少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

沢野ひとし

2020-07-27 21:18:10 | 読書ブログ
北京食堂の夕暮れ(沢野ひとし)

沢野ひとしといえば、椎名誠や目黒考二らと親しいイラストレーターだと記憶している。このあたりの人たちに対しては、少し距離を置いている。評価しているけれど、全面的な支持じゃない、という感じ。

で、この人には山のエッセーが多いらしいが、読もうとは思わない。しかし、日中関係が悪化してからくり返し行くようになった中国を舞台とするこのエッセーは、嫌みなく自然に読むことができたし、全体として一編の物語のようにも思えてくる。歳を重ねての達観のようなものが滲み出ている。

私のように読まず嫌いにしている人にも、この本だけは薦めたい。

ダン・シモンズ

2020-07-27 18:51:08 | 読書ブログ
鋼(ダン・シモンズ)

ダン・シモンズは、SFの巨匠である。『ハイペリオン』シリーズでは圧倒的な迫力で読者を魅了し、その後、『イリアム』、『オリュンポス』ではギリシャ神話と機械知性の冒険、退廃した人類文明の行く末を融合させた壮大な叙事詩を描いて見せた。しかしその合間に、こんな作品を書いていたことに、最近、気が付いた。

ハードボイルドと呼ぶべきであろうが、私が読んだことのある古典的作品では、少なくとも探偵は、人を殺すことはなかった。しかし、この作品の主人公は、殺人を厭わない。それさえ気にしなければ、降りかかる難事を次々と突破していく展開はきわめて爽快だ。この惹きつけられる感じは、確かにハイペリオンに似たところがある。

続編の『雪嵐』の方が、より迫力がある。

なお、『鋼』の原題はハードケース、『雪嵐』はハード フリーズ。

有栖川有栖

2020-07-03 22:11:49 | 読書ブログ
有栖川有栖

この3月から6月にかけては、個人的に、定年退職、再就職、コロナ禍の大きな波に翻弄された日々だった。精神の安定を保つために、『鬼平犯科帳』を通しで読み返した後、有栖川有栖の作品を読みふけった。

大学生の頃、アガサ・クリスティーとエラリー・クイーンの作品を手に入る限り読んだ時期があり、その後、推理小説には読むべき作品が多すぎて、沼から抜け出すためにSFとスパイ小説に方向転換した。散発的に推理ものを読むことはあったが、本格推理は本当に久しぶりという感じ。

まだ読みつくしてはいないが、これまでのところ『マレー鉄道の謎』と『鍵のかかった男』がよい。ところで火村英生は、本人の主観はともかく、煙草を吸う場面が印象的な主人公として、かなり上位にくると思う。