戦場のコックたち(深緑野分/東京創元社)
22年11月に、この作者の『ベルリンは晴れているか』を紹介した。その後、近作を少し試してみたが、やはり評判の高いこの作品を読むべきだと思った。
この本は、合衆国が第二次世界大戦に参戦した時期に陸軍に志願し、ノルマンディー上陸からドイツ降伏までコックとして従軍した若者の物語だ。
コックといっても専業ではなく、当然、戦闘に参加する。輸送機からの降下、物資の補給、銃撃戦など、戦争の様々な局面が描写される。多くの文献を参照したことがうかがわれるが、それにしても、終始、一人称で語られる文章が生み出す臨場感には目を見張るものがある。
戦争を描いているから凄惨な状況が次々と現れるのはやむをえないが、時おり、謎解きの要素が挿入される。戦争を題材にした謎解きというよりは、それが物語の骨格をなし、読者にとってはページをめくる推進力になる。
読むべき作品とは、あえて言わない。しかし、読む価値のある本だ。
エピローグがよかった。予想していなかったが、予想外ではなかった。