湖の子守唄

琵琶湖・湖北での生活、四季おりおりの
風景の移り変わり、旅先でのふれ逢いなど、
つれづれなるままに、語りたい。

若狭~小浜・明通寺

2011年07月23日 | 詩歌・歳時記
若狭・小浜は「海のある奈良」と呼ばれている。前方に波穏やかな若狭湾が広がり、
後方の近江との国境である、山々との間に、数多くの古刹が点在している。
一年に一度は訪れる、お馴染みの町である。

小浜に入る少し手前の道を、山手へ折れると「瓜割りの滝」への道が見えてくる。
駐車場の傍らに、新しく採水施設ができていた。但し、有料。
ポリ・タンクに貼るシール一枚が300円、その容器でなら後は無料という訳けである。

さて、なだらかな坂道を歩いてゆくと、結構な水量が湧きだす岩場にさしかかる。
冷たく、軟らかな水である。その冷たさに浸けていた瓜が割れてしまう。
漂う冷気で汗も一瞬でひくほどだ。

小浜へ入って直ぐを、左折。必ず立ち寄る「明通寺」である。
蝦夷遠征で名を馳せた、坂上田村麻呂の創建。
鎌倉期の再建の本堂と三重塔は、質実剛健、無駄な飾りの一切ない造り、国宝である。

本尊の薬師如来は長く秘仏だったが、先の住職の英断で、常時拝観することができるようになった。
そもそも「秘仏」と言う観念が理解できない。密教系の大衆を置き忘れた、宗教寺院に多いようだ。
それはともかく、左の深沙大将と対をなす右側の降三世明王が好きだ。
特に逞しい両足で踏まれている、二つの邪鬼の恍惚とした、法悦の表情には、しばし見惚れます。

三重塔の屋根は去年、葺き替えが終わり、今は本堂の作業に入っている。
30年に一度、桧皮葺きの葺き替えが来年の春まで続く。
境内や庭園を歩いていると、少しずつ短歌や俳句が煮詰まってくる。

池に純白の睡蓮の花が咲き、参道には桔梗が可憐に揺れている。
特に、のうぜんの花は、普通、燃えるような爛れた紅色が多いのだが、
淡い橙色が涼やかで、清浄である。
橋を渡り車へ帰る。谷川から立ち上る清水の冷気に、いささかの功徳を賜わった気がした。