老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

中国漁船の拿捕~船長釈放

2010-09-25 22:01:52 | 安全・外交
今回の中国漁船の拿捕、船長の勾留延長、そして昨日の那覇地検による船長釈放までの間に、両国政府間には自民党の小泉政権時代以上の緊張感が高まった。

そして那覇地検が政治的判断に基づき船長を釈放したことについて、日本政府の弱腰外交、中国の圧力に屈したとの非難が多いようである。それに対して菅政権は一様に検察庁が総合的に判断したことであるとして、三権分立を盾にダンマリを決め込んでいる。卑怯と言えばそうであろう。

しかし今回の一連の騒動は結果から判断するより、中国漁船の拿捕-船員全員の逮捕-船長のみの勾留(船員送還)-船長の勾留延長という一連の流れを見るべきであろう。この一連の流れの第二段階(船員全員の逮捕)で、前原国交大臣は何らかの政治的判断が可能だったにもかかわらず、中国側の感情を逆撫でするがごとく、国内法に準じて粛粛と進めることを宣言。これが起訴に向けての検察の勾留延長に発展し、ついに温家宝首相の逆鱗を呼び起こし、昨日の後味の悪い那覇地検の船長釈放発表となってしまった。今後ともこの後遺症は前原外相が続く限り無くならないであろう。

ところで今回の問題発生原因は、菅首相・仙谷官房長官、そして特に前原外務大臣・前国交大臣が自民党の福田内閣時代に日中間で締結された『「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明』の内容をどこまで外務官僚からレクチャーを受け理解していたかに帰結するのではなかろうか。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/visit/0805_ks.html

外務省が掲示している上記の『日中共同声明』は2008年5月に胡錦濤中華人民共和国主席が訪日の際に、福田総理大臣と交わした二国間の「戦略的互恵関係」に関する公式声明である。日本側はそれから現在に至るまでの間に、内閣が麻生自民党内閣から民主党鳩山-菅内閣に短期間に3回転しているが、中国の体制は共同声明締結当時からずっと胡錦濤・温家宝体制である。中国側に比べて日本政府側は「戦略的互恵関係」についての理解と解釈が希薄化していることは否めないであろう。それに加えて前原大臣特有の属性(米国追従)バイアスが加わり、今回の日中間のトラブルに発展したのではないかと思われるのである。

確かに日中間の「戦略的互恵関係」とは具体的に何か捕らえどころのないファジーな概念であるが、要は過去の日中戦争の問題も含めて両国間の諸問題は平和的に話し合いで解決していこうというこであろう。そして鳩山前首相と温家宝首相間で尖閣諸島近海のガス田開発も話し合いの道筋が整っていた矢先に、前原大臣がどうして強硬手段に出たのか分からぬが、訪米前のタイミングで南シナ海で日中間の緊張関係を生じさせ、米軍の辺野古移設をより正当化するための道具にしようとしたのではないかと見る向きもある。しかし今回のトラブルは過ぎたるは及ばざるが如しのよい事例であろう。

ところで今回の日本政府の対処について弱腰だとか、中国の圧力に屈したとか与野党議員から様々な声が挙がっているが、その前に福田首相・胡錦濤主席間で交わされた二国間の「戦略的互恵関係」を熟読してから批判した方が良いと思う。そうすれば上記のような批判は妥当でないことも見えるはずである。そして両国間の「戦略的互恵関係」を、どのような問題でどのように具現化するか、を議論することの方がより建設的であろう。

何れにしろ、日本の弱腰、中国の圧力と、ただ批判するのであれば、「戦略的互恵関係」は不要であり、まず破棄することが筋ではなかろうか。その結果は日本経済の破綻であることは火を見るより明らかであり、議員たる者はそこまで洞察したうえで批判すべきであろう。

そのような意味では、かつて小泉首相は尖閣諸島に上陸した中国人を逮捕せずに強制送還したが、その超法規的な措置は日中国交回復時に周恩来首相と田中首相間で交わされた「小異を捨てて大同につく」日中互恵関係の意味をよく理解していたように思う。与野党の国会議員には、今後の現実の政治の中で、日中の戦略的互恵関係の深化には双方に超法規的な判断と措置が欠かせないことを理解し、前原外交の失敗を今後に生かして欲しいものである。

