草原の四季

椎名夕声の短歌ブログ

HPはhttps://shiinayuusei-1.jimdosite.com/

切ない恋の歌

2019-03-18 19:22:18 | 和歌・短歌

万葉集巻第4歌番号640 湯原王の歌

はしけやし 間近き里を 雲居にや 恋ひつつ居らむ 月も経なくに

(波之家也思 不遠里乎 雲井尓也 恋管将居 月毛不経国)

 

慕わしい(あなたがいる)近くの里なのに、まるで雲居の彼方に隔たっているように恋い続けるのだろうか。逢えなくなってからひと月も経っていないのに。

 

恋にも色々ありますが、妻ある男と乙女が何度も歌を贈りあった、その終盤に近い歌です。

一連の最初の歌は、男が乙女のもとを訪れたのに家へ入るのを拒否されたという内容です。それに対して乙女がこたえた歌は「あなたは旅にあるときも奥様と一緒というのがうらやましい」というもの。

男がこたえて言うには「たしかに旅に妻を同伴したが、あなたをこそ思っているのです」

そのあと歌の贈答が続き、冒頭の男の歌になりますが、それにこたえた乙女の歌は「うわべだけ情けをかけるのは幸いなことなのか」と破局を自覚した歌となります。

 

どういう事情があって別れることになったのか、誰にもわかりません。

わかるのは、切ない恋の歌ということ。

太田裕美が歌ってヒットした「木綿のハンカチーフ」(松本隆作詞)を思い出しました。

 

あの犬が「お返しです」と十円をくわえて来たら切なくて泣く(椎名夕声。短歌人2019年3月号)

 

半年後に消費税が増税される際に、PASMOなどの電子マネーで買物をすれば、多い場合5%のポイント還元が受けられることになっております。これにより、十円玉を持ち歩く人は滅多にいない時代となるでしょうから、この歌の賞味期限も残すところ半年ほどと言えるでしょう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする