Four Season Colors

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読書のよもやま(2024.05.27)

2024-05-27 | 雑文
「近親殺人 家族が家族を殺すとき」石井光
太(新潮文庫)

本屋に行ったら、ルポルタージュの名手であ
る石井光太さんの新刊があったので、購入し
て読み終える。

近年、年800から900件台も殺人事件が
あるうち、400から500件が親族間での
事件であるらしく。

本書では、介護、引きこもり、貧困、精神疾
患、老老介護、虐待と、様々な原因による近
親殺人事件を取り上げている。

ここにあるケースは、結果として純粋な悪意
によるものもあるが、総じて起きるまでに回
避の余地があった。

そうして回避の余地があることで、現代社会
の課題を浮かび上がらせ、読者にも考えさせ
る。

事件自体は、殺人にまで至ることからも、多
分に狂気を孕んでいるし、平常にいる人間に
現実感はない。

それでも、誰もが陥る可能性のあるその状況
が迫ったとき、または身近にあるとき、果た
して事件を防ぐことはできるか。

ある程度の人生経験があれば、自分はそんな
判断はしない、そうならないように解決をす
ると言うかもしれない。

しかし、それなりの人生経験があれば、大な
り小なり、なぜあんなことを言ったのか、や
ったのかという状況があっただろう。

本書にあるのは、その極地の近親殺人事件の
記録である。

上質なルポルタージュらしく、安易な批判も、
分かったような解決も、押しつけがましい著
者の説教もない。

いつも通りの、著者の思い、考えは控え目に、
まずは事件を記録することを第一とした、静
かな冷静な文章。

著者の提示する事件記録を通して、著者とと
もに、今を生きる自分たちが考えることので
きる、おススメの一冊。


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