岩殿山に登りました。山名は知っていましたが、これまで機会がありませんでしたので今回が初めてです。まず、大月駅を降りると北側に大きな大きな絶壁がほぼ直角にそそり立っています。これが岩殿山です。あの山頂から一本の鎖が垂れていて、さあ、登ってくださいと言われたらすぐに帰宅したところですが、幸い山の東側から巻くようにして登るとのことで一安心。山の中腹にある丸山公園を目指して階段を上ります。このあたりから眺める富士の雄姿は素晴らしく、「富士山が一番美しく見える町」という立て看板には説得力がありました。大月市の南側に連なる山々の向こうに顔を出した富士の山は3割ほど真っ白な雪に覆われ、その雪の中に尾根の部分が黒い筋をひいてクッキリと浮かび上がり、静岡側から見る富士山とは趣を異にした「かっこいい」姿でした。
丸山公園の「ふれあいの館」を通り過ぎ、そのまま山道を進むとあっという間に岩殿山山頂に到着。標高634メートル、スカイツリーと同じ高さです。実はこの岩殿山には難攻不落の山城が築かれていたそうです。東西に長い大きな岩山はそのまま天然の要塞になり、実際に歩いてみると「なるほど」とよくわかります。この城は戦国時代小山田茂信が治めていました。織田信長に追われた武田勝頼が親戚筋である茂信を頼ってこの城に助けを求めた際、茂信は勝頼を裏切り入城を断ったことが武田家の滅亡につながります。あの城がここにあったのだと知り感慨深い気持ちになりました。
さて、岩殿山山行はこれからが本番です。「ここ登れるの~?」というような鎖場を数か所よじ登り先に進みます。一番怖そうな兜岩は残念ながら通行止め。右にぐるりと回りこんで進むと結構な下り坂に遭遇。張ってあるロープを頼りに気合を入れて20メートルほど降ります。その後、左手に街を見下ろしながら落ち葉を踏みしめて歩くと天神山のピークに到達。あの有名な稚児落としはまだかな~と言いながら歩くこと数十分。圧巻の「稚児落とし」に到着しました。600メートルに満たない標高にしては、高度感はなかなかです。何しろ200メートルの切り立った断崖絶壁の上から見下ろすのですから。ここで昼食をとり、秋色に化粧したモフモフ、フワフワの山肌の景色を十分楽しみました。
ところでこの「稚児落とし」は、先の小山田茂信につながります。勝頼を裏切った茂信が織田家に出向くと「武田勝頼を裏切るとは何たる不忠義もの」とあっさり処刑されてしまいます。それを知った茂信の側室は茂信の子二人、赤子と幼児を連れて岩殿山城を脱出するのですが、途中赤子が泣き出し、追手に見つかることを恐れた家臣が情け容赦なく断崖から赤子を投げ捨てたそうです。それがこの「稚児落とし」。なんともやるせない歴史を抱えた岩殿山ですが、歩くにはとても面白いコースで晩秋の山歩きを堪能できました。
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