外国人と居住区だけは別にした方がいい――。11日の産経新聞紙上に掲載された作家・曽野綾子氏のコラムが波紋を呼んでいる。ともに住めば摩擦もある。でも、互いに歩み寄れば解決できると、多文化共生を進めてきた街の住民たちは語る。(牛尾梓、清水大輔、山本孝興、斉藤佑介)
「居住を分けることはまさにアパルトヘイト。看過できない」。産経新聞社と曽野氏に抗議文を出したNPO法人アフリカ日本協議会の斉藤龍一郎事務局長は言う。
南山大(名古屋市)などで講師をする南アフリカ出身の歌手プリスカ・モロツィさんは曽野氏の主張について「どうしてそんなことが言えるのか。アパルトヘイトでたくさんの黒人が死んだのに」と憤った。
11日の掲載後、ロイター通信など海外メディアは「首相の元アドバイザーがアパルトヘイトを称賛」などと報じた。ネット上で問題視する声が広がり、プリスカさんも日本に住む英国の友人からフェイスブックで教えられ、同郷の友人らともネット上で議論した。
両親はザンビアに亡命。南アの祖母宅を訪れた際には、白人の警察官に「ニガー(黒人の蔑称)」と呼ばれた。バスもトイレもすべて白人とは別。母の実家は土地を奪われ、反アパルトヘイトを唱えた親戚は殺された。プリスカさんは「日本人はほかのアジア人より上だと思っているの? 私たち人間に上も下もない」。
東京・大久保に15年前から住む40代の韓国人男性は「ばかげている。国際社会では全く理解されない主張ではないか」。