『なぞの青年』
新潮文庫、番号49、『ボッコちゃん』収録。
この話は是非、途中まで読んだところで手を止めて、事の真相を予想してみてもらいたい。
町の人々の素朴な願いを次々に叶えてみせる正体不明の人物。
今まで『ボッコちゃん』の作品群を読んできた人なら、すぐに二つや三つ、パターンを思いつくはず。
人々を迂遠に堕落させる悪魔?
気まぐれに人々を救う妖精?
地球を観察しに来てる異星人?
謎の薬のせい?
そんな風にファンタジーやSFの類を思い浮かべる一方で、別の思考に至る人もいるだろう。
何者かに脅されてる?
それとも、何か確固たる信念や思想を持ってる?
最後、なぞの青年の正体が明かされると物語は、言ってみれば社会派ミステリ路線に収斂する。
果たして彼のした行為は、所業は、善行だったか悪行だったか。
もしかしたら私たちの現実でも実際に起こっている出来事かもしれない。
この話のように、報道されてないだけで……なんて。
それでは。また次回。