繁浩太郎の自動車と世の中ブログ(新)

モータージャーナリストとブランドコンサルタントの両方の眼で、自動車と社会をしっかりと見ていきます。

PHEV花盛りの理由

2015-09-09 09:38:17 | 日記
フォルクスワーゲン グループ ジャパン(VGJ)から、フォルクスワーゲン初のプラグインハイブリッド(PHEV)『ゴルフ GTE』が発表されました。
最高出力150psを発生する1.4リットルのTSIエンジンと、最高出力109psの電気モーターを内蔵した6速DSGのPHEVになります。
価格は499万円。購入時、最大38万円のクリーンエネルギー自動車等導入促進対策費が適用されます。

その他、ベンツやBMWからもPHEVが発表されています。
まさに、PHEV花盛り。HEVはどうなったのでしょう?

ドイツに限らず日本メーカーも含めて各社PHEVを発表するにはそれなりの理由があります。

勿論、単に燃費カウントにおいてモーター走行が含まれるため、燃費としてはHEVより遥かに良くなります。
これは当然の話でガソリン燃料にプラス、電気エネルギーを貯めて使いいながら、ガソリン燃料の燃費だけでカウントするためですね。
こうなってくると、走行ネルギー当たりのCO2をカウントして燃費とする必要も出てくるのではないかと思ってしまいます。
つまり、家庭等の電気エネルギーは日本の場合は殆どが発電所で発電されますが、特に殆どの原発の止まっている今はCO2をより多く出しながらの発電となっています。
その発電方法により、一概に電気エネルギーは「環境にいい」とは言いきれないと思います。

話を戻して、PHEVにはしる最大の理由は、カルフォルニア州のZEV規制と思われます。
これをクリアーするにはEV,FCV,PHEV等が必要になります。HEVではだめなんです。  

あと、ヨーロッパCAFÉ(Corporate Average Fuel Economy)の対応も大きいと思われます。
(CAFÉ =企業燃費の規制で、2021年で95g/km (24.4km/L)が達成目標)
カーメーカーとしては、CAFÉ規制がドンドン厳しくなって、当然大きいクルマは燃費が悪く、クリアーするためには、クルマを小さくするか、「環境車」を販売するという方法になっていきます。

また、PHEVはヨーロッパCAFÉでは「CO2が50g/km未満の車両は2020年では2倍でカウント」してもらえます。
通常のHEVでは50g/km到達は困難ですので、この「2倍でカウント」は今のところPHEVだけとなります。

よって、VW,BMW,メルセデス・ベンツ等だけでなく、EUで販売される乗用車は、「小型化」「PHEV化」になってきているのです。


PHEVはこのように各地域の規制に対して「強い」です。
しかし、ご存知のようにPHEV=小EV+HEVって感じで、両方のパワートレーンを持っていますから、毎日の走行が30~50km程度以内で毎日充電してEVとしてだけクルマを使用されるユーザーには、エンジンと燃料系、排気系等は無駄な装備になります。
その分のWTを積んでEVで走ることになります。

一方、ほとんどのPHEVはEV走行30~50km程度なので(EVよりバッテリーが少ない)、毎日それ以上走るユーザーにとっては、EVの後はHEV車と同じなので、ある頻度でガソリンスタンドに行かなくてはなりません。その時に、EV分の50km走行はガソリンで言うと3L程度のものになり、毎日自宅のガレージで帰宅時に充電プラグをつなげるのが面倒になるという話も聞いた事があります。つまり40Lとかをタンクに給油するときに、43L程度入れれば済むということです。
この場合は、PHEVのEV機能は使っていないことになりますね。

よって、PHEVの最大のメリットは普段はEV走行の範囲で使い、週末には遠くまで出かけるという頻度の高いユーザーには、最高かもしれません。
それでも普段は、エンジンなど重量物を載せて走っている訳で、その分のスペースもとっています。
当然、購入価格は税金の補助が無ければ、HEVよりもEVよりも価格は高くなるはずです。

両取りするには、両方のコストがかかるということになります。
当然製造時のCO2もそれなりに。

このように、私はPHEVを環境車としては、まだ決定的なものではないと考えています。
各カーメーカーは、EV、HEV,PHEV,FCVなど発売をしていますが、まだまだ「途中」という感じで決定的なものはありません。
しかも、発電や製造時のCO2まで考えてみないと「環境車」かどうかは、断言できません。
つまり、Well to WheelやLCAの考え方です。

しかし、生活先行層やお金持ちの方々には、使いにくいとかでなく、是非こういう新しい環境技術のはいったクルマに乗って欲しいと思っています。


俄然活発、トヨタのレース活動

2015-09-08 11:43:25 | 日記
トヨタ自動車は、レース活動にかなり積極的です。

今年の4月に、これまで「TOYOTA Racing」「LEXUS Racing」「GAZOO Racing」で各々取り組んできたモータースポーツ活動を、トヨタがメーカーとして参戦する場合は、チーム名を「TOYOTA GAZOO Racing」と一本化して参戦すると発表しています。
レクサス車を使用する場合は、「LEXUS GAZOO Racing」の名称やレクサスのブランドネームを使用するそうです。
また、同時期にモータースポーツ部を「本部」に格上げし、レースに本腰が入りました。

