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不定期連載「このアメコミ復刊して!」第2回:バットマン:アーカム・アサイラム

2010-05-14 | 漫画
約一月ぶりのご無沙汰でした。

「こア復」第2回は「ウォッチメン」「キリング・ジョーク」復刊後、
プレミア価格邦訳アメコミの代表格となっている
「バットマン:アーカム・アサイラム」をご紹介。

映画化の本数も多いのもあり、「バットマン」邦訳本というのは
けっこうな冊数が出ているわけですが
この作品はその中でもっとも敷居が高く、もっとも読みづらく、
もっとも陰鬱な話かもしれません。

ライターはアラン・ムーアやニール・ゲイマンといった
英国ライターの系譜に連なる「変人」グラント・モリソン。
アートはコラージュなどの技法を使う、「サンドマン」表紙でおなじみの
ペイントアーティストのデイヴ・マッキーン。

ストーリーはバットマンの住む世界(DCユニバース)で精神を病んだ犯罪者
(バットマン登場ヴィランのほとんどが当てはまりますが)が収容される
アーカム精神病院が、ジョーカーを初めとする「患者」たちに占領され、
そこにバットマンが赴くところから始まります。
その日付は4月1日。エイプリル・フール。
設立者であるアーカムの日誌と平行し、過去と現在、正気と狂気が交錯する
凄惨で暗く、なによりも狂気に満ちたストーリーとなっている作品でございます。
「キリング・ジョーク」でも語られていた、
「バットマンと犯罪者たちは同質な狂人なのではないか」という問いに
真正面から向き合った作品といってもいいと思います。
バットマンと犯罪者、アーカム・アサイラムと外の世界を隔てるものは何なのか。
その答えは出るのか、はたまたさらなる混沌に踏み込むだけなのか。

この作品が描かれたのは1989年。
ティム・バートン版「バットマン」が公開された年です。
その続編である傑作「バットマン・リターンズ」にもある意味共通した
「バットマン」や「正義」、そしてなにより「正気」にたいする懐疑が
この作品を傑作たらしめている側面であるといえるでしょう。

さて、アメコミ話をしていると
「日本語版がなくても原書を買って自分で訳すればいいじゃない」
ということをよく言われます。
そういう僕も第1回の「キングダム・カム」は邦訳版発売前に挑戦したのですが
それはおいときましてw

この作品、原書で読もうとすると「読めない」んです。
アートと文字が渾然一体となっており、しかも判読不可能な場合も多い。
文字を追うだけでも、本当にかなりの労力が必要になってきます。
それが、この邦訳版だとちゃんと文字が読める、というすごさ。
(原書を一度見てみると、本当にそれだけでも「凄い」と思っちゃうんですよ!)
翻訳を担当した高木亮・秋友克也両氏の仕事のすごさがよくわかります。
そしてイオン(現ウィーヴ)編集の邦訳版ということで解説も充実しており
さらっと読んだだけではわからない側面がしっかりと読み解かれております。

同名のゲーム(PS3もXBOX360も持たないので未プレイですが・・・)も
傑作として評価が高く、また「アリス」との関連も深い作品のため
「アリス・イン・ワンダーランド」が話題の今、手に入るようになってくれると
うれしいな、と思ったりもしてみます。

復刊リクエストはこちらにどうぞ

※次回更新は「こア復」以外でできるだけ早めに書くつもりです。
あとはアメブロのほう(「1Day,1Disk」)もよろしく。
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