少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

コロナ後の世界

2020-10-25 17:56:22 | 読書ブログ
コロナ後の世界(ジャレド・ダイアモンド他/文春新書)

ジャレド・ダイアモンド 『銃・病原菌・鉄』の著者
マックス・テグマーク 宇宙論者、AIの安全性に関する研究を主導
リンダ・グラットン 人材論。組織論の権威
スティーブン・ピンカー 心理学者
スコット・ギャロウェイ GAFAの動向に詳しいニューヨーク大学教授
ポール・クルーグマン ノーベル賞を受賞した経済学者(リフレ派)

世界的な知の巨人6人にインタビューした、世界の未来を考察する一冊。

21世紀半ばに向けての未来予測を問う企画であったものが、新型コロナの影響を受けて、追加取材をしたうえで、その内容をまとめたもの。

本書では、パンデミックに対する解決策も効果的な視座も、必ずしも示されてはいない。それぞれの論者の主張は、新型コロナ以前からの主張の延長とも思える。しかし、世界的な知性が、この事態をどのように認識しているか、という意味では、タイトルに偽りあり、とも言えない。

いずれにしても、6人の主張は、新型コロナが従来からあった日本及び世界の課題を、より鮮明に顕わにした、という点で共通している。

特に、ジャレド・ダイアモンドの日本に関する提言は、政治家の皆さんに読んでいただきたい、かな。(個人の感想)

アルテミス・ファウル 失われし島

2020-10-18 17:52:08 | 読書ブログ
アルテミス・ファウル 失われし島(オーエン・コルファー/角川文庫)

シリーズ5作目。犯罪一家の天才少年アルテミスと、妖精界の女性戦士ホリー・ショートが活躍するファンタジー。アルテミスの傍らには護衛役のバトラー、ホリーのサポート役にはケンタウロスのフォーリー、という構図もこれまでと変わらない。

今作では、デーモンという種族や、アルテミスに匹敵する天才少女、異次元世界など、新たな仕掛けが数多く登場する。何よりも、今作のアルテミスは、犯罪を企んでおらず、善意に基づいて行動している。

そして、人間界よりもはるかに発達した妖精界の技術と、妖精たち固有の魔法があれば、どんな問題もすぐに解決すると思われるにもかかわらず、次々と襲い掛かる危機と予想外の展開。

確かに、これまでのどの作品よりも早く読み終えた気がする。あとがきを読むと、8作目まで出ているようだ。翻訳と文庫での出版を楽しみにしたい。

それにしても、以前からホリーは、何となく『ドキンちゃん』かなと思っていたが、今作には、『バイキンマン』を思わせるキャラが登場する。(個人の感想です。)

言い訳

2020-10-11 20:31:03 | 読書ブログ
言い訳(塙宣之/集英社新書)

漫才のナイツ塙が、なぜ自分たちはM1で優勝できなかったのかを分析する内容。

M1は、吉本興業主催で、だから吉本芸人が有利というわけではないが、やはり漫才の本場は大阪で、圧倒的に実力があること。
また、M1は4分間のネタで、コント漫才よりは、しゃべくり漫才が笑いを取りやすいこと。

的確な分析だが、やはり優勝していない漫才師が語ると、言い訳にしかならない。それを承知の上で、M1について熱く語っている。
それが、そのまま現代漫才論になっており、また、芸人論にもなっている。漫才の好きな人には、一読をお勧めしたい。

個人的には、漫才師の中ではナイツが一番好きだ。この本を読んで、その思いが強まった。

スクールボーイ閣下

2020-10-04 17:40:41 | 読書ブログ
スクールボーイ閣下(ジョン・ル・カレ/ハヤカワ文庫)

ジョン・ル・カレの作品のうち、スマイリー3部作の2番目。

この作者は、私がスパイものを愛好するようになったきっかけのひとりで、最近、本屋で文庫本をよく見かける。で、『寒い国から帰ってきたスパイ』以降、彼の作品はある程度読んでいるつもりでいたが、読んでいない作品が相当あることに気づいた。まあ、読むべき本格スパイものがある、というのは、決して悪い状況ではない。

ソ連崩壊以降、スパイものは下火になると思っていたが、冷戦時代と変わらない、とまではいかないにしても、かなり出回っている。それはたぶん、諜報活動まがいの行為をいとわないプーチン氏の功績?によるところが大きいのだろうと思っている。彼は大統領である前に、スパイマスターなのだ。(あくまでも主観です。)

で、本作では、前作『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』で大きな打撃を受けた英国の情報機関『サーカス』が、スマイリーの指揮のもと、反撃を試みる、という内容。作者特有の緻密なリアリズムに加え、恋愛も派手なアクションもある、読み応えのある作品。