少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

世界史を大きく動かした植物

2019-10-20 17:59:44 | 読書ブログ
世界史を大きく動かした植物(稲垣栄洋/PHP)

この著者は、以前読んだ「身近な雑草の愉快な生き方」の著者。たぶん、我が国の植物学者の中で、一番文章のうまい人。

以前、炭素化合物が世界の歴史を動かした、という趣旨の本を読んで非常に面白かったが、この本は様々な植物が世界史に与えた影響について論じた(というほど大上段ではないが)本。一粒のはじけない小麦が農業を生み出した、とか稲が日本という国を創り出した、とか、様々な所見が表明されているが、いずれも、それなりの説得力を持っている。そして、全編に通底する、人が植物を利用したのか、植物が人を利用したのか、という問いは、単なるレトリックを超えた重みを持っていると思う。

時間は存在しない

2019-10-14 10:29:55 | 読書ブログ
時間は存在しない(カルロ・ロヴェッリ/NHK出版)

著者は、「すごい物理学講義」の著者で、ループ重力理論の研究者。相対性理論、量子物理学、そしてループ理論から得られた知見に基づき、時間の本質を思考する内容。時間は変化の指標であるが、普遍的でも連続的でもない。そして、過去と未来を分かつ「時間の矢」は、熱力学第二法則にしか根拠を持たない。

本書の内容を十分に理解したと主張するつもりはないが、エントロピーは、細部を区別できない曖昧さの指標であり、それは人間の視点からくる一種の錯覚だと、著者は主張しているようだ。

「すごい物理学講義」は、内容は理解不能なのに、非常に読みやすい本だったが、この本にも同様の趣きがある。時間は人間の存在が生み出す、という、これは一種の人間原理なのかもしれない。

鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ。

2019-10-06 23:04:21 | 読書ブログ
というわけで、図書館で探したら見つかったので読んでみた。

この世界では稀な、鳥類学者の生態が詳細に記述された学術書、と呼ぶべきか。
研究者としての特権で、普通の人が絶対に行かない、あるいは行けない場所を訪問する旅行記ともいえる。

いずれにしても、タイトルとは逆に、この人は鳥が好きでたまらないのだ、としか思えない。