくだろう。
しかし、いつまで経っても上ってこない。どうしたんだろう。
みみ爺は、力まず淡々とペダルをこいでいく。
だいぶ上ってきたね。山がきれいだよ。
ここが林道笹郷線の終点だ。奥武蔵グリーンラインの一本杉峠だよ。
途中出会ったロードは、とうとう上ってこなかったよ。
さあ、奥武蔵グリーンラインを下って行くよ。ここは林道権現堂線だ。
天文岩と小さなお堂だよ。以前に通ったことがある。
岩には大きな割れ目がある。柵があって入れないので、中の様子はよくわからないよ。
お堂には「天文霊神」とある。
天文岩からはふたたび上ったり下ったりするよ。
トレイルランニングの青年が後ろから走ってきた。上り坂になると青年の足のほうが速い。たちまち追い越して行く。しかし、下り坂になると自転車のほうが圧倒的に速い。あっという間に追い抜いてしまう。
ところが、北向地蔵まではちょっと長めのきつい勾配の上り坂になる。みみ爺の自転車は歩くスピードに落ちてしまった。するとそのうち、常に一定の速度で駆けてくる青年は涼しい顔をして追い越して行ったよ。息を切らせている風もない。
北向地蔵に着いた。
先に来て汗を拭いていたトレイルランニングの青年に尋ねたんだ。
「どのくらい走っているんですか」
「朝から40キロくらいです」
「おや、私も朝から走っていますが、同じように40数キロですよ」
「上りが多い山道だと、自転車ではかえってそうなるかもしれませんね」
「しかし、山坂を足で走って40キロはすごいですね。何かの大会には出るんですか」
「近くありますが、それにはでません」
「まだ先へ行くんですか」
「いいえ、今日はここから武蔵横手駅まで下ります」
その青年に写してもらったよ。
北向地蔵からはさらに林道権現堂線を下って行く。そして、途中から宿谷権現堂線へ入って行くんだ。
ずっと下りだ。
今下りて来た道のガードレールが見えるよ。
「宿谷の滝」への道標があった。急な階段をけっこう下のほうまで降りて行かなければならなかったが、寄ってみることにしたよ。
滝は落差12メートル、周囲は苔むした岩壁に囲まれている。知名度の高い先の黒山三滝は人が多くて落ち着かなかったけれど、こちらはとても静かだ。なかなかいい滝だよ。
滝が落ちているところは小さなプールのようになっていて、夏場の水遊びには最適だし、涼しさやマイナスイオンを求めるにも絶好の場所だよ。しかし、周囲を岩壁に囲まれた狭い場所なので、日よけのテントなどは張れないようだよ。
滝のそばにあったよ。傾きかけた祠の中の仏像は明王だね。
宿谷の滝からも、道はまだまだ下るよ。
林道を出ると、風景が長閑のものに一変する。
これは何だろう。
下をくぐるとき、モアーと唸るような低い音が聞こえたよ。
近くの民家の庭先で花の手入れをしていたおばあちゃんに尋ねてみた。
「あれはベルトコンベアだよ」
秩父の武甲山で採掘された石灰石を日高市の太平洋セメントの工場まで運ぶためのベルトコンベアが中に通っているそうだ。その長さは23キロを超えるというから驚きだね。
さあ、そろそろ駅へ急ごう。時間はとうに4時を過ぎている。
2013年の9月に奥武蔵グリーンラインを走ったときにも立ち寄ったことのある高麗家だよ。江戸時代初期を代表する民家で、国の重要文化財だ。
これは高麗神社の鳥居だよ。
この橋を渡る。
橋の下では…。やっぱりゴールデンウイークだね。
道路わきに咲く花は、みみ爺の家にもあるフランス菊に似ている。ステキだね。
宮沢ダム(宮沢溜池ダム)だね。ダム湖(宮沢湖)まで行きたかったんだが、なにやら大掛かりな工事をしているらしく警備員に止められてしまった。