「護憲+BBS」「政権ウォッチング」より
紅顔の美少年
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検察官適格審査会とは(FD改竄事件)

2010-09-25 07:31:20 | 民主主義・人権
元大阪高検の部長であった三井環氏等市民約100名は、今回の大阪地検特捜部の主任検事のFD改竄事件に関連して、最高検察庁次長検事ら9名を懲戒免職処分にする審査を「検察官適格審査会」という所に申し立てるとアサヒコムに報じられている。

http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201009240041.html

検察官適格審査会とは我々国民には聞き慣れない名前であるが、ウイキペディアを観れば、その構成メンバーも各界から11名が選ばれ、多士済々で成るほどと思わされる。さすがに三井氏、その道のプロで、昔採った杵柄というか、面目躍如である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A4%9C%E5%AF%9F%E5%AE%98%E9%81%A9%E6%A0%BC%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E4%BC%9A

今回のFD改竄事件は今までの新聞報道を見る限り、主任検事の前田恒彦容疑者の単独犯行のようであり、本人は起訴できたとしても身内が起訴するわけで何か釈然としないものを感じていた。一方大阪地検の直属上司や特捜部長や検事正までも立件、起訴することができるのか、例え起訴できたとしても個人的な犯罪は問えても組織的には何も問えないのではないかと見ていた人が多いのではなかろうか。最高検もそれを見越して、素早く大阪地検のかつての関係者も含めて事情聴取し、大阪地検内の事件と責任に止めたかったのではないかと思われる。

しかし「検察官適格審査会」に申し立てれば、組織としての監督責任、不作為責任も追及でき、報道にあるように懲戒免職処分も請求できるのであろう。今まで良く知らずに言われてきた「第三者機関」そのもののようである。よって国民の検察への不信を一掃するような、それなりの審議と結果が期待できそうである。

検察官出身の手負いの三井氏ならではの行動力である。メディアに登場する単なるヤメ検弁護士では検察庁法第23条4項にこのような規定があることは知っていたとしても、このような行動までは採れないであろう。

「護憲+BBS」「裁判・司法行政ウォッチング」より
厚顔の美少年
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面子を潰された前原外相(尖閣諸島沖衝突事件)

2010-09-25 07:27:28 | 安全・外交
24日のNHKニュースは『那覇地方検察庁は24日、船長を処分保留のまま釈放することを決めました。釈放の理由について那覇地検は「わが国の国民への影響や日中関係を考慮すると、これ以上、身柄を拘束して捜査を継続することは相当でないと判断した』と報じている。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20100924/k10014188511000.html

前原外相は米国に行って向こうの政府高官にまで日本は国内法に則り粛々と手続きを進めると公言していたはずである。ところが外相も首相も未だ帰国していないのに、那覇地方検察庁は極めて政治的な判断のコメントを発し、釈放を決めたようである。もし谷啓が生きていれば「ガチョーン」とギャグを発する場面である。

まさにどちらが政治家か検察官かと見まごうばかりの、これまでの外相の言動と検察の判断である。国交相として衝突されたという巡視船の視察までして、政治的判断を下さず、面子を潰された前原外相には、那覇地検の次席検事の爪の垢でも煎じて飲んで貰い、地検の政治的判断のコメントを見習って貰いたいものである。法律原理主義者には外務大臣は務まらないという何よりの証左でもあろう。

何れにしろ今回の日中間の溝は、前原氏が外相に居座る限り直ぐには回復しないであろう。しかし那覇地裁の英断はかなり政治的な判断であったとしても、これにより計り知れない数の商工業者が胸を撫で下ろしたことは間違いない。

政治家である外務大臣が日米関係だけに囚われ、日中の戦略的互恵関係の意味を理解せず、複雑な外交問題に三権分立を持ち出して、政治は司法にはタッチしないとの自分の判断を正当化し、国民に多大な不利益をもたらしては外務大臣は務まらない。特に国交大臣の時に現場を視察しているのであるから、そこで政治的判断を下す裁量権はあったはずであり、大局的な判断ができなかったことは、永田偽メール事件以上の失態であろう。

「護憲+BBS」「政権ウォッチング」より
厚顔の美少年
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