ボクが22歳、 あのひとが24歳でした。 もう42年もむかしの長浜の町の物語でした。
作詞家になるための夢にひと筋に生きていたボクでした。 あのひとは旧家のお嬢様・・・・。
そしてお見合いをして、 嫁入りがほぼ決まっても、ボクにはどうすることも出来ない無力な
貧しい青年でしかなかったのです。
今はない 「たそがれ」 という、長浜駅前の喫茶店であのひとから総てを聞きました。
その時に流れてきたのが、菅原洋一の 「今日でお別れ」 でした。
別れましょうと言ったあのひとが、この歌を聞いて・・・辛そうに微笑したのが、昨日のことのように
覚えているボクです。 そしてあのひとの美しさも・・・ボクだけが知っている、と思ってます。
鷺草の
虚空をかろくとぶ姿
似合ふ洞を胸にもちたし
生きてゆく気力を失くして、 どうすれば死ねるのか? そればかりを思い詰めて町を彷徨って
いたボクの耳に響いてきたのが、 西郷さんの 「真夏の嵐」 でした。
歌手生命を賭けて、情熱をこめて歌っていた西郷さんの迫力にボクは救われました。
圭一郎登美子啄木ああ尾崎
恋人はみな
若く死にたり
そして、作詞家の勉強のために東京へ向かったのでした。