新型コンパクトSUV『C-HR』日本仕様がトヨタ自動車から9月28日に初公開された。2016年年末より発売するらしい。
C-HRは、そのコンセプトモデルが2014年から海外のモーターショーで出展され、日本では2015年 東京モーターショーで出展された。勿論、コンセプトモデルということもあるが、未来系のカッコいいデザインだった。
しかし、市販モデルのデザインは、未来系というよりも、基本は現在のSUVのデザインの流れに寄り添ったものとなった。
勿論、調子のいいホンダベゼルの事も考えての事と思う。
ただ、よく見るとそのデザインのモチーフは筋肉モリモリ系?、つまり塊から削って作ったというより、塊に肉をもった造形のようで、ガンダムのような気もする。
考えて見れば、ガンダムは80年前後の放映だから、そのころ子供だった人は、40才〜45才〜となっており、ターゲットユーザーの中心だろうし、価値観的にはピッタリと考える。
50才代半ば以上には、この価値観はない。ガンダム造形は子供にみえるのだ。
こう考えるとクルマのデザインの価値観は世代間で、特にガンダム世代以降大きく異なるように思う。
高価な破れたジーンズを穿いた世代だ。「あんな破れたズボンはいてみっともない、お金無いのは可愛そうね」と上の世代は言ったものだ。
今回のトヨタC-HRのデザインの方向性は、そういう意味で時代性をとらえており、思惑通りユーザー価値観の琴線にうまく振れることができるような気がする。
過去には、日産ジュークのように良く言えば芸術的、悪く言えば「独りよがり」でこれが良いんだと主張したSUVもあった。
その後、トヨタ自身もその良さに気づかず、ユーザーの声によって日本仕様も作ったという「FJクルーザー」。
これは、カワイイ/楽しい系のちょっと流行りのコスプレに通じるような?、今は亜流ではあるが魅力的な商品だ。
日本ではサイズが大き過ぎてそんなに受け入れられないが、デザイン自体は一つの柱となる良いものだ。
それに続いたのが、軽自動車のハスラーだ。
また、海外からのレネゲードも近い。ミニのクロスオーバーなんかもこの部類だ。
ここは、メインストリームではないが、確実にマーケットとして存在していくと思う。
メインストリームの商品は、安心で良いのだが、新しさや面白さ、オシャレさなどに少し欠けるので、もう少しクルマを楽しみたいというユーザーにとっては、ここは良いマーケットとなる。
メインストリーム商品は、時系列の商品で、企画時にどれくらい先の商品にするかということがキーポイントとなる。
勿論、現在に近い方がユーザーは多く、受け入れてもらえる確率は上がるということだ。
つまり、「数」が出るということになる。
あまり、先の未来感で企画してしまうと、それに賛同できるユーザーは少なくなり、つまり「数」は出にくくなるということだ。
ちょうど良い「先感」を見定めなければならない。
(私も多くのクルマの開発に携わらせていただいたが、中には創り手が見ると非常にカッコいいが、先に行き過ぎているかもしれないというものもあった。そういう場合はデチューンして、今に近づける作業をした。)
そういう意味で、今回のC-HRは良く考えて作られている。価格も、多分きっちりとマーケットにハメてくると思うので、きっとNO1販売車になると思う。
勿論、運動性能などもユーザーにとって十分なものになるはずだ。
CX3は正統派のスマートな方向でデザインの路線が異なるが、近いヴェゼルはどう受けるのか?
これは、これで面白い。
しかし、ユーザーを多く獲得するということを正義にするとこういう話だが、「クルマが楽しいか?」となると話は別になる。
つまり、ユーザーを多く獲得する=企業収益が上がるという図式で、企業にとっては正論だが、クルマ社会にとってはどうか?
楽しく、乗れるほうが良い。
この楽しくとは何だ?
スゥ〜っとスピードが出て、それでいてうるさくなく、操縦安定性が良く、乗り心地も良く、ということをユーザーは求め、それにそって、カーメーカーはクルマを改良して、販売を伸ばしてきた。
つまり、クルマを作っているのはカーメーカーで、その物差しは、どこまで行っても販売台数なのである。
もっというと、何が楽しいかという話は後にして、楽しいクルマを作っても、数が出ないのだ。
ここで、モータージャーナリストも含めて、車作りの関係者は、「最近のクルマは楽しくない。昔は楽しかった」と他人事のように言うのは、やめた方がいい。
楽しさ基準より、販売台数基準で作ったクルマを皆んなで「いい車」としてきたのだ。
「楽しさ」は数値で出ないので、確かに難しい。
ただ、ユーザーの車選びの兆候として「楽しさ基準」のクルマを選ぶユーザーも増えてきたように思う。
その証拠に、BMWのミニシリーズはいわゆる車格の割に高価で、性能はシッカリとしているが特筆すべきものはないのに、販売台数を伸ばしている。(最近、アメリカ市場を見ているせいかサイズが大きくなって、日本では受け入れられにくくなってきているかもしれないが。)
つまり、ユーザーも変わってきたのだ。
「楽しいクルマ」が販売台数を伸ばす時代がきており、しかもそれは高い収益が期待できる。
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