住宅街の路地を抜けて行くと、もうすぐ西武線の飯能駅だ。
楽しかったね。天気も最高によかったしね。
お疲れさん、みみ爺。
小川町からスタートするのは初めてだよ。
船橋からだとやっぱり遠いいね。家を出てから2時間半かかった。
今日は、世の中はまだゴールデンウイーク中だ。もう少し人が大勢いるかと思ったけれど、この駅ではそれほどでもなかった。数人の自転車乗りと、何組かのハイカーたちが目に付く程度だったよ。
風も弱く、空は真っ青で雲ひとつない。最高にいい天気だよ。きっとすばらしい景色に出会えるだろう。
9時にスタートしたときは、空気がひんやりしていて半袖ではちょっと涼しすぎるくらいの気温だったよ。しかし、町を外れる頃にはちょうどよい涼しさになってきた。日差しもぽかぽか温かい。
山並みが近づいてくるとワクワクしてくるよ。天気がいいから余計だ。
このトラス鉄橋は、見た目ちょっと古そうでいい雰囲気だね。
ここの矢岸の橋は、もともとは吊り橋だったそうで、同じ小川町を流れる槻川に架かっていた柳町橋をここに移設したものだそうだよ。
館川に沿って進んで行くよ。空気が澄んでいて、山々がくっきりとした姿を見せているね。
県道11号をそれてからは、ほとんど車もなく、気持ちのいい道が続くよ。
民家も少なくなり、静かな山の気配に包まれてくる。
小さな神社の祠があったよ。みみ爺は、ここで今日一日の安全をお願いしたんだ。
さらに少し行くと、林道赤谷線の分岐があった。この林道は延長1キロほどで行き止まりだそうだ。
道は少しずつ上っている。新緑がまぶしいくらいだ。5月は最高に気持ちのいい季節だね。
二十二夜塔だ。
手賀沼周辺でよく見かける十九夜塔と同様、やはり如意輪観音を本尊とする女人講、念仏講だね。
さあ、いよいよここから林道栗山線だね。
実はこの場所へ来るまで、みみ爺はずっと迷っていたんだ。このまま真っ直ぐに館川ダムのほうへ林道赤木七重線を進むかどうするかと。
赤木七重線を行けば上りの標高差は280メートルほどだが、栗山線のほうは450メートルほどもある。標高差の小さい赤木七重線は、それだけで爺には魅力だ。そのうえに、館川ダムを見ることができる。
一方、栗山線のほうは赤木七重線より標高もありきつそうだけれど、みみ爺の大好きな“絶景ポイント”があるらしい。
迷った末に、林道入り口の対面にあった馬頭観音に、なんとか上りきれますようにと祈って、ペダルをこぎ始めたよ。林道栗山線起点の緑色の標示板にひきよせられるようにね。
およそ2キロほど10%の勾配が続く。空気が涼しいのでそれほど苦ではないね。
景色を一つ一つ楽しみながら上って行く。空には雲がまったくないよ。
上ってきた道を眼下に眺めるのは楽しい。
山がきれいだ。澄んだ空気がひんやりとおいしい。
林道栗山支線の分岐だ。起点から約2キロの距離だよ。ここから少しだけ勾配が落ち着く。
長閑な山間の集落を抜けて行くよ。
山ではおなじみの“熊出没注意”の看板だ。気の弱いみみ爺はそそくさと熊よけ鈴をつけたよ。
6~7%の勾配をさらに上って行く。
おや、水場だ。ここにも熊出没注意とある。熊が水を飲みに出てくるんだろうね。
“栗山の延命水”というらしい。山の湧き水は冷たくておいしいよ。この水で少しは長生きができるかね。
だいぶ上ってきたよ。絶景ポイントはまだかな。
おーっ!素晴らしい。これが林道栗山線の絶景だね。
この景色を前に言葉は要らないね。上りの辛さいはっぺんに吹き飛ぶよ。
絶景ポイントからはふたたび10%を超える勾配になったよ。
杉林の中の急勾配を上り、藤の花の下を行く。
いくつかのカーブを過ぎると、ようやく林道栗山線の終点に着いたよ。絶景ポイントからの勾配がきつかったね。
