伯爵と三つの棺(潮谷験/講談社)
フランス革命期の北ヨーロッパを舞台とする殺人事件を描く長編ミステリ。
殺人の舞台は、伯爵が所有する古城。殺されたのは元吟遊詩人。容疑者は、伯爵から古城の改修を任された下級貴族の三つ子。そして、語り手は、伯爵の公務について逐一書き取る役割を担う政務書記。
警察組織が未発達な時代に、捜査を担うのは、伯爵の家臣である「公偵」たち。特に主席公偵の活躍で、事件は解決に向かう。しかし・・・
ファンタジー的な要素はなく、犯罪捜査技術が未熟な時代に、論理だけで犯人を特定しようとするミステリ。
フランス革命の余波を恐れる北ヨーロッパの貴族社会という設定が絶妙。事件のそもそもの発端、殺人の動機、殺害方法など、この時代のこの場所でなければ、このような綿密なミステリは成立しなかったのでは、という気がする。
そして、この本の最大の魅力は、事件解決後の残りのページに集約されている。どんでん返し、という訳ではなく、より深い真相が・・・
作者は2021年のデビューで、すでに数冊の長編を書かれているようだ。ミステリの沼の深さを、あるいは、読書そのものの奥深さを感じた一冊。
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