地方都市、地方自治体の崩壊を防ぐためには、農業問題を考えなければなりません。この問題を避けて地方創生などは到底、語ることはできません。安倍、自民党政権が進めようとするTPP交渉に反対する農業者、農協を恫喝し、屈服させるための彼らの嫌がらせと指摘されるのは正しい指摘ではないかと思います。
農業は、食の安全保障の根幹をなす政治課題であり、世界の主要国は、食料自給率を上げるために最大限の取り組みを行うのが当たり前の課題です。ところが、歴代自民党政権はアメリカからの食料輸入、政権の経済要求を無批判的に受け入れた結果、長期的には日本農業を脆弱で、一貫性のない農業に追い込んできました。農業者が収入面で追い詰められて、後継者不足で離農、農地の放置などに追い込まれたのは当然のことでした。
農業が日本の地方都市、農村部の自然環境、景観維持にとっても重要な役割を果たしてきました。このことは、東日本大震災の原発事故で全損非難した地域を見れば、分かることです。
自民党政権こそが、その農業政策上の間違いを総括し、責任を明示すべきです。農協の問題に問題をすり替えるなと言いたい。
<北海道新聞社説>農協改革 これで「攻めの農業」に?
「攻めの農業」とどう結びつくのか。大詰めを迎えた政府・与党の農協改革の論議を見ていると、そんな疑問ばかりが浮かぶ。
安倍晋三政権は農業の岩盤規制を打破すると意気込んでいる。だが、全国農業協同組合中央会(JA全中)の組織見直しで何がどう変わるというのか。
担い手の減少、耕作放棄地の増加…。農業を取り巻く環境は厳しさを増している。それなのに政府・与党の論議からは、肝心の部分が聞こえてこない。
重要なのは、組織論より今の農業が抱える問題への対策である。
政府は今国会への農協法の改正案提出を目指している。
柱となるのは、JA全中が持つ農協を統括する監査権の廃止だ。同時にJA全中を農協法に定められた特別な法人から経団連などと同じ一般社団法人にするという。
約700ある農協はJA全中の監査を受けている。この監査部門を分離してつくる法人か既存の監査法人を農協が選べるようにする。公認会計士の監査で農協経営の透明性を高める。それが狙いだ。確かにJA全中の監査や指導が画一的で、農協の自由な発想を阻害しているとの指摘もある。
だからといって監査の仕方を変えれば、農業が活性化するのか。そんな単純な話ではなかろう。
昨春から続いている農協改革の論議は、JA全中の組織見直しばかりに終始している。
JA全中が、安倍政権の推進する環太平洋連携協定(TPP)に反対している。それで政府は組織の解体に力を入れた―。そう勘繰られても仕方あるまい。
政府・与党では、農家以外の人が金融や共済などの農協のサービスを受ける「准組合員」の利用制限も議論された。
道内を含め金融機関などが農協だけの地域もある。制限で、こうしたマチの人が不利益を被る恐れもあった。結局、見送りになったが、これも改革論議が現実とかけ離れている証左と言えよう。
自民党政権とJA全中は二人三脚で補助金漬けともいえる農政を進めてきた。それが結果的に農業の体力をそいだ。なのに自民党がJA全中だけにその責任を押し付けているようにも見える。
政府は「10年で農業所得倍増」を打ち出した。
そこで大事なのは、経済社会の中で農業をどう位置付け、自給率や食の安全などをいかに高めていくか、だ。今回の議論にはそうした視点が決定的に欠けている。