少し偏った読書日記

エッセーや軽い読み物、SFやファンタジーなどの海外もの、科学系教養書など、少し趣味の偏った読書日記です。

危機と人類

2020-02-17 18:50:00 | 読書ブログ
危機と人類(ジャレド・ダイアモンド/日本経済新聞出版社)

『文明崩壊』で、崩壊した文明と、崩壊を免れた文明を論じた著者は、この作品では、危機を迎えた国家の行動を論ずる。明治維新時の日本と現代の日本を含む、7つの事例を通じて、どうすれば国家が自らを変革して危機を脱することができるのかを検証し、さらに、人類の生存を脅かす課題への対応の糸口を探る。

特に、現代の日本とアメリカ合衆国を論じている章は、それぞれの国の指導者たちにぜひ読んでほしいと思うが、両国とも、事実に基づく主張を軽く見る風潮に毒されているような気がする。

にもかかわらず、このような本が出版され、広く読まれているという事実は、人類にとっての希望だとも思う。

終わりと始まり

2020-02-16 18:13:58 | 読書ブログ
終わりと始まり(池澤夏樹/朝日文庫)

この人の小説を、読んだことがない。ときたま新聞で見かける評論から、まっとうな知識人というイメージを持っているが、実は大昔に、この人が有名になる前の翻訳の仕事を読んだことがある。カート・ヴォネガットの「母なる夜」。重い寓意が、軽い独白体で語られる、ナチスをめぐる物語。

「終わりと始まり」は、池澤夏樹が朝日新聞に連載したコラムで、ちょうど東日本大震災の前後の時期に書かれたもの。題名は連載開始時に決まっていたから、象徴的な題名になったのはたまたまだが、やはり震災に関連することに多くのページがさかれている。

今の日本の状況では、少し左寄りの、という評価になるのかもしれないが、その主張や立ち位置にかかわらず、この人の言葉はまっすぐに届き、心によく響く。それは、言葉を発する以前の、思索の質に支えられているのだと思う。

だからといって、それでは小説を読んでみよう、とならないのが、この読書日記の、少し偏ってるところ。