そ の ひ ぐ ら し

その日1日を良く暮らせればよし。
スカイツリーのふもとでちびと小ちびとオットと4人暮らし。

軽い運動するみたいな小説

2007-04-25 00:38:20 | journal
『家日和』奥田英朗

面白い。。。
この人の作品はいつも「ふふふっ」ってなっちゃう感じでどれも面白いんだけど、今回のは特に気に入った。
家とそこに住む人(々)を取り巻く日常が何かのきっかけで変わってゆく瞬間のいろんな物語です。

例えば2話目、会社が倒産して思いがけず主夫になった夫が家事にハマっていく話。
『洗濯は干すのが骨だった。腕が疲れるのである。バスタオルは物干竿の場所をとるので可愛くなかった。シーツはもっと憎らしいことだろう。物への見方が少し変わった。』
『洗濯は、新たにアイロンがけに挑戦した。(中略)最初は自分のワイシャツで試した。(中略)シワシワだった面が平らにプレスされていくのは見ていて楽しかった。しかし袖と襟は難関だった。ステッチ部分に逆に皺がついたり、折り目が二重になったり、要するに平面以外は熟練が必要なのである。』

いちいち描写が細かくて「あははっそうそうそう!」ってひとりごちたくなるリアルさが可笑しい。
三十男が初めて家事をやって、まるで子供みたいに新しい発見にわくわくしたり、できないことが出てくると頑張っちゃったりする様子がかわいくてまた可笑しい。
私自身がひとり暮らしを始めて、慣れない家事と奮闘しながらも結構楽しんでる今の状況と重なるからなおさらリアルに共感できて楽しい。

何かをきっかけにあることにハマっていくときの人間の心理(時にどこか後ろめたい感じでどきどきしたり)とか、何かを発見する楽しさ(目新しいことにわくわくしたり)は誰もが身に覚えがあるから素直に共感できる。でも悲しいかな、オトナになるとそういうことは少しずつ減ってくるのだけど、でも登場人物たちはいい歳のオトナなのに"どきどきわくわく"してる。そういうの大事だよなぁ、いいなぁ、という読み手の羨望をかきたてるからついつい読んじゃうんだなぁ。
どれも普通の人の普通の物語で、いいことばかりじゃないけど現実的なハッピーエンドで締めくくられるところも好き。浮き足立たずに地に足着けた前向き思考になれる。主人公にサラリーマンが多いのも共感できるから好き。半身浴でもしながら1話読むと、身体も頭も程よくリフレッシュできる小説です。

『イン・ザ・プール』
『東京物語』
『ガール』
など、作品は色々ありますが(全部は知らない)、インパクトあったのは最初に読んだ『イン・ザ・プール』かなぁ。
Comments (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする