博士を殺した数式(ノヴァ・ジェイコブス/ハヤカワ・ミステリ文庫)
主人公は書店の女性店主。天才数学者である祖父が自殺し、主人公あてに遺書が届く。それは暗殺者に殺されそうな状況で書かれ、ある方程式を、聞いたこともない人物に届けてほしい、との依頼が書いてあった・・・
祖父の死の真相と、方程式をめぐる謎を解明する物語。
物語は、主人公のほか、天才数学者の息子である物理学者と、主人公の兄の視点で語られる。3人とも、それぞれに困難な事情を抱えており、その成り行きも描かれるから、謎解きに加えて、かなり複雑なドラマ仕立てでもある。
感想を少し。
優れた頭脳を持つ一族も、それなりの苦悩を抱えている・・・
問題の方程式は一部示されるが、全体は最後まで明示されない。(実在する可能性はかなりあやしいが、フィクションの設定に細かく異論をはさむ必要もない。)
日本語タイトルは、明らかに小川洋子氏の『博士の愛した数式』に寄せている。(つねづね、翻訳本のタイトルは自由過ぎると思っている。)
原題は”The Last Equation of Isaac Severy”
直訳すれば「アイザック・セヴリーの最後の方程式」
最後に、暗号解読ミステリとしては十分に面白く、読後感も悪くない。