新型コロナ禍は、2020年1月に国内感染者が初めて確認され、2021年春にワクチン接種が開始され終息し、それから3年経って月刊「歌壇」6月号で特集が組まれた。
今までも新型コロナ禍の歌の特集は繰り返されたので、ここに来ての特集では、今までの特集から漏れた歌が紹介され、網羅的な内容になるのかと予想したが、ちょっと期待外れだった。
新型コロナ禍で社会的問題となった分断については、当ブログでも取り上げたことがあったが、そもそも文学は社会の有り様を改善することに寄与し、貢献すべきものか、あるいは人間に貢献すべきものかという大きな論点がある。
社会の分断を解消すると言えば聞こえは良いが、感染症の抑制のために人流を制限することが効果的であることは科学的真実であり、一方で人流を止められると困る人々との軋轢は避けられない。
極論すれば、人流を抑制した結果、食糧等重要な物資が行き渡らなくなって餓死したりすることも有り得るかも知れない。
そうなった場合、新型コロナで死ぬ方を選ぶか、餓死を選ぶかという究極の選択となろう。
実際には、イギリス、イタリア、中国等で外出禁止措置がとられたにもかかわらず、我が国では折衷型の施策がとられた訳だが、それでも自由を奪われることへの反発は強く、国家権力の横暴になぞらえる歌が多く詠まれた。
幸いなことに、ハンガリー人民共和国出身のカリコ博士の発明によりワクチンが開発されたため、たった2年で新型コロナ禍は終わった。
国家権力の横暴を言う者は満足したかも知れないが、ワクチンが発明されてなかったらどういう事態になっていたか、それは謎のままとなった。