気の毒ばたらき きたきた捕物帖(三)(宮部みゆき/PHP研究所)
きたきた捕物帖の第三作。
亡き千吉親分の文庫屋が放火により火事に・・・という騒ぎから始まる2つの事件。主人公は、未熟ながらも気にかかった謎に果敢に挑んでいく。
人情噺であり、捕物帖であり、そして主人公の成長物語でもあるシリーズ。今作の感想は・・・
何かにつけて気弱になり、少し頼りない主人公だが、筋を通し、まっすぐに思いを貫く姿勢がよい。周囲の人々の共感と助けを得て、文庫売りとしても、岡っ引き見習いとしても存在感を増していく。
地の文章もすべて主人公の視点で描かれているのはこれまでと同様。ときどき混じる独特の独白が独特のリズムを生み、この作品ならではの味わいになっている。
このシリーズは、『初ものがたり』と「ぼんくらシリーズ」と同じ系統の作品だと思っていたが、何かの機会に『桜ほうさら』もそうだと知り、今作を読む前に楽しませてもらった。
作者には、この系統の作品を、もっと書いてほしい。(時代ものでも、百物語の系統は読まないことにしている。)