少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

蠟燭は燃えているか

2024-12-13 13:13:59 | 読書ブログ
蝋燭は燃えているか(桃野雑派/講談社)

2023年3月に紹介した『星くずの殺人』の作者の新作。


前作の続編。というか、前作の型破りな登場人物「真田周(さなだ あまね)を主人公とする、新たな事件、というべきか。

主人公は、前作の事件後、脱出ポッドから音楽の生配信を行う。それは多くの注目を集めるが、殺人事件が明らかになると、不謹慎だとして大炎上する。

そのような設定から、京都を舞台に物語が始まる。

過酷な物語である(そういう意味では、おススメできない)。あえて紹介する理由は2つ。

近未来という設定だが、「現代」が孕む危うさを、鋭く描き出している。SNSの炎上をはじめ、さまざまな差別や誹謗中傷などなど。それらを背景に繰り広げられる事件のHOWとWHYのスケールが、前作と同様、非常に大きい。(この作品に責められていると感じる人にとっては、読みたくない本だろう。)

もうひとつ。主人公の話すテンポのよい京都弁がおもしろい。「知らんけど」のニュアンスを説明している部分があるが、ネタバレにはならないので引用させてほしい。

「私はこう思っていますけど根拠があって言ってるわけではありませんのであくまで一意見として聞いていただきエビデンスが必要な場合はご自身でお調べください」

ネイティブな話者ではないので正解かどうかは知らないが、納得はできる。

そして、前作に引き続き、本作でも、印象的な末尾を引用したい。

二人の声が静かにハモる。
「「知らんけど」」






案山子の村の殺人

2024-12-06 12:43:22 | 読書ブログ
案山子の村の殺人(楠谷佑/東京創元社)

今年4月に『ルームメイトと謎解きを』を紹介したが、初見の作家さんだったので、他の作品も読みたいと思って見つけた一冊。

主人公は二人組の推理作家。ペンネームは作者と同じ「楠谷佑」。この設定は、エラリー・クイーンや有栖川有栖を想起させる。実際、一人称の「僕」は、ミステリオタクという設定。

二人は大学生で、同じ家に住む従兄弟同士。相棒がプロット担当、主人公が文章担当。作品中の推理も相棒が中心だから、主人公はワトソン役、というところか。

二人は取材のため、案山子だらけの村に出かけて、殺人事件に遭遇する。ボウガンを使った不可解な殺害方法。積雪による殺人現場と村全体の密室化。そして、解決編の前に提示される、作者から読者への挑戦状。

いかにも、な本格推理。ということで、本筋とは関係のない感想を少し。

かかしで有名な村は、徳島県に実在する。

架空の大学名が3つ出てくるが、どの大学かは、わりと簡単に推測できる。(どうでもいいことですが。)

作者からの挑戦状に対して、挑戦しようとは思わない。自分で謎解きするのではなく(実際、当たったことはない)、作中の謎解きを楽しむことにしているので、躊躇なく次のページをめくった。

厚めの本だが、気持ちよく読めた。「シリーズ第一弾」とあるので続編を楽しみにしたい。