毎週図書館で二冊の本を借りてきた。
一冊はボクの趣味の本、もう一冊はボクと母が興味をもてるやつだった。
まづボクが読み、茶の間に置いておくと母が読むのである。
ボクの趣味の本もだいたい読んでいた。
けれども、僕たちが幼い頃は貧乏の生活のさなかで、小説どころか婦人雑誌すら
手にとったこともなかった母であった。
父が死んだのち、年金などで余裕ができて、初めて好きだったであろう読書に専念できたのであった。
母向きに借りてきたのは、佐藤愛子のエッセイ本である。ボクも愛読いたしましたし、母も一機に読んだんですね。
ある日、一冊が厚さが五センチもある佐藤愛子の「血脈」を借りてきて、一気に読みました。お父上の佐藤紅緑はじめ、サトウハチロウやその弟たちの不良振りに時間を忘れたものでした。
なんと、そんな長編を80歳の母が三巻を読破したのです。これにはびっくらこきましたよ。感想を語り合う夜を持てたことがとても楽しかった。読書する時、
ボクに寄り添う母を、いつも意識いたします。男にとって、母の存在は永遠のものなのでございます。