Four Season Colors

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読書のよもやま(2024.06.03)

2024-06-03 | 雑文
「絆 棋士たち 師弟の物語」野澤亘伸(新
潮文庫)

あまりハズレに当たったことのない、将棋の
棋士を取り上げたノンフィクションは、今回
もやはり面白かった。

本書は、棋士たちの師弟関係をテーマに7組
の師匠と弟子の棋士人生を振り返りつつ、そ
れぞれの立場での思いに迫る。

しかも、師については、振り返れば当然に自
身の師匠にも話は及び、ほぼ三世代の物語と
もなる。

なお、7組は中田功と佐藤天彦、畠山鎮と斎
藤慎太郎、木村一基と髙野智史、淡路仁茂と
久保利明、勝浦修と広瀬章人、

石田和雄と髙見泰地、桐山清澄と豊島将之と
なり、最後にボーナストラックとして、杉本
昌隆と藤井聡太の対談を掲載(敬称略)。

現役を取り上げるので、弟子の側がタイトル
獲得者など今の知名度がある中、木村一基と
髙野智史プロ編がやや異色で印象に残る。

とはいえ、他の6組の様々な師弟関係も、ど
れも面白く、将棋棋士という特殊な職業のプ
ロたちの個性に触れることができる。

勝敗はどこまでも自己の責任で、悩むことが
仕事とも言える棋士は、現役である限り、対
局の外でも苦悩が少なくないようで。

我ら悩み、苦悩する才能のない凡人は、盤を
前に悩む棋士たちの奥にある人生にも魅力を
覚える。

無論それは、決して悩み、苦悩する姿が楽し
いなどという下世話なことではなく、そこに
人間があるからである。

こうして7組の棋士の師弟の物語を読み、感
情を揺さぶられ、ボーナストラックに至り、
思う。

自分たちは、藤井聡太という人間は、(当人
の若さゆえにも)まだまだ見えていないのだ
ということを。


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