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池上彰のやさしい経済学

2012-08-16 13:42:40 | ためになる話
池上彰の ニュースがわかる やさしい経済学

著者  池上 彰  ジャーナリスト・東京工業大学教授

インフレとデフレ・・・合成の誤びょう

日本ではいま、デフレが深刻な問題となっていますが、経済の歴史を見ると、これまではインフレとの戦いでした。
キーワードは「合成の誤びょう」です。
インフレ・デフレともに、人間の心理が大きく影響しています。

インフレでものの値段が上がっていったとき、私たちが本来やるべきことは、みんなで買うのをぐっと我慢することなんです。そうすれば需要がおさまりますから、物価の値上がりもおさまったり穏やかになったりします。
安いうちに早く買おうとしたり、みんな同じ事を考えます。
みんなが同じことをやると何が起きるのか。
たとえば、サッカー観戦でみんなが座っているときに、1人だけ立ち上がるとよくみえますね。でもみんなが同じことを考えて一斉に立ってしまうと、結局みんなが前より見えなくなってしまいます。これを合成の誤びょうと言います。
誤びょうとは誤りという意味です。
みんなが同じ行動をすることによって、どんどん値段が上がっていってしまうのです。
デフレはその逆です。
売れないからどんどん商品の値段が下がっていく。
みんなが買うのを待つと、ものの値段がどんどん下がっていきます。        そこから脱出するのが大変難しくなるのです。
インフレとデフレ、どちらであっても困りますが、いまはデフレというと何となく先行き、見通しが暗くなります。
そのため、ゆるやかなインフレがいちばん望ましいのではないかというのが、現在の世界の経済学者のの認識になっています。
新しく大きな問題が起きたとき、それを解決する新しい経済学が生まれ、それによってまた世の中がよくなっていく。
そうするとやがてまた別の問題が起きてくる。そういう意味で言えば、まさにいまこのデフレから脱出する新しい経済学が求められている時代とも言えるのです。

★コスト・プッシュ・インフレはコストが押し上げられて物価が上がるので望ましくない
★デノミとは通貨単位を切り下げることである
★物価上昇率と失業率の関係を示すものは、フィリップス曲線という

政府か日銀か・・・財政政策と金融政策

景気をよくするためには、おもに2つの政策があります。
ひとつは、国が公共事業をするケインズ流の財政政策。もうひとつは日銀が誘導して金利を下げる金融政策です。

財政政策

1.公共事業
道路をつくったり橋を架けたりという公共事業をすることによって、建設会社に新しい仕事をつくり、そこで新しい人が雇われることによって景気がよくなっていきます。
2.減税
税金を減らして私たちの手元に残るお金を増やす。これによってみんながいろいろなものを買うようになる。消費が拡大すると景気がよくなる。
そして景気がよくなれば、それだけ税金が国に入るようになります。

これらの政策をとっても景気がよくならなければ税金が入ってきません。
赤字になれば国債を発行してお金を得るわけですから、国債がどんどん増えてやがて財政赤字がたまっていくという大きな問題があります。

金融政策・・・日本銀行がおこないます

日本銀行は国有銀行ではなく日本銀行法という法律に基づいて設置された認可法人です。もし日本銀行が国有銀行であれば、政府の命令に従わなければいけません。
国の命令だからといってお札が大量に刷れればインフレになるかもしれない。
だからあえて独立性を図っているのです。

日本銀行3つの役割
1.銀行の銀行・・・一般の銀行が預金をする
2.政府の銀行・・・政府に入ってきたお金を管理する
3.発券銀行・・・お札を発行する

日本の金融政策は日銀が国債を売買することによって行われています。
戦後の日本では国債を発行することは法律で原則禁止されています。財政法という国の予算や財政の基本に関して定めた法律の第4条に、国の予算は借金以外のもの、つまり税収などで賄わなければいけないという規定があるのです。
この条文にはただし書きがついていて、将来に財産として残る建設に使われるものは発行してよいということになっています。
もちろん借金をすれば借金も子孫に残りますが財産も残るので、国債を発行してもいいだろう。これが建設国債です。

税収だけだと、とてもやっていけないので、特例法である特別公債法案というのを毎年のように国会で通して今年限りの特例ということで国債の発行を認めているのです。