さらに、それに先立ち、今年1月末、トヨタは世界ラリー選手権(WRC)への2017年からの復帰をも表明しています。
これにはコンパクトカー「ヤリス」をベースとしたマシンを投入するそうですが、ライバル車はVWの「ポロ」や現代自動車の「i20」等で、いずれも世界の自動車マーケットでの競合関係と重なり、ユーザーにとっても興味がわきやすいモータースポーツですね。

トヨタがこれほどまでに、モータースポーツに力を注いでいるのはなぜなのか?
それは、やはり「おっさんトヨタ(失礼!)」イメージの払拭と「トヨタ、レクサス」の「ブランド構築」にあると思います。

確かに、世界中で開催されるモータースポーツは、自動車メーカーにとってはブランド構築の側面を持っています。
特にモータースポーツ発祥の地である欧州では、ブランド構築にモータースポーツ抜きでは語れません。
事実、ポルシェやベンツ・BMW等のようなよく知られたメーカーはモータースポーツに参加することにより、ブランド力の向上を果たしてきました。

さらにブランド力の向上だけではなく、モータースポーツにはスピードや耐久性を極限まで競う中で磨いた技術を、後に市販車に落とし込めるメリットがあると良く言われます。
あの本田宗一郎氏は当時「レースは走る実験室」と言ったと言われています。

この8月“電気自動車(EV)のF1”ともいわれる「フォーミュラE」のレーシングカーが東京・六本木の公道を駆け抜け話題になりました。
フォーミュラEホールディングスのアレハンドロ・アガグCEOは、「EVのバッテリー技術を進化させるのに最良な方法はレース。それは歴史が証明している」と、昨年から開催しているEVレースの狙いについて語っています。

今でもBSフジでF1レースの番組を放映していますが、F1は、ご存知のようにドライバーの運転技術だけでなく、ハイブリッドやバッテリーといった最新技術は勿論、スピード、耐久性などのレース機能技術等全てにわたって競争色の濃いもので、かなりストイックな競技かと思われます。
しかし、80年代の終りの頃はバブル絶頂期の時代を背景に、スターのセナが乗る常勝マクラーレンホンダで、日本において一大F1ブームが起こりました。

いずれにしても、F1は形も市販車とは大きく異なり特別なモノですし、かなり「オタク」な部類かなと私はとらえています。

ホンダは今シーズンからF1に参戦していますが、苦戦をしています。
トヨタはF1を09年に撤退して依頼、今こんなにレース活動に力を入れているのに、F1参戦表明はありません。
これは、トヨタのモータースポーツ活動に対する考え方として「もっといいクルマづくり・クルマファンづくり」を主軸においているからと思われます。
「F1レース参戦=勝つ」というストイックな活動でなく、モータースポーツ活動を通じて「皆さんと一緒にクルマを楽しみたい、楽しもうよ」というコンセプトがしっかりとあるからだと思います。

しかし、ストイックなレースのF1は別としても、「モータースポーツ活動」で、現代の多くの人達がかつてのように「クルマを楽しむ」ようになっていくのでしょうか? ブームとまでは言わなくても、本当に「クルマを楽しめる」ようになるのでしょうか?

当然、経済的な要因など、様々な要因が重ならないと「みんなで一緒に楽しむ」レベルにはいかないでしょう。
つまり世界のトヨタといえども、トヨタが頑張っただけでは、足りないかもしれません。
しかし、とにかくトヨタは、今の時代をよく見据えて、自分達の出来る事を定めて前向きに取り組んでいます。「クルマを楽しめる」社会をめざしてチャレンジしています。
その姿勢と行動に、私は拍手を送りたいと思います。

ベンツに勝てないレクサス?

2015-09-07 12:53:12 | 日記
トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」は、2015年8月末で丸10年となりました。
私も当時、近くの出来たばかりのレクサス店へお邪魔して、すこぶる美味しい紅茶をいただいたのを
思い出します。
ただ、当時はレクサスと言ってもトヨタ車ということで、このお店の分だけ値段が高いのでは?
という印象でした。

国内では、高級車=プレミアムブランドと言うと、ドイツ勢のBENZ,BMW,AUDIとなりますね、
勿論ベントレー、ロールス、アストンなど多くありますが、ソコソコの販売台数=馴染み程度で
いうとこういうことでしょう。

