今回の中国漁船の拿捕、船長の勾留延長、そして昨日の那覇地検による船長釈放までの間に、両国政府間には自民党の小泉政権時代以上の緊張感が高まった。
そして那覇地検が政治的判断に基づき船長を釈放したことについて、日本政府の弱腰外交、中国の圧力に屈したとの非難が多いようである。それに対して菅政権は一様に検察庁が総合的に判断したことであるとして、三権分立を盾にダンマリを決め込んでいる。卑怯と言えばそうであろう。
しかし今回の一連の騒動は結果から判断するより、中国漁船の拿捕-船員全員の逮捕-船長のみの勾留(船員送還)-船長の勾留延長という一連の流れを見るべきであろう。この一連の流れの第二段階(船員全員の逮捕)で、前原国交大臣は何らかの政治的判断が可能だったにもかかわらず、中国側の感情を逆撫でするがごとく、国内法に準じて粛粛と進めることを宣言。これが起訴に向けての検察の勾留延長に発展し、ついに温家宝首相の逆鱗を呼び起こし、昨日の後味の悪い那覇地検の船長釈放発表となってしまった。今後ともこの後遺症は前原外相が続く限り無くならないであろう。
ところで今回の問題発生原因は、菅首相・仙谷官房長官、そして特に前原外務大臣・前国交大臣が自民党の福田内閣時代に日中間で締結された『「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明』の内容をどこまで外務官僚からレクチャーを受け理解していたかに帰結するのではなかろうか。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/visit/0805_ks.html
外務省が掲示している上記の『日中共同声明』は2008年5月に胡錦濤中華人民共和国主席が訪日の際に、福田総理大臣と交わした二国間の「戦略的互恵関係」に関する公式声明である。日本側はそれから現在に至るまでの間に、内閣が麻生自民党内閣から民主党鳩山-菅内閣に短期間に3回転しているが、中国の体制は共同声明締結当時からずっと胡錦濤・温家宝体制である。中国側に比べて日本政府側は「戦略的互恵関係」についての理解と解釈が希薄化していることは否めないであろう。それに加えて前原大臣特有の属性(米国追従)バイアスが加わり、今回の日中間のトラブルに発展したのではないかと思われるのである。
確かに日中間の「戦略的互恵関係」とは具体的に何か捕らえどころのないファジーな概念であるが、要は過去の日中戦争の問題も含めて両国間の諸問題は平和的に話し合いで解決していこうというこであろう。そして鳩山前首相と温家宝首相間で尖閣諸島近海のガス田開発も話し合いの道筋が整っていた矢先に、前原大臣がどうして強硬手段に出たのか分からぬが、訪米前のタイミングで南シナ海で日中間の緊張関係を生じさせ、米軍の辺野古移設をより正当化するための道具にしようとしたのではないかと見る向きもある。しかし今回のトラブルは過ぎたるは及ばざるが如しのよい事例であろう。
ところで今回の日本政府の対処について弱腰だとか、中国の圧力に屈したとか与野党議員から様々な声が挙がっているが、その前に福田首相・胡錦濤主席間で交わされた二国間の「戦略的互恵関係」を熟読してから批判した方が良いと思う。そうすれば上記のような批判は妥当でないことも見えるはずである。そして両国間の「戦略的互恵関係」を、どのような問題でどのように具現化するか、を議論することの方がより建設的であろう。
何れにしろ、日本の弱腰、中国の圧力と、ただ批判するのであれば、「戦略的互恵関係」は不要であり、まず破棄することが筋ではなかろうか。その結果は日本経済の破綻であることは火を見るより明らかであり、議員たる者はそこまで洞察したうえで批判すべきであろう。
そのような意味では、かつて小泉首相は尖閣諸島に上陸した中国人を逮捕せずに強制送還したが、その超法規的な措置は日中国交回復時に周恩来首相と田中首相間で交わされた「小異を捨てて大同につく」日中互恵関係の意味をよく理解していたように思う。与野党の国会議員には、今後の現実の政治の中で、日中の戦略的互恵関係の深化には双方に超法規的な判断と措置が欠かせないことを理解し、前原外交の失敗を今後に生かして欲しいものである。
