*****ご注意!一部ネタバレの可能性があります!*****
170回(2023年後期)直木賞にノミネートされた作品(直木賞は河崎秋子「ともぐい」)
徳川第9代将軍家重は生まれつき重い障害をもっていて、半身を上手く使えず、舌が回らず家重の言葉を理解する者はなく、8代吉宗の長男であったにもかかわらず廃嫡が噂されていた。
家重の運命を変えた14歳の時の忠光との出会いから将軍になり、嫡子家治に10代将軍を譲り渡すまでの歴史小説
まいまいつぶろとはカタツムリのこと
長時間の謁見時には頻尿故に失禁をしてしまう家重の歩いた後には尿を引きずった跡が残る姿を蔑んで読んでいた
肉体的には障害を持っていたが、家重は聡明で心優しく人の傷みへの思いやりの深かったことが描かれている
生涯通詞に徹した忠光・侍女に家重の子を産むよう遺言した正室比宮など家重は周囲の人には恵まれていた
生涯通詞に徹した忠光・侍女に家重の子を産むよう遺言した正室比宮など家重は周囲の人には恵まれていた
本作は家重と忠光の主従を超えた信頼関係が描かれていると思う。
忠光は家重に難が及ばぬよう、家重の「口」になることのみに徹し、家重は忠光が恨まれないようと余計なことを語らなかった
最後の忠光が下城を決意する場面は二人の信頼関係と互いを思いやり心に、こんな人間関係を築ければ理想だな、と思わせた
とはいえ、エピローグでは家重・忠光の息子二人の会話で、それぞれの家族が寂しい思いをしていたことも語られ、家重・忠光の関係の犠牲になった者がいることにも触れている。
家重と比宮との印象的な場面で、家重が育てたバラ園でyesなら一度、Noなら2度手を握る(触れる)約束をつくるくだりで、急に過去のNHK大河ドラマを思い出した
「徳川吉宗(主演西田敏行)」で、家重役は中村梅雀、今も記憶に残る名演技だったと思う
そして、最近では大奥の三浦透子の家重も好評
本作の続編(スピンオフ作品?)まいまいつぶろ御庭番耳目抄は隠密万里のエピソードでこちらも面白そう