米国では1989年から レクサスはスタートして、今では高級車ブランドとして認知されていて成功しているそうです。
しかし、日本ではお店は勿論のこと、インターセクトバイレクサスという「LEXUSが考えるライフスタイルを様々な形で体験できるスペース」まで、(ここのレストラン、私は何回も利用していますが、お安くて雰囲気が良くまた料理は美味しいです。ある意味穴場といえるかもです。)全網羅的?にブランド展開をしていますが、ソコソコというかまだドイツ勢に対して微妙な位置づけなのではと思います。
また、欧州でも1990年にスタートしていますが、こちらもそれほどブランドが認知されていると聞いたことはありません。

最近では、「アベノミクス」による株高効果などで高級車の好調が続いているようですが、レクサスは伸び悩んでいます。
2014年の販売台数は4万4000台で6年ぶりの前年割れです。
一方、ベンツは15年の1~6月の上半期で前年同期比19.1%増の3万2680台。上半期で16年ぶりにVWを抜いて首位の座を獲得しました。BMWは0.9%増の2万2674台、レクサスは横ばいの2万3000台でした。
ただ、このベンツの販売増はAクラスによるところが大きく、ブランド的に少々心配になるところではあります。(私の「オートプルーブの記事」を参照。http://car.autoprove.net/2015/08/8220/ )

日本の高級車=プレミアムカーは長年ベンツ/BMWで、それにAudiが食い込んできました。
Audiは急に来たように思われるかもしれませんが、周到なブランド構築戦略に長年取り組んできた結果です。
欧州は保守的なマーケットですが、そこでもAudiはブランド構築に成功しました。
(どれくらいの期間で、どういう施策で、ブランド構築したかは・・別途)

ブランド構築は、一言で言うと時間がかかります。
レクサスにおいても、効果的な施策(これがチト難しい)を粘り強く繰り返していくウチにきっとレクサスブランド=高級車ブランドとなると思っています。

なにより、私がそう思うベースは、「トヨタの豊田章男社長」にあります。
社長が創業家の出身なので、ブランド構築にはプラスに働くと思っています。つまり、長い目でブランド構築を辛抱強く実行出来るのです。
3年から5年でソコソコ成果を上げて多くの退職金をもらって・・またはしがみついて・・という社長では、ブランド構築は難しいかも? (笑)
そういう企業はヒット商品を連発してのブランド構築にかけるしかありませんね。(笑)
今の世の中の価値観がそんなに変化しない時代で(芸能界アイドルの息も長くなっています。スマップは1988年デビューです。)、しかもクルマという商品がコモディティ化してきている事を考えても、ブランディングは大切になってきています。

こういう時代に、創業家が社長と言うのは大きいです。
ただ、ブランド価値を上げたAudiと比較すると「施策の吟味」はもう少し必要かとは思っています。


自動車業界も構造転換?

2015-09-04 19:02:17 | 日記
世界の照明業界に、構造転換の波が押し寄せているとニュースでみました。
つまり、価格の高いLED(電球の10倍以上、蛍光灯の3倍以上という長寿命)照明の普及で、業界各社の収益は上がりましたが、長寿命による販売機会の減少、中国勢の価格競争によって、近頃は売り上げがサチレートしているらしいのです。
さらに、今後LEDのコモディティ(汎用)化は進むと予想されます。
そんな中、各社は照明の「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」化に活路をみいだしているそうです。

家電業界は今までも、洗濯機、冷蔵庫、テレビ等からオーディオ、パソコン、はたまたカメラまで、新商品を次々と開発してきました。
ここで、当たり前のようで素晴らしいと思うのは、「次の道を見つけて、チャレンジしていく」体質が「電気屋」さんには有ることです。


自動車業界はどうでしょう???

この照明業界と同じように、「長寿命化」「コモディティ化」「中国パワー?」同じ図式???と思ってしまいます。
自動車業界は家電業界と違って、自動車という1つの商品でずっとやってこれて、次の商品模索が苦手と言えるかもしれません。
自動車が高額商品ということもあり、また販売システムもしっかりとしているなど、守ってこれた理由は多くありますが、そんな自動車業界も今はこの照明業界と近いことになっているのではないかと思ってしまうのです。

自動車業界は先進国での伸び悩みに直面し、活路は新興国です。
しかし、新興国は経済的に厳しいところもあります。また、今まで少なかった新規参入カーメーカーも増えてきています。
(参入障壁を高くするために、環境規制のハードルをドンドン高くしているのでは?という意見もありますが?)
結果、価格競争になります。その先はあきらかに「淘汰」です。

環境規制などのハードルを越えていく自信のあるカーメーカーやブランドがしっかりしているカーメーカーは自動車で頑張れば良いですが、自信のないとこはどこかとくっつくか?「次の商品」に行くか? 
とりあえずくっついて様子をみるか?
先進国カーメーカーが一生懸命築いてきた「安泰の図式」は、欠け始めているように思われます。

「次の商品」とは、当然IoTを経て「ロボット」になると私は考えています。
どんなロボット化はまた今度。