家の近くのむし探検 第67弾
12月4日、マンションの廊下を歩いた後、いつもの公園にも行ってみました。この頃は植栽のツツジの葉上を探してもあまり虫はいなくて、もっぱら木の幹で動くものがないかを探します。そうやって探し回ると、結構、チャタテムシに出会うことがあります。

これはイダテンチャタテで、今頃はたくさん見つかります。糸が張ってある下でじっとしています。時折、ちょこちょこと動くのですが、不思議といつも下向きに止まります。


これはまた、別のチャタテです。翅に複雑な模様があります。



これは別の個体で、やはり翅に複雑な模様があります。たぶん、上の個体とは同じ種でしょう。これらはチャタテ科のTrichadenotecnum属に属する種で、これまでもいろいろと調べたことがありました。

翅の部分を拡大して見ると、こんなに複雑な模様です。

これは以前、ブログに出した図で、前翅の斑紋を分類したものです。この図は次の論文の図をもとにして描きました。
K. Yoshizawa, "Systematic revision of Japanese Trichadenotecnum Enderlein (Psocodea: 'Psocoptera': Psocidae: Ptyctini), with redefinition and subdivision of the genus", Invertebrate Taxonomy 15, 159 (2001). (ここからダウンロードできます)
こうして以前見つけたチャタテと比較してみると、"d"と書いた部分の斑点の数が今回の個体はだいぶ疎らであることが分かります。上の論文にはTrichadenotecnum属のいろいろな種の翅の写真が出ていますが、それらと比較するとこのように疎らな種もときどき見られます。

これも以前、ブログに出した図なのですが、上の論文ではTrichadenotecnum属を5つの種群に分けています。それがこのAからEまでです。Fの"incertae sedis"は「分類学上の位置不詳」という意味で、赤字は「日本昆虫目録第4巻」を見て、分布に本州が入っている種です。Gは上の論文には載っていなくて、目録には載っているもののうち本州産のものを書いています。論文に載っている翅の模様を比べてみると、今回の種のように"d"の部分に斑点の数が少ないのはDのmedium種群に入っているものが多いようです。因みに以前の個体はAのincognitumだと思っています。Dの中で、本州産はlatebrachiumだけなのですが、論文に載っている検索表は基本的に交尾器を調べているので、この写真だけだと何とも言えません。