ここからは林道栗山七重線を下って行くんだ。
この林道は終点までずっと下りだよ。
下り最高!冷たい空気を切って下る。少し寒いくらいだよ。
あっという間に林道栗山七重線の終点についてしまった。
ここからは、館川ダム方面からの林道赤木七重線に合流するんだ。
赤木七重線に移っても下りは続く。
七重川砂防堰堤群だ。石積みによって造られた堰堤が急勾配の川に階段状に連続して続く。「百段の滝」とも呼ばれているようだ。大きな石の隙間に小さな石を積んで造られた工法で、百年たった今でも崩れることがない。1916年に埼玉県内で最初に着手した砂防事業だという。
もちろん下流のほうにも同様に続いているよ。
さらに道を下って行き、やがて林道赤木七重線の終点に着いた。
ここからは県道172号を下って行くんだ。
道の脇で絵を描いている人の先の景色だよ。静かな山里の風景だね。
道をさらに下って行く。車はほとんど走っていない。
都幾川に沿うこの県道172号はなんていい雰囲気の道だろう。長閑な景色がどこまでも続くよ。しかもずっと下りだ。
三波渓谷だよ。
群馬県と埼玉県にまたがる下久保ダムの下流にある名勝・三波石峡には緑色の美しい三波石が見られるが、この石に似た岩石が渓谷を作っていることから、三波渓谷の名がついたということらしい。
都幾川沿いの県道172号を離れ、越生梅林方面へ向かう。静かな道だ。
このあたりが越生梅林のある越生町なのだろう。今は花の季節ではないが、いたるところに梅ノ木を見ることができる。
黒山三滝へは県道61号を南へ行けばいいのだが、ゴールデンウイークで車の多い県道は避けたい。裏道を行くことにしたよ。車がまったく通らない静かな道だよ。
ちょっとしたアップダウンはあるがたいしたことはない。
いったん県道を横切り、さらに細い道へ。いい感じだ。
ここからは県道を行く。黒山三滝の入り口まではもうすぐだよ。
滝への入り口からは沢沿いの道を上って行く。沢を流れる水音が心地よい。
連休中で人が多い。駐車場も車が一杯だよ。
この石の階段を上って行くと一つ目の天狗滝がある。
天狗滝は、水音は聞こえるが、すぐ近くの滝の下まで行っても、その姿の全体を見ることができなかったよ。
涼しくて気持ちのいい沢沿いをさらに上って行く。
レトロな土産物屋の前を行くよ。写っているのは人のよさそうな店のおばあちゃん。
手前が女滝、後方が男滝だ。
これが女滝。
こちらが男滝。
この赤い橋を渡って行くと天狗滝の上の水の落ち口付近に出られるよ。
さて、県道まで引き返してさらに南へ向かう。
ここで県道61号は終わるんだね。いよいよ林道笹郷線の急勾配の上りが始まるよ。
その前に、遅いお昼のおにぎりを食べて一休み。
林道笹郷線の勾配は、最初の1.2キロは10%ほどで、その後は8%に落ち着く。
林道起点から終点の奥武蔵グリーンラインの一本杉峠までは2.6キロほどの距離だ。
おにぎりを食べ終わる頃、一台のロードバイクが目の前を力強いペダリングで通り過ぎ、林道へ消えて行った。
みみ爺が上り始めて少し行くと、そのロードは途中で止まっていた。が、みみ爺の姿を見るとふたたび上り始めたよ。そしてすぐに姿が見えなくなった。
ところが、それからしばらく進んでいくと、ロードはまた止まっていた。乗り手の中年の男性は息を弾ませて休んでいたよ。
「きついですね」
と声をかけ、みみ爺はそのまま先へ行く。
「ええ、きついです」
と、苦しそうに答えた。そのうち、またみみ爺を追い越していくだろう。
しかし、いつまで経っても上ってこない。どうしたんだろう。
みみ爺は、力まず淡々とペダルをこいでいく。