「護憲+BBS」「政権ウォッチング」より
紅顔の美少年
そして那覇地検が政治的判断に基づき船長を釈放したことについて、日本政府の弱腰外交、中国の圧力に屈したとの非難が多いようである。それに対して菅政権は一様に検察庁が総合的に判断したことであるとして、三権分立を盾にダンマリを決め込んでいる。卑怯と言えばそうであろう。
しかし今回の一連の騒動は結果から判断するより、中国漁船の拿捕-船員全員の逮捕-船長のみの勾留(船員送還)-船長の勾留延長という一連の流れを見るべきであろう。この一連の流れの第二段階(船員全員の逮捕)で、前原国交大臣は何らかの政治的判断が可能だったにもかかわらず、中国側の感情を逆撫でするがごとく、国内法に準じて粛粛と進めることを宣言。これが起訴に向けての検察の勾留延長に発展し、ついに温家宝首相の逆鱗を呼び起こし、昨日の後味の悪い那覇地検の船長釈放発表となってしまった。今後ともこの後遺症は前原外相が続く限り無くならないであろう。
ところで今回の問題発生原因は、菅首相・仙谷官房長官、そして特に前原外務大臣・前国交大臣が自民党の福田内閣時代に日中間で締結された『「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明』の内容をどこまで外務官僚からレクチャーを受け理解していたかに帰結するのではなかろうか。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/visit/0805_ks.html
外務省が掲示している上記の『日中共同声明』は2008年5月に胡錦濤中華人民共和国主席が訪日の際に、福田総理大臣と交わした二国間の「戦略的互恵関係」に関する公式声明である。日本側はそれから現在に至るまでの間に、内閣が麻生自民党内閣から民主党鳩山-菅内閣に短期間に3回転しているが、中国の体制は共同声明締結当時からずっと胡錦濤・温家宝体制である。中国側に比べて日本政府側は「戦略的互恵関係」についての理解と解釈が希薄化していることは否めないであろう。それに加えて前原大臣特有の属性(米国追従)バイアスが加わり、今回の日中間のトラブルに発展したのではないかと思われるのである。
確かに日中間の「戦略的互恵関係」とは具体的に何か捕らえどころのないファジーな概念であるが、要は過去の日中戦争の問題も含めて両国間の諸問題は平和的に話し合いで解決していこうというこであろう。そして鳩山前首相と温家宝首相間で尖閣諸島近海のガス田開発も話し合いの道筋が整っていた矢先に、前原大臣がどうして強硬手段に出たのか分からぬが、訪米前のタイミングで南シナ海で日中間の緊張関係を生じさせ、米軍の辺野古移設をより正当化するための道具にしようとしたのではないかと見る向きもある。しかし今回のトラブルは過ぎたるは及ばざるが如しのよい事例であろう。
ところで今回の日本政府の対処について弱腰だとか、中国の圧力に屈したとか与野党議員から様々な声が挙がっているが、その前に福田首相・胡錦濤主席間で交わされた二国間の「戦略的互恵関係」を熟読してから批判した方が良いと思う。そうすれば上記のような批判は妥当でないことも見えるはずである。そして両国間の「戦略的互恵関係」を、どのような問題でどのように具現化するか、を議論することの方がより建設的であろう。
何れにしろ、日本の弱腰、中国の圧力と、ただ批判するのであれば、「戦略的互恵関係」は不要であり、まず破棄することが筋ではなかろうか。その結果は日本経済の破綻であることは火を見るより明らかであり、議員たる者はそこまで洞察したうえで批判すべきであろう。
そのような意味では、かつて小泉首相は尖閣諸島に上陸した中国人を逮捕せずに強制送還したが、その超法規的な措置は日中国交回復時に周恩来首相と田中首相間で交わされた「小異を捨てて大同につく」日中互恵関係の意味をよく理解していたように思う。与野党の国会議員には、今後の現実の政治の中で、日中の戦略的互恵関係の深化には双方に超法規的な判断と措置が欠かせないことを理解し、前原外交の失敗を今後に生かして欲しいものである。
「護憲+BBS」「政権ウォッチング」より
紅顔の美少年