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浮世絵展をふりかえる

2014年03月30日 | セレネ美術館

 

本日で最終日となりました幕末明治の浮世絵・探訪展

今まであまり知られていなかった時代の浮世絵を紹介することができたと思っています。

 

 

そもそものきっかけは、宇奈月温泉開湯90周年にあたり、90年前(大正12年)の絵画を調べていたところ

偶然、さらに前の幕末明治期の絵画(浮世絵版画)に出会いました。

これが今まで見たことのない種類の作品群で、その面白さにたちまち惹きつけられました。

セレネ美術館は、現代日本画を専門とする美術館でもあり、これらの浮世絵は今日の「日本画」の

源流のひとつともいえることから、この展覧会を開催することといたしました。

 

 

これまで紹介してきたように、浮世絵は次第に社会性を獲得し、世間の情勢を伝え、幕府を暗に批判したり、

政府広報や報道写真的な役割を果たすようになります。

これは多量に刷られ流通する出版情勢から成り立ったのは言うまでもありません。

しかし、それは絵師の、彫師の、刷り師の、感性と技術をつくした作品があってこそ可能だったのであり、

だからこそその作品は人々に愛されて広まり、今日にまで残っているのではないでしょうか。

 

 

海外に流れた浮世絵はごく一部で、もっと多くの作品が国内にあるのでは、と考えられています。

なにしろたくさん刷られましたし、もともと薄い紙ですから保管に場所もとりませんしね。

そうそう、昔の人は浮世絵を額に入れて飾ったりはしません。手に持って見るのが基本で、

壁やふすまに貼ったり、洗濯ばさみで紐につるして鑑賞(?)したそうです。

現代でも、誰に見せるでもなく一人でうっとりと眺めている人もいれば、

家にある古いタンスの引き出しに入っているのを知らないで生活している人もいるかもしれません。

あなたの家の壁紙をはがすと、その下にあるかも?

そう考えるとなんだか楽しいですね。

 

 

さて、展覧会の内容をふりかえってみましょう。

浮世絵は、歌麿に代表される「美人画」の時代が終わり、「武者絵」や「歴史絵」の時代へと移行します。

絵師たちは、武者の活躍を大胆な想像力で迫力満点に描きました。

その表現の工夫は今日の劇画やマンガへと続いていきます。

一方、ただ武者の姿を描くだけでなく、そこには幕府を批判する意味をこめていました。

その風刺精神は新聞の挿絵、あるいは週刊誌などに受け継がれているといえるかもしれません。

凝った空間構成、登場人物たちの心情・・・それらは日本画に脈々と受け継がれています。

世相を描き、大事件などを取り上げた新聞浮世絵は、そのまま新聞に代表される報道に。

木版の技術は、創作版画に。

今日の日本の生活や文化は、まさに幕末明治の浮世絵で知った世界の延長上にあるといえます。

庶民は娯楽を愉しみ、情報を求め、その内容に、ある時は喝采をあげ、ある時は不安を覚えていたのです。

現代の我々と同じように。

その空気を感じていただけたのでしたら誠にうれしく存じます。

 

最後になりましたが貴重な作品をお貸しくださいました

「浅井コレクション」管理者で本展の監修 浅井 收 様

企画協力の E.M.I.ネットワーク 様に 甚深なる感謝の意を表します。

 

 

幕末明治の浮世絵展概要&展示作品紹介へ

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幕末明治の浮世絵・探訪展

~幕末の歴史絵から明治の開化絵まで~

期  間 平成26年 3月1日(土)~3月30日(日)

時  間 9時~17時30分(入館は17時まで)

休館日 毎週火曜日

入館料 一般800円 高校・大学生700円 中学生以下無料

会  場 黒部市宇奈月国際会館・セレネ美術館 3階展示ホール

富山県黒部市宇奈月温泉6-3 TEL 0765-62-2000

セレネ美術館HP