東電:官僚天下り50人以上 ゆがむ原発行政
以下は毎日新聞の調査報道内容です。官僚が電力会社、業界に天下り、国策や政治決定が捻じ曲げられて、官僚の癒着とたかりの関係がよく分かります。
東京電力に「嘱託」などの肩書で在籍する天下り中央官僚が47人(8月末)に上ることが分かった。次官OB向けの「顧問」ポストも加えれば50人を超え、出身は所管の経済産業省から国土交通、外務、財務各省、警察庁、海上保安庁と多岐にわたる。東電福島第1原発事故では安全規制の不備が指摘されるが、原子力行政に携わった元官僚は「(当局と電力会社との)癒着が安全規制の緩みにつながった」と認める。
経産省キャリアOBの最上級の天下り先は東電副社長ポスト。次官OBの石原武夫氏に始まり、資源エネルギー庁長官や次長経験者が10年前後の間隔で就いてきた。今年1月には、昨年8月に退任したばかりの石田徹エネ庁前長官(当時)が顧問に天下りした。東電は「慣例通り副社長に昇格させる予定だった」(幹部)。しかし、「退職後2年間は所管業界に再就職しない」という自民党政権時代に作られたルールを逸脱していた上、原発事故による行政批判も重なって、4月に顧問を退任せざるを得なかった。
経産省は関西など他の電力各社にもそれぞれ元局長や審議官、部長クラスを5人前後ずつ役員や顧問として再就職させている。
◇報酬、霞が関以上に
中央省庁OBを幅広く受け入れる東電のような余裕は、独占事業ではない他の民間企業では考えられず、経済官庁幹部も「東電など電力は再就職の最大の受け皿」と認める。
東電関係者によると、天下り官僚の肩書はキャリアOBなら「顧問」、ノンキャリア出身者なら「嘱託」。報酬は「霞が関での最終ポスト時代を下回らないのが暗黙のルール」 (経産省OB)だ。
東電は「国交省や警察庁OBに電源立地対策で知見を発揮してもらうなど、経営に役立っている」と説明した。しかし、財務や外務官僚OBの場合「本命の再就職先が決まるまでの腰掛けで東電に入り、給料だけ払うケースも多い」(東電関係者)。
◇「世話になれば無言の圧力」
天下りを通じた当局と電力会社のもたれ合いの弊害は原発行政にも影を落とした。1979年の米スリーマイル島の原発事故などを教訓に、欧米当局は、原発事業者に地震など災害対策や炉心溶融など過酷事故への実効ある対応策を厳しく義務付けた。しかし、日本では事実上、電力会社任せとなり、津波で全電源が喪失した福島原発のようなずさんな対応が取られた。
元原子力安全・保安院長は「欧米並みの規制を導入すべきだとの意見もあったが、コスト負担に反発する電力会社に押し切られた」と説明。元原発検査官は「上司のキャリア(官僚)が退官後、電力会社に世話になっていれば、無言の圧力がかかるのは当然」と話す。
以下は毎日新聞の調査報道内容です。官僚が電力会社、業界に天下り、国策や政治決定が捻じ曲げられて、官僚の癒着とたかりの関係がよく分かります。
東京電力に「嘱託」などの肩書で在籍する天下り中央官僚が47人(8月末)に上ることが分かった。次官OB向けの「顧問」ポストも加えれば50人を超え、出身は所管の経済産業省から国土交通、外務、財務各省、警察庁、海上保安庁と多岐にわたる。東電福島第1原発事故では安全規制の不備が指摘されるが、原子力行政に携わった元官僚は「(当局と電力会社との)癒着が安全規制の緩みにつながった」と認める。
経産省キャリアOBの最上級の天下り先は東電副社長ポスト。次官OBの石原武夫氏に始まり、資源エネルギー庁長官や次長経験者が10年前後の間隔で就いてきた。今年1月には、昨年8月に退任したばかりの石田徹エネ庁前長官(当時)が顧問に天下りした。東電は「慣例通り副社長に昇格させる予定だった」(幹部)。しかし、「退職後2年間は所管業界に再就職しない」という自民党政権時代に作られたルールを逸脱していた上、原発事故による行政批判も重なって、4月に顧問を退任せざるを得なかった。
経産省は関西など他の電力各社にもそれぞれ元局長や審議官、部長クラスを5人前後ずつ役員や顧問として再就職させている。
◇報酬、霞が関以上に
中央省庁OBを幅広く受け入れる東電のような余裕は、独占事業ではない他の民間企業では考えられず、経済官庁幹部も「東電など電力は再就職の最大の受け皿」と認める。
東電関係者によると、天下り官僚の肩書はキャリアOBなら「顧問」、ノンキャリア出身者なら「嘱託」。報酬は「霞が関での最終ポスト時代を下回らないのが暗黙のルール」 (経産省OB)だ。
東電は「国交省や警察庁OBに電源立地対策で知見を発揮してもらうなど、経営に役立っている」と説明した。しかし、財務や外務官僚OBの場合「本命の再就職先が決まるまでの腰掛けで東電に入り、給料だけ払うケースも多い」(東電関係者)。
◇「世話になれば無言の圧力」
天下りを通じた当局と電力会社のもたれ合いの弊害は原発行政にも影を落とした。1979年の米スリーマイル島の原発事故などを教訓に、欧米当局は、原発事業者に地震など災害対策や炉心溶融など過酷事故への実効ある対応策を厳しく義務付けた。しかし、日本では事実上、電力会社任せとなり、津波で全電源が喪失した福島原発のようなずさんな対応が取られた。
元原子力安全・保安院長は「欧米並みの規制を導入すべきだとの意見もあったが、コスト負担に反発する電力会社に押し切られた」と説明。元原発検査官は「上司のキャリア(官僚)が退官後、電力会社に世話になっていれば、無言の圧力がかかるのは当然」と話す。