豚も杓子も。

私にすれば上出来じゃん!と開き直って、日々新たに生活しています。

ヴェニスの商人

2007年09月19日 | Weblog
血も涙もない悪徳金貸しが、その非道な謀略を見事な知恵で打ち負かされる!・・・という図式ではありませんでした。
これまで抱いていたイメージが180度変化した「ヴェニス商人」。とても有名な戯曲とはいえ、子供向けにわかり易くまとめられたお話であらすじを押さえていただけだったようです。


映画ではアル・パチーノ、舞台では市村正親さんが演じたユダヤ人金貸しシャイロックは、最愛の娘に裏切られ捨てられた一人の可哀想な父親でした。

物語の終わりには、同情とも哀れみともいえない、怒りも混じったなんとも複雑な感情が生じていました。父親は、娘との関係を、娘は、父親との関係を考える良い契機となるお芝居でした。我が家の関係者も、気の毒なシャイロックと気持ちを通わせながら劇場を後にしたようです。この時期に見られたのは、奇跡的にタイムリーという他はありません。


でも、この「可哀想なシャイロック」とでも題名を付け替えたいような「ヴェニスの商人」は、作られた当時には喜劇だったそうです。その時代の空気の下でないとその本当の姿はわからないのかもしれませんね。ただ、時代を経ても同じ台詞を俳優が語ることが出来る、というのは、シェイクスピアの戯曲の偉大さを示すとともに、大きな面白さでもあると思います。

喜劇といえば、笑いを誘うハプニングがありました。
裁判官に化けてシャイロックを打ちのめしたお手柄ポーシャが、その報酬として所望した指輪を手渡されるところ。なんとその指輪が、運河に見立てた舞台下のビ二ールシートに転がり落ちたのです。機転を利かせた従者がすばやく駆け下りて指輪を探し出して事なきを得ましたが、もし見つからなかったらその後の進行にかなり支障を来たした場面でした。傍らのお付きの女性ネリッサ役の佐藤仁美ちゃんは、くくくくっと笑いをこらえているし、指輪を取り落としたポーシャ役の寺島しのぶさんはネリッサをシャイロックと呼んでしまうし・・。見つかって良かったです。でも、本当だったらそこは運河のはず。普通は見つからないですよね~。

雰囲気のある劇場。幕が開く前のロビーでのパフォーマンスも楽しかったです。
ただね、埼京線で新木場行きというのが謎でした。大崎からりんかい線に乗り入れているのですね。まっこと、地方から上京すると並みのロールプレイングゲーム以上の冒険が待っています。