2010年の「冬の花 山茶花の旅」に9年ぶりに追記します。
秋に悪化した喘息が回復し始め、今のうちにサザンカ巡りを記録しておこう、という気力が湧いてきましたので、11月に訪ねたサザンカをご紹介することに致します。
先月の11月16日に浜松フラワーパークで日本ツバキサザンカ協会主催の見学会が催され、お誘いを受けましたので、折角浜松まで行くなら、以前から気になっていた近隣のサザンカを見てこようと思い立ちました。
フラワーパークでの見学会が終わった後、その足で豊橋市に車を走らせ、医王寺(サザンカ寺)の樹齢250年と称されるサザンカを訪ねました。
駐車場に車を停めて本堂へと歩を進めますと、本堂右手に、合掌造りに刈り込まれたサザンカの古木が見えてきました。

季節がまだ早いのでしょう、木は僅か数輪の花を見せるのみでした。


近くに、サザンカ古木の説明が掲げられていました。

そこに、
医王寺は1707年の海難にあい、海辺の地から当地に移転してきた。
サザンカは移転後に植樹したと考えられ、「合掌造り」の形となったのは四世道契和尚の頃からで、毎年11中旬からピンクの花を咲かせる。
樹齢約250年、樹高約8メートル、幹の太さ110メートル、
花の見ごろ11月中旬から12月下旬
と記されていました。
ツバキ協会理事の箱田直紀博士の話によれば、このサザンカは品種「桃山」の可能性が高いそうです。
本堂の前庭に多種多様なサザンカの品種が植えられています。

先ほど浜松フラワーパークで多くのサザンカ品種を見てきましたので、全ては見ませんでしたが、「三頭咲」の名札を付けた木が花を咲かせていました。
「三頭咲」は中輪で桃色一重の花を咲かせ、一つの蕾から出る花の花軸が1~3に分かれることで知られます。
また小形、楕円の葉の先端が2~3裂する特徴も示します。
ドイツの文豪ゲーテが「花は葉が変化したものである」ことを予想し、近年の遺伝子研究でそのことの確かさが確認されています。
この「三頭咲」のように、花軸が途中で分かれることと、葉脈が2~3裂するのも、同じシステムに基づくはずです。



花軸が分かれた「三頭咲」 小石川植物園
医王寺は、寺に隣接する場所にサザンカ園が設けられ、そこを含めて寺には全国から集めた175種の2000本のサザンカが植栽されています。

ご住職は更に数を増やし、日本一のサザンカ寺にしたいとお話されていました。
サザンカやツバキには、日本人が古くから慈しみ育ててきた園芸種が数多く知られています。
しかし、個人の庭に育つものは、親から子への相続時に庭がマンションや駐車場となって次第に消滅しつつあります。
医王寺のようなお寺さんがサザンカの品種を集め育ててくれれば、日本古来の文化財であるサザンカ品種を保存することができます。
私は知る限りの、サザンカ品種収集に関する情報をご住職にお伝えし、夕暮れ迫る医王寺を後に、次の目的地へと車を走らせました。