だいぶ上ってきたね。山がきれいだよ。
ここが林道笹郷線の終点だ。奥武蔵グリーンラインの一本杉峠だよ。
途中出会ったロードは、とうとう上ってこなかったよ。
さあ、奥武蔵グリーンラインを下って行くよ。ここは林道権現堂線だ。
天文岩と小さなお堂だよ。以前に通ったことがある。
岩には大きな割れ目がある。柵があって入れないので、中の様子はよくわからないよ。
お堂には「天文霊神」とある。
天文岩からはふたたび上ったり下ったりするよ。
トレイルランニングの青年が後ろから走ってきた。上り坂になると青年の足のほうが速い。たちまち追い越して行く。しかし、下り坂になると自転車のほうが圧倒的に速い。あっという間に追い抜いてしまう。
ところが、北向地蔵まではちょっと長めのきつい勾配の上り坂になる。みみ爺の自転車は歩くスピードに落ちてしまった。するとそのうち、常に一定の速度で駆けてくる青年は涼しい顔をして追い越して行ったよ。息を切らせている風もない。
北向地蔵に着いた。
先に来て汗を拭いていたトレイルランニングの青年に尋ねたんだ。
「どのくらい走っているんですか」
「朝から40キロくらいです」
「おや、私も朝から走っていますが、同じように40数キロですよ」
「上りが多い山道だと、自転車ではかえってそうなるかもしれませんね」
「しかし、山坂を足で走って40キロはすごいですね。何かの大会には出るんですか」
「近くありますが、それにはでません」
「まだ先へ行くんですか」
「いいえ、今日はここから武蔵横手駅まで下ります」
その青年に写してもらったよ。
北向地蔵からはさらに林道権現堂線を下って行く。そして、途中から宿谷権現堂線へ入って行くんだ。
ずっと下りだ。
今下りて来た道のガードレールが見えるよ。
「宿谷の滝」への道標があった。急な階段をけっこう下のほうまで降りて行かなければならなかったが、寄ってみることにしたよ。
滝は落差12メートル、周囲は苔むした岩壁に囲まれている。知名度の高い先の黒山三滝は人が多くて落ち着かなかったけれど、こちらはとても静かだ。なかなかいい滝だよ。
滝が落ちているところは小さなプールのようになっていて、夏場の水遊びには最適だし、涼しさやマイナスイオンを求めるにも絶好の場所だよ。しかし、周囲を岩壁に囲まれた狭い場所なので、日よけのテントなどは張れないようだよ。
滝のそばにあったよ。傾きかけた祠の中の仏像は明王だね。
宿谷の滝からも、道はまだまだ下るよ。
林道を出ると、風景が長閑のものに一変する。
これは何だろう。
下をくぐるとき、モアーと唸るような低い音が聞こえたよ。
近くの民家の庭先で花の手入れをしていたおばあちゃんに尋ねてみた。
「あれはベルトコンベアだよ」
秩父の武甲山で採掘された石灰石を日高市の太平洋セメントの工場まで運ぶためのベルトコンベアが中に通っているそうだ。その長さは23キロを超えるというから驚きだね。
さあ、そろそろ駅へ急ごう。時間はとうに4時を過ぎている。
2013年の9月に奥武蔵グリーンラインを走ったときにも立ち寄ったことのある高麗家だよ。江戸時代初期を代表する民家で、国の重要文化財だ。
これは高麗神社の鳥居だよ。
この橋を渡る。
橋の下では…。やっぱりゴールデンウイークだね。
道路わきに咲く花は、みみ爺の家にもあるフランス菊に似ている。ステキだね。
宮沢ダム(宮沢溜池ダム)だね。ダム湖(宮沢湖)まで行きたかったんだが、なにやら大掛かりな工事をしているらしく警備員に止められてしまった。
住宅街の路地を抜けて行くと、もうすぐ西武線の飯能駅だ。
楽しかったね。天気も最高によかったしね。
お疲れさん、みみ爺。