動物たちは何をしゃべっているのか?(山極寿一・鈴木俊貴/集英社)
ゴリラの研究者とシジュウカラの研究者が、動物の言葉について語り合った内容を書籍化したもの。
言葉は人間だけのもの、という定説?に対して、動物たちも鳴き声などを通じてコミュニケーションをとっている、と主張している。それは人間が考える以上に高度で、それを研究することによって、人間の言葉の進化を類推することもできる。
話は発展して、言葉を通じて人類の進化や特性を考察する。例えばこのような論考が語られる。(順不同。要約の文責は私にあり、間違っていたらごめんなさい。)
人類の集団の規模が大きくなるにつれて、脳も大きくなった。
動物たちは、鳴き声だけでなく、文脈や視線、身振り手振りなどを同時に用いて複雑なメッセージをやりとりしている。人間のコミュニケーションは言語に依存している。
戦争は言葉が暴走してしまった例のひとつだ。人間は本質的に戦争が好きなのではなくて、仲間を守るために、あるいは信頼を裏切らないために戦場に行く。
SNSやAIでは言葉だけがやり取りされるようになり、共感によるコミュニケーションが難しくなっている。
しかし、悲観論ばかりではない。最後に、テクノロジーをうまく使えば、言語から切り捨てられる情報と現代社会の利便性を両立させることはできる、という希望が語られる。
それほどの量はなく、読みやすい本です。